巻き上げ残量を可視化する理由
7時位置のパワーリザーブ表示で主ゼンマイの巻き上げ残量を把握でき、間接的にアモータイザー耐衝撃システムのオン・オフも確認できる。30個の自発光マイクロ・ガスライト搭載。自動巻き(Cal.BALL RR1201/ETA2892A2ベース)。パワーリザーブ約42時間。SS(直径42mm、厚さ17.3mm)。200m防水。世界限定500本。37万円。
BALL WATCH
ボール ウォッチの「エンジニア ハイドロカーボン ハンレー」が搭載する「アモータイザー耐衝撃システム」の進化版。そもそもこのシステムは、自動巻き腕時計が外部から強い衝撃を受けた際、内部のムーブメントを保護するための耐衝撃装置である。しかし、パワーリザーブインジケーター特集なのに、なにゆえ耐衝撃装置? と、いぶかしむ向きもあろう。このアモータイザー耐衝撃システムは、自動巻き機構への衝撃を回避するため、ローターをロックするという独自の機構がある。実は、ここに意外な落とし穴があった。だが、その陥穽こそが、現代の自動巻き腕時計ユーザーに、パワーリザーブインジケーターの必要性を再認識させることになったのだ。
2015年の春に発表されたボール ウォッチ「エンジニア ハイドロカーボン ハンレー」。このモデルには「アモータイザー耐衝撃システム」の新バージョンが搭載されている。この機構はボール ウォッチのエンジニアが開発した革新的なもので、特許も取得している。このシステムの特徴は、外部から衝撃を受けた際に内部の損傷を防ぐ独自の構造にある。自動巻きムーブメントの場合、強い衝撃が加わるとローターが激しく回転し、ローターベアリングが損傷してしまう。とくに激しいスポーツをしている時に、慣性モーメントの大きいローターは注意する必要があるのだ。具体的な構造を述べると、ムーブメントの周囲に巡らされたエラストマー素材のインナーリングによって、ケース側面からの衝撃を吸収し、内部を守ってくれるというもの。
さらに特筆すべきは、自動巻き用のローターをロック(固定)してしまう独創的な発想だ。裏蓋側の回転盤のスイッチでロックオンとロックオフ(解除)することができ、ロックしてしまえばローターの動きが固定されるため、衝撃が加わったとしてもローターベアリングを破損することはない。しかも、ロックした状態でも針が止まることはなく、動力供給を続けてくれるのだ。問題は、ロックしたままの状態で解除することをつい忘れてしまうこと。ローターでの巻き上げができないため、腕に着用していても時計が止まってしまう。裏蓋側にスイッチがあるため、時計装着時にオン・オフの確認ができないのも要因のひとつ。そこで導き出された解決策が、7時位置に配されたパワーリザーブ表示である。解除することを思い出させてくれる、まさに視覚的なメッセージなのだ。