ブレゲ新生マリーンが拡張する 〝エレガンス スポーティー〟の 版図 [前編]

2018.08.10

MARINE CHRONOGRAPHE 5527

1990年に始まった「マリーン」コレクションにおいて、クロノグラフも第3世代に入った。第2世代の「マリーン フライバック クロノグラフ 5827」と同様にフライバック機能を特徴とするが、分積算表示についてはむしろオーソドックスなインダイアルのスタイルに回帰した。ムーブメントは、ブレゲの有名なパイロットクロノグラフに搭載されるキャリバー582Qを改良した進化版。先端素材を駆使して機能強化を図った。

マリーン クロノグラフ 5527
スモールセコンド、30分積算計、12時間積算計からなる3インダイアルは、大小のメリハリをつけ、波模様のギヨシェ彫りを連続させるなどして独特の表情を演出。自動巻き(Cal.582QA)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。シリコン製ヒゲゼンマイと脱進機搭載。18KWG(直径42.3mm)。10気圧防水。予価366万円。今秋発売予定。

より強化されたフライバック機構は弛まぬ進化の証し

 ゴールド製ケースにギヨシェ彫りのダイアルとブレゲ針を配した「マリーン」の初代クロノグラフは、リュウズ周辺を特徴づける意匠あるいは独特のブレスレットなどを除けば、ブレゲの伝統を反映したクラシカルなモデルと大差ない印象を与えるものであった。

 スポーティーなクロノグラフとしての個性が明確に打ち出されたのは、2005年発表の第2世代「マリーン フライバック クロノグラフ 5827」からだ。ケースは直径42.3㎜へと大径化して防水性も100mに向上、センター針による60分積算計やフライバック機能が備わるなど、ラグジュアリーウォッチにテクニカルな魅力が行き渡っていた。

 今回、第3世代となる「マリーン クロノグラフ 5527」の特色は、なにより新生マリーンのデザインコードを採用してスポーティーな感覚を以前にも増して高めた点にある。クロノグラフダイアルは、スタンダードな3インダイアルのスタイルを採用し、そのおかげでケースを若干薄くすることができ、さらに角型プッシュボタンを小さくするなど、圧倒的な重厚感が漂う第2世代とは違い、総じてクロノグラフに軽快な表情をもたらし、親しみやすくなった。

 最新モデルの個性は外観のみならず、ムーブメントにも見て取れる。キャリバー582QAは、レマニア製1350をベースに、1990年代から長らく「タイプXX(トゥエンティ)」に使われてきたフライバック機能付きの自動巻き582だが、調速脱進機にシリコン素材のパーツを組み込み、LIGAの製法で作ったクロノグラフ中間車を新たに用いるなど、先端技術でアップデートを図った進化版に改良されているのは注目に値する。

クロノグラフはWG、RG、Tiの3種を展開し、ゴールドケースはギヨシェ彫りを施したブルーもしくはシルバーカラー文字盤、チタンはサンバースト・スレートグレー仕上げの文字盤を備える。同一のデザインとムーブメントながら、素材でクロノグラフの印象が変わるのも興味深い。(右)18KRG。予価366万円。(左)Ti。予価233万円。今秋発売予定。