TRUMEの展開図。ベゼルの下にはGPS衛星電波とBluetoothを受信するデュアルリングアンテナ、文字盤の下にはソーラーセル(太陽電池)、合計8本の針を駆動するための6つのモーター、GPSとBluetoothのモジュール、複数のセンサーを内蔵する。にもかかわらず、腕時計全体の重さは135g。軽い純チタンを熱間鍛造で薄く加工すればこその軽さだ。
また、エプソンの開発チームは、「触りたくなる」要素を、機能だけでなく外装にも盛り込んだ。チタン製のケースは、切削ではなく、熱間鍛造で成型したもの。複雑な造形を与えられるほか、素材自体も硬くなる。チタンケースに最も向いた加工方法だが、大掛かりな設備が必要なため、今や採用するメーカーはほとんどない。しかし、エプソンはあえて熱間鍛造を選ぶことで、価格以上の複雑なデザインをTRUMEに与えたのだ。その滑らかで立体的なケースには細部まで貫かれた開発陣のこだわりが詰まっている。
今までも、日本の時計メーカーは多機能なクォーツウォッチを得意としてきた。だが、新たに参入するエプソンは、TRUMEの第1作に、より一層の高機能と、触る楽しさを加えたのである。エプソンの高度な技術が可能にした、実用的で、持つ喜びに満ちた腕時計。21世紀の新しい時計像が、ここにはある。
触りたくなるTRUMEの外装。(左)ねじ込み式のリュウズ。肌への刺激を抑えるため、あえてエッジを落としたほか、引き出しやすくするため、爪を引っかける溝が設けられた。(中)ファーストモデルのアイコンが、ケースの上下に配された台形状の「アーマーオーナメント」だ。ケース同様、精密な熱間鍛造で加工される。また、傷つきにくくするため、ケースとブレスレットにはプロテクトコーティングが施される。(右)ケースの4時位置には、気圧・高度センサーが内蔵される。風による影響を受けにくくするため、カバーが設けられた。加工の難しい純チタン素材にもかかわらず、カバーの表面には細かな筋目仕上げが施される。