フレデリック・コンスタント 奇跡的躍進のバックグラウンド

FEATURE本誌記事
2024.06.20

創業は1988年だから、老舗ひしめくスイス時計界では新参だ。しかしフレデリック・コンスタントの現在のポジションは、そんな“若さ”が信じられないものだ。20年前からマニュファクチュール化を強力に推し進め、今年も新たに開発した自社製ムーブメント搭載のモデルを2本発表した。なぜこのブランドはここまで急成長できたのか? その躍進の軌跡を振り返りながら、注目の新作を紹介しよう。

クラシック ムーンフェイズ デイト マニュファクチュール

クラシック ムーンフェイズ デイト マニュファクチュール
月齢と日付表示を統合した6時位置インダイアルが、ソレイユ装飾が施されたグリーン文字盤の詩情を一層高めるアクセントに。ケースバックから鑑賞できる新開発の自社製ムーブメントは、2015年開発のCal.FC-715の進化版で、パワーリザーブを大幅に延長した。他にシルバーとネイビー文字盤を用意。保証期間も5年に延長。自動巻き(Cal.FC-716)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径40mm、厚さ11.7mm)。5気圧防水。66万円(税込み)。
吉田巌:編集・文
Edited & Text by Iwao Yoshida
[クロノス日本版 2024年7月号掲載記事]


マニュファクチュール化を果たして20周年

フレデリック・コンスタントの自社工場

初の自社ムーブメントを誕生させた2年後の2006年に、ジュネーブ近郊のプラン・レ・ワットに新しい自社工場を設立。デザインから開発、組み立て、品質管理に至るすべてを自社で一貫して行う体制を整えた。19年には世界的に高まる需要に対応するため、2倍の規模に拡張した。

 フレデリック・コンスタントの勢いが止まらない。今年も昨年に引き続き、ウォッチズ&ワンダーズに出展。錚々たる名門勢と肩を並べ、多くのバイヤーやジャーナリストから注目を浴びていた。昨年、創業35周年を迎えたばかりの若いブランドとは思えない躍進ぶりといえよう。

 最初のメガヒットは、1994年に発表した、文字盤12時位置に小窓を開け、テンプを鑑賞できるように仕立てた「ハートビート」モデルだ。この独創的なギミックは、持ち味とするクラシカルエレガントなデザインに絶妙な遊び心を添え、たちまち多くの人を魅了した。ちなみにこのハートビートについて同社は特許を取らなかった。結果、同様のオープンワークを施したモデルが時計界でブームになったのは、時計好きなら周知のことだろう。

ウォッチズ&ワンダーズ 2024のフレデリック・コンスタントのブース

2023年に続き、24年もウォッチズ&ワンダーズに出展。ラグジュアリーウォッチの高価格化が進む中、変わらず高品質な腕時計を適正価格で提供する同社の姿勢は、各国のバイヤーやジャーナリストから絶賛された。

 しかし2004年にはそうしたフォロワーとの差別化にも成功する。3年の歳月をかけて、文字盤の12時位置ではなく、6時位置側にテンプを持つ、完全自社開発・製造のムーブメントを搭載したモデルを発表したのだ。

 このとき創業から16年。新参のブランドが自社製ムーブメントを持ったことに時計界は震撼したが、実はこれは序章に過ぎなかった。同社はここからさらに時計製造の全工程を自社で貫徹するマニュファクチュール化の道を強力に推進。そしてトゥールビヨン、パーペチュアルカレンダー、フライバッククロノグラフなどの複雑系ムーブメントも次々とものにしていった。

クラシック デイト マニュファクチュール

クラシック デイト マニュファクチュール
従来モデルからケースサイズを2mm縮小した新作。文字盤の密度感が高まり、スリムな楔形インデックスやレイルウェイトラック、印象的な輝きを放つソレイユ装飾など、アップデートされたディテールの美しさが際立つ。写真のサーモン文字盤のほか、シルバーとブラックもあり。保証期間も5年に延長。自動巻き(Cal.FC-706)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径40mm、厚さ11.7mm)。5気圧防水。55万円(税込み)。

 マニュファクチュール化20周年の節目となる今年も、先のウォッチズ&ワンダーズにおいて、それぞれ新開発の自社製ムーブメントを搭載した新作を2モデル発表した。それがご覧の「クラシック ムーンフェイズ デイト マニュファクチュール」と「クラシック デイトマニュファクチュール」だ。詳しくは各キャプションを参照していただきたいが、ともにオニオンリュウズが際立つ小ぶりの40mm径ケースにソレイユ装飾を施した文字盤をセット。クラシックにしてモダンな色気も薫る佇まいは、まさしくここの真骨頂だ。しかもいずれのムーブメントも大容量の香箱を搭載して約72時間パワーリザーブを実現している。審美眼ある時計好きの心を確実に捉える仕上がりだ。

 これで現在同社の自社製ムーブメントは33個となった。20年間でここまでの数を作り上げてしまった情熱に、改めて脱帽する。新作もそうだが、一部のコンプリケーションを除き、こうした自社製ムーブメント搭載機をいまだ50〜60万円台のミドルレンジプライスで提供しているというのも驚愕だ。

クラシック デイト マニュファクチュール

文字盤には放射状に繊細なソレイユ装飾が施され、ダイアル上の光を美しく均等に反射。時分針とインデックスにはダイヤモンド研磨によるファセット加工が施され、よりリッチなニュアンスを高めている。
Cal.FC-706

搭載するのは12年発表のCal.FC-710の進化版であるCal.FC-706。大容量の香箱を収めるため、ブリッジは全面的にリデザインされており、装飾も従来のサークル状のペルラージュから、扇状のコート・ド・ジュネーブに変更された。

 よく知られるように、フレデリック・コンスタントは“手の届くラグジュアリー”を創業以来のコンセプトに掲げる。マニュファクチュール化を進めたのも、その理念をより高い次元で実現するとの思いがあったはずだ。すべてを自分たちでコントロールできれば、自社製ムーブメントも適正な価格で提供できる。そしてこうした真摯な姿勢を貫いてきたからこそ、同社は短期間でジュネーブを代表するブランドのひとつに上り詰めることができたのだ。

 なお、6月22日から7月28日まで「マニュファクチュールフェア」をフェア該当店舗で開催。期間中に対象時計を購入すると、オリジナル本革製ウォッチケースが進呈される。この機会に店頭を訪れ、真摯過ぎるほど真摯な同社のウォッチメイクに触れてほしい。

【詳しくはフレデリック・コンスタント公式ページにて】
https://frederiqueconstant.jp/news/240606

クラシック トゥールビヨン マニュファクチュール

クラシック トゥールビヨン マニュファクチュール
ブランド創業35周年と自社開発トゥールビヨンの誕生15周年を祝し、昨年発売された限定モデル。6時位置のオープンハートをより大きく開口し、シリコン製ガンギ車とアンクルを備えたトゥールビヨンをさらに格調高く演出する。自動巻き(Cal.FC-980)。SSケース(直径39mm、厚さ10.9mm)。5気圧防水。世界350本限定。253万円(税込み)。



Contact info: フレデリック・コンスタント相談室 Tel.0570-03-1988


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