ハミルトンが1970年にリリースした「ハミルトン パルサー」。世界初のLED式デジタルウォッチとして知られている。パルサーにはいくつかのバリエーションが存在しており、今回着用レビューするのは1974年発売の「ハミルトン パルサー クッション」のデザインを忠実に再現した「PSR 74」だ。本作を着用中、男女問わずさまざまな人から「それってなんの時計?」と声を掛けられた。これ、女子にとってのモテ時計の決定版!?※時計好きからに限る
Photographs & Text by Chieko Tsuruoka
[2024年12月6日公開記事]
ハミルトンの2024年新作「PSR 74」を着用レビュー!
1970年、ハミルトンは世界初のLEDウォッチとして、「ハミルトン パルサー」を発売した。その50周年にあたる2020年には、1973年の発売モデルである「ハミルトン パルサー P2」を復刻した「PSR」をリリース。1970年代の、レトロフューチャーなテイストを備えたケースや、どこか懐かしいデジタル式の時刻表示が話題となったことを記憶している。この復刻モデルは、1970本限定のイエローゴールドPVDおよび、PVDを施していないシルバーカラーのステンレススティールモデルの2種がラインナップされた。
2020年に登場した「PSR」。1973年に発表された「ハミルトン パルサー P2」をベースとしている。クォーツ。SS+イエローゴールドPVDケース(縦34.7×横40.8mm)。10気圧防水。世界限定1970本。生産終了。
その後、2022年にオールブラックモデルが加わる。いずれもケースサイズは縦34.7×横40.8mmとメンズ向けで、厚さや重量もあったため、ストーリー性や意匠には引かれていたものの、あまりチェックしてこなかった。
しかし今回着用する2024年新作「PSR 74」は、1974年に発売された「ハミルトン パルサー クッション」を着想源に、直径約31mmのケースサイズでリリース。つまり、手首回り14.7cmの、女性の私にとっても着用しやすいモデルなのだ。
クォーツ。SS+PVDケース(縦25.6×横30.9mm、厚さ12.4mm)。10気圧防水。13万5300円(税込み)。
なおPSR 74も、イエローゴールドPVDを施したモデルとPVDなしのステンレススティール製モデルとが用意されており、着用レビューしたのは前者となる。
レトロフューチャーなデザインと語れるストーリーで話題の中心!?
冒頭でも記したように、このPSR 74を着用した1週間、男女を問わず、いろいろな人から「それ、なんの時計?」と聞かれた。この「いろいろな人」というのはほとんどが知り合いの時計関係者。しかし一度だけ電車の中で、見知らぬ人に「どこのブランドの時計ですか?」と尋ねられ、少し話したところ、彼もまた時計好きだった、ということがあった。
シャツやカーディガンの袖口に隠れていたのに、目ざとい時計関係者および愛好家に見つけられたのは、本作のこのレトロフューチャーな外観が目立つためだ。1970年代にハミルトンによって製造されたパルサーシリーズは、クッションシェイプのケース、そしてこのケース中央の大きい部分を占めるディスプレイが特徴的なモデルである。PSR 74のオリジナルであるハミルトン パルサー クッションも同じスタイルで、かつバングルスタイルのブレスレットはテーパーを効かせており、ユニークなフォルムを際立たせている。
後述するが、ケースサイドのふたつのプッシュボタンはディスプレイを光らせたり、時刻設定に使用したりするために備わる。このプッシュボタンは大きすぎないため、パルサーのアイコニックなケースフォルムは維持されている。ちなみに、PSRはシングルボタンだ。
1970年代の、カラフルな配色を用いていたり、ユニークなケースフォルムを備えていたりといった、独特の雰囲気をまとった腕時計は現在のひとつのトレンドだ。私自身、大好きなデザインコードであるものの、このテイストの腕時計はサイズが大きいモデルがほとんど。そのため「女性が楽しめるレトロフューチャーウォッチ」として、本作はレディース時計市場において、ありがたい存在と言える。
また、デジタルウォッチとしても、このサイズ感は珍しいのではないだろうか。デジタルウォッチというとG-SHOCKやBABY-Gが選択肢として挙げられるが、耐衝撃性や多機能性を持つがゆえに、ボリューミーなケースを持つことが多い。ここまでコンパクトなサイズ感でまとめるというのは、私がデジタルウォッチについて勉強不足ということもあるが、あまり知らない。
このように、レディース時計市場では珍しい特徴をいくつか備えているからこそ、男女問わず、時計に関心の高い層から着用時に気付いてもらえたのではないかと推測できる。私自身もこのレビューをする以前に、もし本作を着用している女性に会ったら、思わず声を掛けていただろう。
ちなみに、本作のストーリー性を話題にできたのも、会話が盛り上がるきっかけとなった。前述の通り、本作は1970年に、ハミルトンが世界初のLED式ウォッチとしてリリースしたモデルの後継機がオリジナルとなっている。そんな話から始まって、1970年代の時計業界や、現在の復刻ブームへとつながっていき、1時間くらい話し込んでしまったこともあった。
質の高い外装は、さすがハミルトン
本作の価格は税込みで13万5300円(PVDなしのSSモデルは12万1000円)。最近はG-SHOCKのMR-Gはじめ、高級デジタルウォッチが登場しつつあるものの、まだシェアは大きくなく、そんな中で本作も高額の部類に入る。
高額だからこそ、本作はこの価格なりに、つくり込まれている。パルサーのユニークな形状を再現しつつ、全体にサテン仕上げが施されており、角が落とされていることからも、滑らかな手触りとなっている。ちなみにディスプレイのサファイアクリスタルガラスも、角が立っていないので、触れて指が痛くなるといったことはなかった。
ブレスレットはコマ同士の遊びが少なく、少し緩めに着用すると浮いてしまう箇所ができたので、もうひとコマ外してぴったりサイズにした。1コマは大きすぎず、また外せる半分サイズのコマもあるため、微調整しやすいモデルだと言える。もっとも、専用工具が必要なので、ブレスレット調整は購入店や専門店にお任せしよう。
プッシュボタンやバックルの開閉もスムーズで、引っ掛かりなどはない。ちなみにディスプレイ下のみならず、バックルにもHAMILTONのロゴがあしらわれている。
ケースバックには、パルサーならではの刻印が見られる。パルサーは「パルス状の電波等を発する天体」を意味しているため、そのイメージとして配されているのだ。この刻印も角が当たるといったことはなく、ややせり出し気味で厚さはあるものの、ケース径が小さく軽量なため、着用時に違和感はなかった。
10気圧の防水性を備えることも併せて、本作は、デイリーユースに最適な高級デジタルウォッチである。
慣れるまでは使いにくかった点も
オリジナルのパルサーは電池の消耗を防ぐため、ボタンを押して点灯させないと、ディスプレイに時刻は表示されなかった。しかし2020年の復刻モデルでは、反射型LCD(液晶ディスプレイ)と発光型OLED(有機発光ダイオード)のハイブリッド式となり、液晶ディスプレイを持つことで、常時時刻が点灯する仕様となった。本作でも、同じディスプレイが採用されている。
いつでも時刻が確認できるというアドバンテージを現代で備えたわけだが、自分自身があまりディスプレイ表示のデジタルウォッチについて知らなかったこともあり、表示が薄いことから、最初電池切れでも起こしているのではないかと思ってしまった。同僚の細田に聞いたところ、こういったディスプレイ表示のデジタルウォッチには、電池消耗を防ぐために、点灯時以外は表示が弱かったり、表示させなかったり(オリジナルのパルサーのように)する仕様はよくあるのだそうだ。ワンタッチで点灯させられるし、使い続けていくうちに光源に対して傾け方を工夫することでしっかり視認できるコツをつかんだものの、慣れるまでに2〜3日の時間を要した。
なお、点灯含む、操作は簡単。ケース正面向かって左側のプッシュボタンを短く押すと時刻が点灯され、そのまま何もしなければ4秒で標準モードとなる。点灯しているうちにもう一度左のプッシュボタンを押すと、秒表示となる。さらにもう一度押すことで、標準表示に。秒表示の時に何も操作をしなければ、10秒後に標準モードとなる。なお、右のプッシュボタンを短く押すと、日付表示となる。
時刻表示は24時間形式とAM/PM形式とで、選ぶことができる。
左のプッシュボタンを3秒間押し続けると調整モードとなり、調整する時間が点滅する。左のプッシュボタンを一度押すと24時間形式またはAM/PM形式を選択することができ、任意の形式を選んだ後に何もしなければ、5秒後に希望の表示形式で標準モードとなる。
この時間表示形式のモード設定の時に、右側のプッシュボタンを押すと、時刻調整モードに切り替わる。左のプッシュボタンを押すことで点滅する数字が変わるので、任意の回数を押して、時刻調整を行う。ディスプレイは点灯モードではないのでやや見にくく、何度もプッシュボタンを押すのが結構大変だったものの、ボタンが押しにくいということはないため、慣れてしまえば苦にならない。なお、AM/PM表示形式の操作時には、時間設定の際に分表示側にAまたはPが表示される。時間が設定できたら、右のプッシュボタンを押して分、秒へと切り替えていく。調整モードから何もしなければ、10秒で標準モードへと切り替わる。
日付もこのような要領で行っていく。
ちなみに説明書を読むと、電池切れのサインとして、9秒間の時刻表示ののち、batの文字が1秒間表示されるのだという。時刻表示が点滅し続けると、早急に電池交換が必要なサインとなり、点灯モードは使えなくなる。
話題づくりのきっかけになる1本
ハミルトンの2024年新作モデル「PSR 74」を、着用レビューした。
本文で何度も言及し、さらにはタイトルにまでしてしまった「モテ時計」としての本作。実際にモテるといっても「時計好きの間で話題になりやすい」程度だが、個人的には話題づくりのきっかけに大いに役立つ1本だと思った。いくら時計業界にいたって、普段着用している腕時計を尋ねられることは、そう多くない。しかし本作を身に着けている間は例外で、たびたび話題となり、自分自身もこのモデルのストーリーについて話すことで、楽しい時間を過ごした。こういったコミュニケーションツールとしての腕時計は、時計趣味の楽しさをいっそう広げてくれる。人に話すために自分自身もその時計について知ろうと思うし、他人からポジティブな反応をもらえれば、より愛着が湧くためだ。
13万5300円(税込み)と、手の届きやすい価格ということもあり、“モテ”のために購入を真剣に検討している今日この頃である。