2018年より、腕時計事業にも参入しているドイツのライカ。2025年3月にその最新作となる「ライカZM 12」がリリースされた。ライカZM 12のお披露目を兼ねて、今回マネージングディレクターであるヘンリック・エクダールが来日。同社の顧客を集めてのイベントが開催されたので、その様子を新作モデルとともにレポートする。
Text by Chieko Tsuruoka(Chronos-Japan)
[2025年3月26日公開記事]
ライカが新作腕時計「ライカZM 12」を発表!
高品質なカメラを手掛けるドイツブランドとして知られるライカが、腕時計も販売していることをご存じだろうか?
2018年6月、同社は「ライカL1」と「ライカL2」を発表。カメラのシャッターボタンから着想を得た、プッシュ機能付きリュウズを有しており、実用性と「操作する楽しさ」を兼ね備えたモデルであった。

プッシュボタンが備わったリュウズが特徴的な「ライカZM 1」。このプッシュボタンはファンクションセレクターとなっており、リュウズによる主ゼンマイの巻き上げまたは時刻合わせの操作を、ボタンを押すごとに切り替えられる。時刻合わせの際は、ボタンを押すと同時に秒針がゼロリセットされる。なお、時分針のハカマの横に取り付けられた小窓で、現在選択している機能を確認できたり、2時位置のプッシュボタンで日付の早送りを行えたりする点も便利だ。手巻き(Cal.L1)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径41mm、厚さ14.5mm)。50m防水。156万2000円(税込み)。

ライカZM 1にデュアルタイム機能を付加した「ライカZM 2」。4時位置のリュウズでインナーベゼルを操作して、第2時間帯表示を変更することができる。手巻き(Cal.L2)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径41mm、厚さ14.5mm)。50m防水。217万8000円(税込み)。
このライカL1とライカL2は現在も「ライカZM 1」「ライカZM 2」と名前を変えて、同社の腕時計事業を牽引する存在である。一方でレーマン・プレシジョンウーレン社と共同開発した手巻きムーブメントを搭載させ、プッシュボタンの押し心地やリュウズの操作性を追求するなど(カメラも好きな小誌編集部員の細田雄人いわく、M型ライカのプッシュボタンに感触を似せているとのこと)、特にライカコレクターを中心とした、マニア垂涎の製品であった。
そこで、より幅広い層にリーチするために2023年にローンチした腕時計が「ライカZM 11」であり、このライカZM 11をベースに、コンパクトなサイズとミニマルな意匠を実現したのが、今回の新作「ライカZM 12」である。
自動巻き(Cal.ライカLA-3002)。38石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径39mm、厚さ13mm)。100m防水。100万1000円(税込み)。ストラップは別売りで、(左から)クル・ド・パリ オレンジストラップが11万円、ラバーストラップが8万6900円(いずれも税込み)。Blue Orangeのみ2025年4月発売予定。

自動巻き(Cal.ライカLA-3002)。38石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径39mm、厚さ13mm)。100m防水。100万1000円(税込み)。SSブレスレットは別売りで、18万1500円(税込み)。

自動巻き(Cal.ライカLA-3002)。38石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。Tiケース(直径39mm、厚さ13mm)。100m防水。107万8000円(税込み)。ファブリックストラップは別売りで、11万8800円(税込み)。
リリースされたライカZM 12は、全部で4型だ。Blue Orange、Silver Gray、Olive Blackの文字盤を備えたステンレススティール製モデルが3種、Chocolate Blackの文字盤を備えたチタン製モデルが1種である。ライカZM 11およびライカZM 12は、すべての製品に工具なしでストラップの脱着が可能なイージーチェンジシステムが備わっているため、別売りのブレスレットやストラップを購入することで、ユーザーはさまざまな組み合わせを楽しむことができる。
搭載するムーブメントはクロノード社製の自動巻きCal.ライカ LA-3002。機能はシンプルな3針で、カレンダー表示もない。パワーリザーブは約60時間。100mの防水性と併せて、実用性が高く扱いやすい腕時計となっている。
「ライカZM 12」のリリースに伴い開かれた「ライカWatchイベント」
ライカZM 12の日本でのお披露目に伴い、東京・丸の内の某所で「ライカWatchイベント」が開催され、ライカの顧客とメディアが招待された。
会場には新しくリリースされた「ライカZM 12」の4型と、「ライカZM 11」の4型、「ライカZM 1」「ライカZM 2」そしてこのライカZM 1とライカZM 2をオールブラックに仕立て上げた「ライカZM 1 Monochrom」「ライカZM 2 Monochrom」が並んだ。
すべての実機がタッチ&フィールOK。実際に手に取ることで改めてライカZM 12をはじめ、ライカウォッチの完成度の高さに驚かされた。
「ライカZM 12」がすごいんです!

会場に並ぶライカZM 12を、早速手に取った。直径39mm、厚さ13mmのケースはラグを持たないこともあり、コンパクトであると同時に、コロンとしたフォルムがユニークに感じた。
一方でさすが「憧れのカメラのつくり手」というポジショニングをカメラ市場で築いてきたライカだけあり、エンドピースやブレスレットの角は立っておらず、肌あたりが良い。また、サテン仕上げを基調としたケース・ブレスレットはツール感がある一方で、稜線にはポリッシュ仕上げが与えられており、全体的にマットな仕上がりのライカZM 11と比べて、洗練された印象を有している。

本作は文字盤も大きな見どころだ。ライカZM 11から受け継ぎつつも進化させた二層構造となっており、6時位置のスモールセコンド用のインダイアルと文字盤部分は別体で製造することで、ミニマルでありながらも、奥行きを感じさせる仕上がりとなっているのだ。
この文字盤はラッカー仕上げで、サンレイとともに、横ストライプの装飾が型押し加工されている。腕時計を動かすと光の筋が走るとともに、色の濃淡が変わる様が、見ていて飽きない。ちなみにこの文字盤の表情の変化は、「光と影の面白さという、写真の要素のひとつ」を表しているとのことだ。
いずれのカラーも深みのある文字盤が優美で、ビビッドではなく柔らかい色味がよく発色している。なお、装飾やラッカー、ポリッシュの工程を経て、文字盤ひとつにつき3週間くらいかけて作られるのだという。ノンデイトかつスモールセコンドというミニマルでクラシカルなスタイルを有しつつ、文字盤だけ取っても独創性がある点からも、ライカの時計製造の手腕がうかがえる。

ケースバック側を見ると、12時側・6時側エンドピースに赤いボタンが取り付けられているのが分かる。このボタンを押すと、カチッとストラップが外れるイージーチェンジ機能となっているのだ。アタッチメントからカチッと小気味よく脱着させることができ、パーツの加工精度の高さを感じる。なお、ムーブメントは前述の通りクロノード社製であり、文字盤にはSWISS MADEの文字が記されるが、外装を製造するサプライヤーはドイツメーカーとのこと。
今後ライカZM 12は、全国のライカストアやライカオンラインストアで販売されるという。
実機を操作できて、社員に直接さまざまな話を聞けるというのは、イベントならでは。とはいえ前述の通り、全国販売されるということなので、カメラ愛好家も時計愛好家も一度実機を見に行ってみてほしい。
ヘンリック・エクダールのプレゼンテーション
今回のイベントに合わせて、ライカの時計およびアクセサリー事業部門を手掛けるエルンスト・ライツ・ヴェルクシュタッテン GmbH(ELW)のグローバルマネージングディレクター、ヘンリック・エクダールが来日。ライカの時計事業への参入やその歴史、新作コレクションについてプレゼンテーションを行った。
エクダールの話で面白かったのが、ライカの歴史が時計と密接に関わっているということだ。ライカの創業者であるエルンスト・ライツ1世は、ファインメカニクスの勉強のために、スイスへ時計のつくり方を学びに赴いていたというのだ。金属パーツの加工や量産技術を学んだライツ1世は、ドイツ・ウェッツラーに帰国後、この技術を生かして顕微鏡の製造をスタートさせた。そんな歴史を持つがゆえ、小型精密カメラの製造を実現してきた同社が、時計事業に参入しない手はない。2015年から「腕に着けるライカ」を標榜して本格的に時計製造に着手し、2018年の「ライカZM 1」「ライカZM 2」へと結実させた。

プレゼンテーション後はライカウォッチのタッチ&フィールを含む、自由交流の場が設けられた。エクダールも顧客に混じりながら談笑しており、直接製品やライカのブランド戦略について話を聞くことができた。そんな中で印象に残ったのが、ライカの「これから」だ。ライカはカメラや時計はのみならず、双眼鏡などのスポーツオプティクスやスマートフォン関連事業など、多角的に事業展開している。エクダールは「カメラを幹にして(これらの事業を)広げていく。時計も、その拡張対象のひとつ」と語った。この言葉から、今後もライカウォッチが拡充され、いっそう面白い新作モデルが出てくるのではないかと期待してしまう。
ライカ愛好家との交流も楽しかったイベント
今回のイベントはプレスのみならず、顧客も招いて催されたものだった。そのため個人的な話となって恐縮だが、普段接することの少ないカメラ愛好家と交流できたのが、とても楽しい思い出となった。腕時計の話が中心とはなったが、やはりカメラ製造との共通点は多いようで、改めて勉強になることも多かった。
なお、イベント中にフォトグラファーであり、時計部門のトレーニングマネージャーや戦略コンサルタントを務めるクリスチャン・ダウリングによる「撮影講座」も開かれた。ライティングの方法など、細かく説明がなされており、筆者自身もカメラを始めてみたくなった。
非凡な時計のつくり手として
2025年、ライカから新たにリリースされた「ライカZM 12」のお披露目イベントに参加した様子をレポートした。
これまではコアな愛好家向けとも言えるコレクションを中心に展開してきたライカが、より幅広いユーザーを見据えて発表した新作コレクション。しかし決してこれまでのライカウォッチの廉価版などではなく、非凡なつくりの外装を備えた新作腕時計である。非時計専業メーカーでありながら、これほどこなれた腕時計を新たに作れるというのは、ヘンリック・エクダールも述べていた通り、時計製造とカメラ製造には共通する部分も多いためであろう。
時計愛好家はぜひ一度、本コレクションの実機を手にしてみてほしい。その出来栄えに所有欲をくすぐられるとともに、ライカの今後の時計事業展開が楽しみになるに違いない。