渡辺健司氏 インタビュー(続き)
― インバウンドは増えていますか?
「日本橋本店は元からインバウンド売り上げは多くなく、フェア期間中も変化はほぼありません。」
― 今年から無金利ローンを始められましたが、効果はあったでしょうか?
「日本橋本店はほとんどありませんでした。告知方法、他の施策を含め、未来へ向けて再検討する必要があります」
― 初めてドイツ系ウオッチのコーナーを作られましたが、効果はあったのでしょうか?
「ジャーマンウオッチという打ち出し方はせずに、ドイツ系ブランドのかたまり感をブースで表現したのですが、効果はありました。初めて参加いただいたグラスヒュッテオリジナルは二桁本数の成約がありました」
※写真はイメージです
― 日本橋三越本店といえば富裕な外商顧客で有名ですが、お客様の嗜好の変化や特徴があれば教えてください。
「ワールドウオッチフェアの約半分が外商のお客様に支えられています。日本橋本店はシンプルウオッチを好まれるお客様が多いのですが、今年はケース直径が40mm以下の少し小さい時計を探しておられるお客様を多く見受けました。予約よりもお持ち帰りいただいたお客様が多かったので、いつもは来店されないお客様も増えたと感じています」
― 西武百貨店で高級時計のECがスタートしましたが、三越としてECはどのようにお考えでしょうか?
「今は三越伊勢丹共通のECサイト「NOREN NOREN」で、ピアジュとショパールのECを展開しています。高級時計がECで確実に売れると今はまだ断定できませんが、100万円でも200万円でもECに抵抗なく買える顧客層はいると思っています。リアル店舗との連携は必要だと考えますが、情報発信としても高級時計のECは増やしていきたいです」
― 長時間どうもありがとうございました。
時計専門店と百貨店。どちらで買い物をするかは消費者の好みが分かれるところだろう。お目当てのブランドがあるか、比較できるブランド数は多いか、並んでいる商品点数は豊富か、新作がいち早く見れるか、商談テーブルで接客してくれるか、珈琲は出てくるか、担当者の専門知識は豊富か、限定品が買えるか、無金利ローンは何回まで組めるか、ポイントはつくか、値引き交渉に対応してくれるか、、、などなど、顧客それぞれに異なる要求に対応できる売り場に消費は集中する。
かつてファッションは対面販売が重視されてきたのだが、今では実店舗よりEコマースが売上げを伸ばしている。時計や宝飾のような高額品は、今でもお客様との対面販売が重視されているが、将来はどうなるのだろう。
百貨店は、広い売場で多くの商品を並べるだけでなく、『イベントで消費者の興味を喚起する』『マニア層を集める』『親子で楽しんでもらう』など、様々な手法で提案力を強化し、自らを変えようと努力している。伊勢丹と三越、両方の基幹店の柔軟な姿勢を垣間見たインタビューであった。