カルティエ
「カルティエ プリヴェ トノー ウォッチ」
カルティエのアールデコ調の時計というと、タンクやサントスなどを思い浮かべる人が多いかもしれないが、ここでは20世紀初頭の時計をリデザインして2019年に発表されたコレクションから紹介しよう。「カルティエ プリヴェ トノー ウォッチ」である。同コレクションのケース素材には18Kピンクゴールドとプラチナの2種類が用意され、それぞれ2針モデルとスケルトン化されたデュアルタイムモデルを展開する。1906年に登場したオリジナルモデルに目を向けてみよう。これは手首に沿うように湾曲したプラチナ製ケースが用いられ、ラグを留めるのにガンスミス・スタイルのチューブスクリューが用いられた2針モデルだった。新しい「カルティエ プリヴェ トノー ウォッチ」のベゼルとケースは、ピンクゴールドまたはプラチナの塊から削り出しで成形されたものである。カルティエはこれを「バリも傷もない滑らかな表面を持つ仕上がり」と誇る。巻き上げ用のリュウズには、クラシックなカルティエスタイルのカボションが配された。ピンクゴールドケースにはシャンパーニュ、プラチナケースにはシルバーカラーが合わされている文字盤には、ポリッシュ仕上げのロジウムプレートが施されたアプライドのローマンインデックス、ヴィンテージ調のミニッツトラックが見られる。ムーブメントには、約38時間のパワーリザーブを保持する新しい手巻きキャリバー1917 MCを搭載。プラチナにはグレーの、ピンクゴールドにはブラウンのレザーストラップが組み合わされた。プラチナモデルは世界限定100本で税別価格は282万円、ピンクゴールドモデルは242万円となっている。
ヴァシュロン・コンスタンタン
「ヒストリーク・アメリカン 1921」
ヴァシュロン・コンスタンタンは、2017年に「ヒストリーク・アメリカン 1921」コレクションへ時計愛好家好みのミドルサイズを投入した。なお、同コレクションは2008年の登場以来、ソーシャルメディアやオンラインフォーラムでも取り上げられることが多く、ブランドの中でも知名度の高いデザインとなった。45°に傾けてセットされた文字盤が特徴の「ヒストリーク・アメリカン 1921」のオリジナルモデルは、自動車のハンドルを握ったままでも手首をひねらずに時刻が読み取れるようにと、アメリカの車愛好家に向けて訴求すべく1921年に発表されたものだ。その生産数は非常に限られ、1921年から1931年の間にわずか12本しか作られていない。2017年の新しいミドルサイズモデルも、それ以前に発表されていた直径40mmモデルと同様にオリジナルモデルへの忠実なオマージュである。今日では現代的なラグジュアリー要素を取り込んだデザインを多く開発するヴァシュロン・コンスタンタンだが、このモデルに関しては、ヴィンテージ要素をまったく損うことなく再現している。ワイヤーに着想を得た真っすぐのラグや、ケース上部の角に取り付けられたリュウズと相まって、ピンクゴールド製のクッション型ケースは独創的な存在感を示している。梨地仕上げの文字盤のレイアウトは左腕に装着することが想定されており、外周をブラックのレイルウェイミニッツトラックが走っている。プリントされた「ブレゲ」スタイルのアラビア数字のインデックスと控えめなブランド名表示に加え、ゴールドのヴァシュロン・コンスタンタンのマルタ十字のロゴが12時位置に配されている。3時位置には、文字盤の他の要素とは異なり傾きのない正位置のスモールセコンドがあり、2本のポムスタイルの針(ブレゲ針)が文字盤上をすべるように動いていく。内蔵するのはジュネーブ・シールを取得した、約65時間のパワーリザーブを保持する手巻き自社製キャリバー4400 ASだ。
ブローバ
「98R248 ルビア」
アールデコの時代にアメリカで活躍した時計ブランドとして、ブローバが挙げられるだろう。ブローバの前身となる宝飾店は、1875年にニューヨークで開店した。時計メーカーに転身したのは1911年のことである。翌1912年にはスイス・ビエンヌに自社の工場を設立し、時計製造・組み立てを行う時計ブランドとして世界にその名を広めた。そして1917年にブランド初のレディスウォッチとなる「ルビア」を発表する。この時代に女性のためのコレクションを展開するブランドはまだ少なかった。その後ブローバは歴史の波をくぐり、シチズングループ傘下に収まるに至る。2017年、ブランドのレディスウォッチ誕生100周年を祝い、ブローバはルビアを復活させた。懐中時計を思わせる12時位置に配されたリュウズはオリジナルモデルを反映させたものであり、アールデコ調のデザインが往時を思わせる。