“我が道を行く”アバンギャルドなウォッチメイキングで成功を収めてきたロジェ・デュブイより、紫外線を当てることでムーブメントに配されたサファイアマイクロチューブが光る限定モデルが登場。“昼の顔”と“夜の顔”を持つ特別なエクスカリバーには、同社の美学が詰まっている。
細田雄人(本誌):文 Text by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
ブラックライトに浮かぶスターシグネチャー
イタリアの高級スポーツカーメーカーのランボルギーニやタイヤサプライヤー、ピレリとパートナーシップを結び、これまで時計ブランドが鬼門としてきたオートモーティブ/モータースポーツとのコラボレーションを次々と成功させたロジェ・デュブイ。その秘訣は、コラボレーションを単なる〝バッジエンジニアリング〞に留めなかった点にある。モータースポーツの高揚感を見事に記号化し、腕時計のデザインに落とし込んだエクスカリバーのコラボモデルは、いずれもロジェ・デュブイでしか表現できない、煌びやかさに満ちたものだ。〝SNS映え〞が消費者行動に大きな影響を与えるようになった昨今、思わず目を引く同社の時計が幅広い層から支持を得られるわけである。
そんな〝華やかな世界〞の時計であるロジェ・デュブイにとって、〝夜に映える〞時計の開発は課題だったに違いない。そしてその責務を見事に果たしたモデルこそ、今回の主役「エクスカリバー ブラックライト」だ。
軽量でスポーティーなイメージを持つエクスカリバーのTiモデルに、ダイヤモンドとサファイアマイクロチューブを与えてドレッシーに仕上げた野心作。持ち前の軽やかさにより装着感は良好だ。イロモノとは一線を画す作り込みが冴える。自動巻き(Cal.RD820SQ)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。Ti+ブラックDLC(直径42mm、厚さ12mm)。5気圧防水。世界限定88本。935万円。
同作は紫外線を浴びることで発光するサファイアマイクロチューブをムーブメントに配置。ナイトプールやネオンパーティー、ナイトクラブなどのブラックライトを用いたイベントで着用すると、計9本のチューブで彩られる姿を楽しめる。特に4時位置のダイヤモンドを中心に5本のチューブが放射状に広がる様は圧巻だ。
ところで、なぜサファイアマイクロチューブを光らせるのに、蓄光塗料を使わずに紫外線を射出するブラックライトが必須の蛍光塗料を使用するのか、と疑問に思う読者も多いのではないだろうか。確かに蓄光塗料ならばより容易に、かつより広いシーンで時計を光らせることができたはず。しかし、エクスカリバー ブラックライトではチューブはおろかインデックスと時分針にすら蓄光塗料を用いていない。つまり、暗闇の中では時刻の確認すらままならないのだ。
考えるに蓄光塗料は視認性、すなわち実用性向上のために使用されるという認識が開発陣の中で強かったのではないだろうか。つまり、ドレッシーな同作を飾るのに蓄光塗料は遊び心に欠けるのだ。
実用性の追求は同時に、非日常からの離脱を誘発する。パーティー中は時計としての本来の役割を放棄することになろうと、針に蛍光塗料を塗布しないのは、夢が覚めるまでの残り時間を知らせる行為が無粋だと理解しているからだ。この割り切りに非日常を演出するアイテムとしてのロジェ・デュブイの美学が見て取れる。
こちらはブティック限定の18KPGモデル。ケース素材、ダイヤモンド、ストラップ、サファイアマイクロチューブのどれを取っても華やかの一言だ。ブラックライト下で使用してこそのモデルだが、その存在感は昼でも遜色ない。自動巻き(Cal.RD820SQ)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KPG(直径42mm、厚さ12mm)。5気圧防水。ブティック限定28本。1220万円。
Contact info: ロジェ・デュブイ ☎03-4461-8040