ボーイフレンド スケルトンには新規設計のキャリバー 3.が搭載される。開発の目的は、丸を強調すること。そのため、歯車はLIGAで成形されたほか、地板と受けを留めるネジもケース内に隠れる“耳”に設けられた。また、アクセントとして一部に金をあしらっている。ブラスにADLC処理を施し、改めて一部を削ったところに金メッキを施すという凝りようだ。ADLCの被膜は1ミクロンしかないが、硬いため削るのは難しい。しかしシャネルは美観のため、あえて新しい手法を採用した。(下)組み立て中のキャリバー 3.。左側の“耳”の部分には、時刻を合わせるための日の裏機構の一部が内蔵されている。ムーブメントの抜けをよくするため、香箱は裏側でのみ支えられている。
決して声高にクリエイションを語らないシャネル。語れないのではなく、語らないだけなのは、プロダクトを見れば理解できる。ローマン・ゴティエの工房とG&Fシャトランを見ればなおさらだ。彼ら・彼女らは限りなくすべてを見せてくれたし、取材に対して一切の制約も付けなかった。物作りに確信を持っていればこそ、だろう。しかし、ふと思う。なぜ、彼ら・彼女らは語りたがらないのか。設計者は確信を持った口調で静かに語った。「私たちの目的は、美しい時計を作ること、それだけだ。テクニックはテクニックのためにあるのではなく、クリエイターのために使われるべきである」。
「決して変えられないものがある。私は一流をつくりたい」。ガブリエル シャネルは語るべき時に語り、あとは余計な言葉を発せず、生涯を美に捧げた。筆者は思う。彼女の魂は今なお、シャネルの人々を突き動かしているのではないか、と。
ボーイフレンド スケルトン
新型ムーブメントを載せた2018年の新作。LIGAで成形された歯車や、表にネジを見せないデザインなど、類を見ない構成を持つ。シャネルの常で、リュウズの感触も秀逸だ。手巻き(キャリバー 3.)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。18Kベージュゴールド(縦37×横28.6mm)。30m防水。予価476万2500円。今夏発売予定。
新型ムーブメントを載せた2018年の新作。LIGAで成形された歯車や、表にネジを見せないデザインなど、類を見ない構成を持つ。シャネルの常で、リュウズの感触も秀逸だ。手巻き(キャリバー 3.)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。18Kベージュゴールド(縦37×横28.6mm)。30m防水。予価476万2500円。今夏発売予定。