創業は1988年だから、老舗ひしめくスイス時計界では新参だ。しかしフレデリック・コンスタントの現在のポジションは、そんな“若さ”が信じられないものだ。20年前からマニュファクチュール化を強力に推し進め、今年も新たに開発した自社製ムーブメント搭載のモデルを2本発表した。なぜこのブランドはここまで急成長できたのか? その躍進の軌跡を振り返りながら、注目の新作を紹介しよう。
月齢と日付表示を統合した6時位置インダイアルが、ソレイユ装飾が施されたグリーン文字盤の詩情を一層高めるアクセントに。ケースバックから鑑賞できる新開発の自社製ムーブメントは、2015年開発のCal.FC-715の進化版で、パワーリザーブを大幅に延長した。他にシルバーとネイビー文字盤を用意。保証期間も5年に延長。自動巻き(Cal.FC-716)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径40mm、厚さ11.7mm)。5気圧防水。66万円(税込み)。
Edited & Text by Iwao Yoshida
[クロノス日本版 2024年7月号掲載記事]
マニュファクチュール化を果たして20周年
フレデリック・コンスタントの勢いが止まらない。今年も昨年に引き続き、ウォッチズ&ワンダーズに出展。錚々たる名門勢と肩を並べ、多くのバイヤーやジャーナリストから注目を浴びていた。昨年、創業35周年を迎えたばかりの若いブランドとは思えない躍進ぶりといえよう。
最初のメガヒットは、1994年に発表した、文字盤12時位置に小窓を開け、テンプを鑑賞できるように仕立てた「ハートビート」モデルだ。この独創的なギミックは、持ち味とするクラシカルエレガントなデザインに絶妙な遊び心を添え、たちまち多くの人を魅了した。ちなみにこのハートビートについて同社は特許を取らなかった。結果、同様のオープンワークを施したモデルが時計界でブームになったのは、時計好きなら周知のことだろう。
しかし2004年にはそうしたフォロワーとの差別化にも成功する。3年の歳月をかけて、文字盤の12時位置ではなく、6時位置側にテンプを持つ、完全自社開発・製造のムーブメントを搭載したモデルを発表したのだ。
このとき創業から16年。新参のブランドが自社製ムーブメントを持ったことに時計界は震撼したが、実はこれは序章に過ぎなかった。同社はここからさらに時計製造の全工程を自社で貫徹するマニュファクチュール化の道を強力に推進。そしてトゥールビヨン、パーペチュアルカレンダー、フライバッククロノグラフなどの複雑系ムーブメントも次々とものにしていった。
従来モデルからケースサイズを2mm縮小した新作。文字盤の密度感が高まり、スリムな楔形インデックスやレイルウェイトラック、印象的な輝きを放つソレイユ装飾など、アップデートされたディテールの美しさが際立つ。写真のサーモン文字盤のほか、シルバーとブラックもあり。保証期間も5年に延長。自動巻き(Cal.FC-706)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径40mm、厚さ11.7mm)。5気圧防水。55万円(税込み)。
マニュファクチュール化20周年の節目となる今年も、先のウォッチズ&ワンダーズにおいて、それぞれ新開発の自社製ムーブメントを搭載した新作を2モデル発表した。それがご覧の「クラシック ムーンフェイズ デイト マニュファクチュール」と「クラシック デイトマニュファクチュール」だ。詳しくは各キャプションを参照していただきたいが、ともにオニオンリュウズが際立つ小ぶりの40mm径ケースにソレイユ装飾を施した文字盤をセット。クラシックにしてモダンな色気も薫る佇まいは、まさしくここの真骨頂だ。しかもいずれのムーブメントも大容量の香箱を搭載して約72時間パワーリザーブを実現している。審美眼ある時計好きの心を確実に捉える仕上がりだ。
これで現在同社の自社製ムーブメントは33個となった。20年間でここまでの数を作り上げてしまった情熱に、改めて脱帽する。新作もそうだが、一部のコンプリケーションを除き、こうした自社製ムーブメント搭載機をいまだ50〜60万円台のミドルレンジプライスで提供しているというのも驚愕だ。
よく知られるように、フレデリック・コンスタントは“手の届くラグジュアリー”を創業以来のコンセプトに掲げる。マニュファクチュール化を進めたのも、その理念をより高い次元で実現するとの思いがあったはずだ。すべてを自分たちでコントロールできれば、自社製ムーブメントも適正な価格で提供できる。そしてこうした真摯な姿勢を貫いてきたからこそ、同社は短期間でジュネーブを代表するブランドのひとつに上り詰めることができたのだ。
なお、6月22日から7月28日まで「マニュファクチュールフェア」をフェア該当店舗で開催。期間中に対象時計を購入すると、オリジナル本革製ウォッチケースが進呈される。この機会に店頭を訪れ、真摯過ぎるほど真摯な同社のウォッチメイクに触れてほしい。
【詳しくはフレデリック・コンスタント公式ページにて】
https://frederiqueconstant.jp/news/240606
ブランド創業35周年と自社開発トゥールビヨンの誕生15周年を祝し、昨年発売された限定モデル。6時位置のオープンハートをより大きく開口し、シリコン製ガンギ車とアンクルを備えたトゥールビヨンをさらに格調高く演出する。自動巻き(Cal.FC-980)。SSケース(直径39mm、厚さ10.9mm)。5気圧防水。世界350本限定。253万円(税込み)。
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