腕時計とゴルフカウンターを合体させるというゴルファーの夢を耐衝撃構造で実現したヤーマン&ストゥービ。だが、衝撃はムーブメントにのみ及ぶわけではない。針にも痛手を与えてしまうのだ。この腕時計のディテールを見ると、そのダメージを最大限軽減させる工夫が見受けられるのである。
Photographs by Eiichi Okuyama
大橋洋介(本誌):取材・文
Edited & Text by Ohashi Yousuke (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2025年5月号掲載記事]
ヤーマン&ストゥービ「タイム トゥ プレイ」「イーグルハート/タイム トゥ プレイ」

ホールごとのストローク数、総ストローク数、ホール数をカウントできる、スコアカウンターを搭載する腕時計。ベゼル上には71個のダイヤモンドがセットされ、12時位置の真紅のルビーが特徴的な、ヤーマン&ストゥービの中でもきらびやかなモデルだ。自動巻き(Cal.A10-2)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径44mm)。10気圧防水。137万5000円(税込み)。
腕時計にゴルフのスコアカウンターを搭載するというアイデアは、ゴルファーにとっては、長い間の夢であったに違いない。アンティークウォッチ市場では、まるで腕時計のような見た目のゴルフカウンターを時折見かける。その存在から、ゴルフカウンター付き腕時計が、長年求められてきたことが分かる。
腕時計にゴルフカウンターをという夢を、ヤーマン&ストゥービはかなえた。文字盤の下、ムーブメントの上にゴルフカウンター機構を司るモジュールを搭載することで、この機能を実現。だが、カウンターを搭載しさえすれば良いというものではない。ゴルフというスポーツは、ゴルフクラブを振り回す。その時に手首に着けた腕時計には、大きな負荷が掛かる。一般的な機械式ムーブメントは耐えられずに壊れてしまう。

❷総スコア数
❸リュウズ
❹ストローク用プッシャー
❺リセットボタン
❻次ホール用プッシャー
❼ホール数カウンター
ゴルフ用のスコアカウンターは、以下のように使用する。ワンストロークの後に❹のプッシャーを押す。ホールごとのストローク数を表示する❶のカウンターと、総スコアを数える❷のカウンターの針が、同時に進む。❻の次ホール用プッシャーを押すと、❶のカウンターは帰零するが、❷の総スコアは積算され続ける。また、❼にあるホール数カウンターの針がひとつ進む。最後に、❺のリセットボタンを押すと、すべてが帰零する。
そこでヤーマン&ストゥービは独自の耐衝撃装置「ショック・ガード」を開発した。この腕時計のミドルケースと裏蓋の間には、ムーブメントを格納した中枠が収められている。その中枠を、上下からゴム製のパッキンで挟み込むことによって、ゴルフのスイング時に掛かる強力なインパクトを、ゴムの力を用いて吸収させるという仕組みを開発したのだ。
しかしながら、衝撃はムーブメントにのみ及ぶわけではない。それは針にも及ぶ。針をよく注目してみると、その対策が見て取れる。まずは針高。時針・分針・秒針はやや高く設計されている。その理由は、衝撃を受けた際に、針がたわみ、文字盤を傷付けないようにするためだ。

次に、秒針以外の針は、付け根部分のはかまがやや大きなデザインだ。このように設計することで、針が衝撃を受けてしまった際のダメージを和らげ、外れにくくしていると考えられる。さらに時針・分針が、肉抜きされている点に注目。その理由は、腕時計に大きな遠心力が加えられた場合にも、針の進みがおかしくならないように、適切なバランス配置を考えてのことだろう。秒針に大きなカウンターウェイトが付けられているのもおそらく同じ理由だ。加えて、時針と分針には肉抜きの形状に合わせて蓄光塗料が塗布されており、針のバランスを意識しつつも、暗所での視認性も確保している。

シルバーカラー文字盤のタイム トゥプレイと同型のバリエーションモデル。文字盤色はグレーであり、レッドカラーのアリゲーターストラップが装備される。ストラップ内部に吸湿性素材が採用されているため、ゴルフプレイ中でも快適に使用することができる。自動巻き(Cal.A10-2)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径44mm)。10気圧防水。137万5000円(税込み)。
この腕時計の文字盤上のデザインは、機能的な必然性を考慮して設計されているように見受けられる。プレイ中でもすぐにスコアが確認できるように、カウンターに関する針はレッドでまとめられ、数字は視認性を考慮した配色だ。他方、計時に用いる針はシルバーカラーであり、アワーインデックスはアプライドされた目立つものだ。このために、同じ文字盤上でも混同することはない。
スコアカウンターを搭載しているがゆえの高い視認性と、大きな衝撃への備えが必要とされる本作。要求される機能を体現した文字盤デザインの手腕には、感嘆させられる。
