パワーリザーブ表示機構原理や有用性、メリットとデメリットを解き明かす

2019.12.12

巻き上げ残量を可視化する理由

エンジニア ハイドロカーボン ハンレー

エンジニア ハイドロカーボン ハンレー
7時位置のパワーリザーブ表示で主ゼンマイの巻き上げ残量を把握でき、間接的にアモータイザー耐衝撃システムのオン・オフも確認できる。30個の自発光マイクロ・ガスライト搭載。自動巻き(Cal.BALL RR1201/ETA2892A2ベース)。パワーリザーブ約42時間。SS(直径42mm、厚さ17.3mm)。200m防水。世界限定500本。37万円。

BALL WATCH

ボール ウォッチの「エンジニア ハイドロカーボン ハンレー」が搭載する「アモータイザー耐衝撃システム」の進化版。そもそもこのシステムは、自動巻き腕時計が外部から強い衝撃を受けた際、内部のムーブメントを保護するための耐衝撃装置である。しかし、パワーリザーブインジケーター特集なのに、なにゆえ耐衝撃装置? と、いぶかしむ向きもあろう。このアモータイザー耐衝撃システムは、自動巻き機構への衝撃を回避するため、ローターをロックするという独自の機構がある。実は、ここに意外な落とし穴があった。だが、その陥穽こそが、現代の自動巻き腕時計ユーザーに、パワーリザーブインジケーターの必要性を再認識させることになったのだ。

潜水艇CSSハンレーへの敬意を表し、裏蓋側には潜水艇のプロペラを模した回転盤のスイッチを配している。このスイッチを回すことによってアモータイザー耐衝撃システムのロックオン(固定)とロックオフ(解除)を設定することができる。

アモータイザー耐衝撃システムは、左下に見えるプロペラ型の回転盤がスイッチになっており、これを回転させることでローターの固定と解除を行うことができる。また、ムーブメントの周囲を包むエラストマー素材のインナーリングによって側面からの衝撃に耐え、同時に4800A/mの耐磁性も実現している。

 2015年の春に発表されたボール ウォッチ「エンジニア ハイドロカーボン ハンレー」。このモデルには「アモータイザー耐衝撃システム」の新バージョンが搭載されている。この機構はボール ウォッチのエンジニアが開発した革新的なもので、特許も取得している。このシステムの特徴は、外部から衝撃を受けた際に内部の損傷を防ぐ独自の構造にある。自動巻きムーブメントの場合、強い衝撃が加わるとローターが激しく回転し、ローターベアリングが損傷してしまう。とくに激しいスポーツをしている時に、慣性モーメントの大きいローターは注意する必要があるのだ。具体的な構造を述べると、ムーブメントの周囲に巡らされたエラストマー素材のインナーリングによって、ケース側面からの衝撃を吸収し、内部を守ってくれるというもの。

 さらに特筆すべきは、自動巻き用のローターをロック(固定)してしまう独創的な発想だ。裏蓋側の回転盤のスイッチでロックオンとロックオフ(解除)することができ、ロックしてしまえばローターの動きが固定されるため、衝撃が加わったとしてもローターベアリングを破損することはない。しかも、ロックした状態でも針が止まることはなく、動力供給を続けてくれるのだ。問題は、ロックしたままの状態で解除することをつい忘れてしまうこと。ローターでの巻き上げができないため、腕に着用していても時計が止まってしまう。裏蓋側にスイッチがあるため、時計装着時にオン・オフの確認ができないのも要因のひとつ。そこで導き出された解決策が、7時位置に配されたパワーリザーブ表示である。解除することを思い出させてくれる、まさに視覚的なメッセージなのだ。

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