挑戦を続けるパイオニアの血脈 GMTの〝異端児〟ボール ウォッチ「エンジニア Ⅲ アウトライアー」現る

2023.07.25

第2時間帯をシンプルに表示するGMTウォッチは、ビジネスパーソンやトラベラーに打ってつけの腕時計である。精度、耐磁性、素材など、あらゆる点で優れたスペックを持つ「エンジニア Ⅲ アウトライアー」が、頼れる相棒となるはずだ。

エンジニア Ⅲ アウトライアー

エンジニア Ⅲ アウトライアー
「エンジニア」は、耐磁性と耐衝撃性を兼ね備えた実用性の高いモデルをラインナップするシリーズ。その最新にして最高峰が本作だ。なお、写真のモデルは北米仕様。日本販売モデルでは、文字盤6時位置の「TSWISS MADE T」の表示が、「SWISS MADE」に変更される。自動巻き(Cal.RRM7337-C)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径40mm、厚さ13.8mm)。200m防水。40万7000円(税込み)。
https://www.ballwatch.co.jp/series/dg9000b-s1cj-bk/
渡辺修身:写真
Photographs by Osami Watanabe
長谷川剛:文
Text by Tsuyoshi Hasegawa
Edited by Tomoshige Kase


ボール ウォッチ「エンジニア Ⅲ アウトライアー」

 パンデミックも一段落し、世界はアクティブに動き始めている。これまで見送られてきた出張や旅行の機会も、以前に比べて確実に増加している印象だ。となれば、ウォッチファンが改めて気になるのは海外に出向くときの腕時計であろう。その選択肢の筆頭に挙がるのがGMT。しかしながら昨今はGMTウォッチをはじめ、複数のタイムゾーンを表示するマルチタイムウォッチが多種多様にリリースされており、何を購入の決め手とするか、その判断が難しい。

エンジニア Ⅲ アウトライアーには計3つの仕様がラインナップされる。右は回転式ベゼルにセラミックスを用いたバージョン。光沢のある黒ベゼルと黒文字盤の組み合わせが、より精悍な印象を漂わせる。左はステンレススティールのべゼルに白文字盤を配したモデルだ。自動巻き(Cal.RRM7337-C)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径40mm、厚さ13.8mm)。200m防水。
(右)42万9000円(税込み)。https://www.ballwatch.co.jp/item/dg9002b-s1cj-bk/
(左)40万7000円(税込み)。https://www.ballwatch.co.jp/item/dg9000b-s1cj-wh/

 そんな状況の中、ひときわ強い個性を感じさせるGMTが登場した。ボールウォッチの最新作「エンジニア Ⅲ アウトライアー」である。19世紀アメリカの鉄道標準時計の製造に端を発し、質実剛健を旨とする時計作りを続けてきたボールウォッチ。そんな実力派が手掛けるGMTは「既存の価値観から脱却し新たな世界にチャレンジする」というコンセプトのもとに開発された。確かに〝異端児(=アウトライアー)〞の名にふさわしい、数々の独自スペックを備えている。

Cal.RRM7337-C

エンジニア Ⅲ アウトライアーが搭載するCal.RRM7337-Cは、ソプロードとの共同開発によって誕生した自社製ムーブメント。時針の単独調整が可能なため、タイムゾーンをまたぐ移動でも時計を止めずに時刻修正できる。

 まずは新開発の自社製GMTキャリバー、RRM7337-Cに注目したい。リュウズの1段引きにより短針が単独稼働(1時間ごと)する構造で、複数タイムゾーンの表示調整が容易に。短針は早送りに加え早戻しも可能で、日送り車も連動する。つまりカレンダーをローカルタイムの日付に素早く設定できるというわけだ。このムーブメントはC.O.S.C.認定クロノメーターを取得しており、平均日差マイナス4~プラス6秒/日という高精度を発揮する。

 優れた耐磁性能も特筆すべきだろう。インナーケースに特殊合金のミューメタルを採用し、1000ガウスまでの磁気耐性を獲得。また、タフな衝撃テスト(1mの高さから木の床に落としたときに受ける衝撃と同等の衝撃)をクリアしているという点も、旅先の安心を担保する一要素ではないだろうか。

(左)耐磁性能および防水性能の数値を表示。200m防水というダイバーズ級のスペックを持つ。
(右)オレンジ色のGMT針は24時間で1周。回転ベゼルもしくは文字盤上の24時間目盛りで第2時間帯の時刻を読み取る。

 そしてこの〝異端児〞は、ケース素材にも強いアピールポイントを持っている。多くのブランドの腕時計に使用されている316Lステンレススティールではなく、より高品質な904Lステンレススティールを採用しているのだ。904Lはクロムやモリブデン、ニッケルの含有量を高めて高硬度を実現した素材である。実はこの硬さが高級感の土台なのだ。硬い表面を丁寧に磨き上げることで、よりラグジュアリーな、艶のある光沢が生まれる。サテン仕上げとポリッシュ仕上げのコマを組み合わせた3列ブレスレットにも、同じく904Lを使用する。

(左)文字盤のインデックスと時・分・GMT針には自発光のマイクロ・ガスライトを装着。ベゼルの24時間表示は昼夜で色分けされる。
(右)内部にミューメタル製インナーケースを収めつつ、ケース厚は13.8mmに仕上げている。なお、日本展開モデルではケースの仕上げがポリッシュに変更される。

 またインデックスや針には蓄光ではなく、自発光型のマイクロ・ガスライトを装着。昼夜を問わず常に自発光しているため、特別な操作をせずとも速やかな時刻の確認が可能なのだ。暗い機内でも、星空の下でも、独自のアプローチで、ビジネスパーソンやトラベラーのための視認性を確保してくれる。

 扱いやすいGMT、優れた耐磁性能と耐久性、高品質素材が生む端正な外装。〝異端児〞の名を冠した「エンジニア Ⅲアウトライアー」だが、実は旅の相棒として必要な機能を備えた、王道のGMTウォッチなのかもしれない。


Contact info:ボール ウォッチ・ジャパン Tel.03-3221-7807