エレガンスコレクションキャリバー9S 20周年記念限定モデル

GRAND SEIKO

エレガンスコレクションキャリバー9S 20周年記念限定モデル
約半世紀ぶりに開発された女性用自動巻きCal.9S25を搭載する女性用メカニカルモデル。新制定のグランドセイコー規格検定(婦人用)をクリアする高精度に加え、高耐磁性とロングパワーリザーブを誇る。下の写真はシースルーバックからのぞくCal.9S25。女性用にチューンしただけあって、リュウズは引きやすく、手巻きの感触も軽い。グランドセイコーにふさわしく、リュウズのガタも抑えられている。なお、初回限定品のムーブメントには、青焼きのネジが備えられている。自動巻き。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ50時間以上。18KRG(直径28.7mm)。10気圧防水。世界限定50本。330万円。セイコーフラッグシップサロン、セイコープレミアムブティック、セイコープレミアムウオッチサロンのみでの取り扱い。※数量限定のため、完売の際はご了承ください。

女性用自動巻きの水準を刷新する約50年ぶりの新開発メカニカルムーブメント

 現在、女性用の自動巻きムーブメントを製作するムーブメントメーカーや時計メーカーは数えるほどしかない。ETA、ロレックス、ジャガー・ルクルト、ブレゲにブランパン、オメガなどである。そこに新しく加わったのがグランドセイコーだ。2018年のバーゼルワールドでお披露目された新型自動巻きムーブメントCal.9S25は、女性用自動巻きムーブメントの水準を刷新するに余りある基礎体力を備えている。


Cal.9S25

Cal.9S25
リバーサー(切り替え伝え車)式の両方向巻き上げ自動巻きを採用した女性用自動巻きムーブメント。長いパワーリザーブと、十分な耐磁性、そして女性用らしからぬ高精度を誇る。また日付表示機構には、不用意に切り替えても壊れない、安全措置が加えられた。

BASIC SPEC
●巻き上げ方式:両方向巻き上げ/リバーサー
●パワーリザーブ:50時間以上
●ムーブメントサイズ:直径19.4mm/厚さ4.49mm
●ケースサイズ:直径28.7mm/厚さ10.8mm
●その他の特徴:平均日差+8~−3秒(静的精度)、セミ瞬間日送り

 2018年、約50年ぶりに女性用の高精度機械式自動巻きムーブメントをリリースしたセイコー。開発したのは、グランドセイコーのメカニカルムーブメント搭載モデルを担当するセイコーインスツル(SII)である。
「以前から、女性用の自動巻きを開発したいという声はありました。実際に設計に着手したのは2015年の末ですね」。そう語るのは、設計責任者の荒川康弘氏だ。必要な要件は長いパワーリザーブと薄さ。「駆動時間は50時間以上。ムーブメント厚も4.5㎜に留めました。まだ薄くできますが、グランドセイコーの耐久性の基準を満たすために必要な厚さです」。

 面白いのは、自動巻き機構に両方向巻き上げのリバーサー(切り替え伝え車)を採用したことだ。これは、ETAやロレックス、グランドセイコーなどが採用する自動巻き機構だ。しかし、ローターの質量が小さいと主ゼンマイが巻き上がらないため、女性用自動巻きでの採用例は多くはない。

 

 設計を監修したセイコーインスツルの所毅氏はこう語る。「ムーブメントサイズを考えたら、片方向巻き上げの方が楽。でも、設計者として、妥協してはダメでしょう」

 幸いにも、グランドセイコーには9S65系というリバーサーの成功例があり、その設計は、この9S25に転用された。

 試作機が完成したのは2017年4月のこと。セイコーインスツルは、100個のプロトタイプを作り、実際のテストを開始した。しかし、結果は芳しくなかったという。
「理論上はよく巻き上がるはずでしたが、実際はうまく巻き上がらなかったのです」(荒川氏)。所氏が補足する。

「女性はしばしば、時計を着けた手でバッグを持ちます。その場合、まったく巻き上がらないのです。女性の運動量は、男性の半分以下だったのです」

 対してセイコーインスツルの開発チームは、リバーサーの爪や輪列の減速比を変えるなどして、女性の運動量でも巻き上がる両方向自動巻きを完成させた。

 ムーブメントをさらにブラッシュアップさせたのが、セイコーインスツルW商品企画部の山田さやか氏だ。「あらゆることにダメ出しをしました」と彼女が語る通り、機構、仕上げ、感触など、すべてが女性向きに手直しされた。それを象徴するポイントのひとつが、日付の切り替え機構だ。取り扱い説明書に記載の切り替え禁止時間帯に切り替えを行っても、カレンダー機構は壊れない。つまり、機械式時計に知識のない人でも、壊す心配はないわけだ。また、手巻き時のトルクも、女性でも巻き上げやすいように弱められた。

 セイコーにとって、約半世紀ぶりとなる女性用の高精度自動巻きムーブメント、キャリバー9S25。そのパフォーマンスは、次世代の女性用自動巻きと呼べるだけの内容を備えている。

Cal.9S25には、まったく新しい緩急針が採用された。設計担当の荒川康弘氏曰く、「かつて第二精工舎が設計した45系に倣った」とのこと。巨大なハンマー状の部品が、アオリ調整可能な緩急針。ヒゲゼンマイとの当たりが均一になるため、安定した精度を与えやすい。さらに精度を安定化させるため、テンプ受けは、頑強な両持ちに変更された。

 

Cal.9S25の構成は、成功を収めたCal.9S85に似ている。ガンギ車の挙動を安定させるためにガンギ中間車を組み込んだ輪列や、コンパクトなリバーサー、そしてLIGAで成形されたガンギ車などだ。写真が示す通り、ガンギ車の歯先には、Cal.9S85同様、油溜まりの段差が設けられている。理論上、ガンギ車の油切れは起こりにくいだろう。

グランドセイコーのデザインコードを踏襲したケースサイド。厚さ4.49mmのムーブメントを搭載し、ケースの厚さを10.8mmに留めた。また、文字盤には岩手山が銀雪を抱く姿をイメージしたシルバーラメ仕立ての「岩手山パターン」を採用するほか、ベゼル上には37個のダイヤモンド、リュウズトップにも大粒のダイヤモンドをあしらっている。