パテック フィリップの魅力。その特徴や要チェックモデルを紹介

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2021.06.17

技術の追求が産んだ高機能

基本的な時分秒を表示する機能を超えた複雑機構を搭載した時計を「プチコンプリケーション」「コンプリケーション」と呼ぶ。

複雑機構とは、ミニット・リピーター(音声による時刻表示)、永久カレンダーや年次カレンダー、クロノグラフ(経過時間の測定)、トゥールビヨン、ムーンフェイズといったものだ。

これら複雑機構のうち数種類以上搭載したモデルは、『グランド・コンプリケーション』と呼ばれる。パテック フィリップと関わりの深い複雑機構について紹介しよう。

クロノグラフ

Ref.5204P

1955年に発表された、スプリットセコンドクロノグラフと永久カレンダー機構が搭載された「Ref.5204P」。

「クロノグラフ」とは、時分秒針とは独立して経過時間の計測ができる機能、およびそれを実現する機械的構造である。

19世紀初頭に実現されたこの機能は、1856年、パテック フィリップの懐中時計「NO.10 051」に搭載されることとなった。

小型化が困難な複雑機構であったが、時計師たちの研究により、1910年に直径30mmのクロノグラフムーブメントが誕生。その後、1915年に腕時計専用クロノグラフが開発されている。

1923年に至り、パテック フィリップはスプリット秒針付きのクロノグラフを発表する。

これは、ふたつのクロノグラフ針で時間計測できる『スプリットセコンド』を腕時計で実現したものとして歴史的快挙となった。

現在、スプリットセコンド・クロノグラフは、複雑機構のひとつとなっている。

その後、クロノグラフ機構は永久カレンダーとともにパテック フィリップの代名詞として発展していく。

ミニット・リピーター

Ref.6300G

2019年に発表されたパテック フィリップ・グランド マスター・チャイム「Ref.6300G」。グランドソヌリ、ブティットソヌリ、ミニット・リピーター搭載する。文字盤は両面ともに上向きで装着することができる。手巻き。18Kホワイトゴールドケース、ケース径47.7mm、受注生産品、時価。

「ミニット・リピーター」とは、時計内部のハンマーで鐘にあたる金属を打ち、音で現在の時刻を知らせる機能である。

これは、100種類以上の部品と、職人の長時間に及ぶ調整の末に実現される非常に高度な機構だ。

17世紀末に創出された歴史ある技術であるが、腕時計に搭載するにはあまりに複雑で製造コストがかかったため、いくらかの試みは成されてきたものの、1960年代には採用する時計メゾンは皆無となった。

しかし1989年に至り、パテック フィリップは創業150周年記念事業の一環として、失われたこの伝統機構を時計業界に復活させることとなる。

完璧な音色を求めるパテック フィリップは、機構の最適化と音色の研究を続けた。現在では、他の時計メゾンより多くのミニット・リピーター搭載モデルを製作している。

永久カレンダーと年次カレンダー

Ref.5035

1996年に発表されたRef.5035。永久カレンダーを簡素化するのではなく、シンプルカレンダーの日送りを改良して「年次カレンダー」を完成。年次という新しい概念を生み出しただけでなく、ムーブメントの汎用性も高いことから、その後、多くのモデルがラインナップしている。

『永久カレンダー』とは、1795年にアブラアン=ルイ・ブレゲが開発した、うるう年の調整を自動で行う複雑機構である。

これは置時計に使われる技術であったが、19世紀には懐中時計に普及。

パテック フィリップはさらなる小型化に成功し、1889年には懐中時計用永久カレンダーの特許を取得した。

同社はさらに小型化を推し進め、1925年、腕時計において初となる永久カレンダー搭載モデル『NO.97 975』を発表する。

一報の「年次カレンダー」は、1年に1回、3月1日に調整するだけで翌年の2月末日まで日付・曜日・月名を自動で表示するもの。

この機構を発明したのはパテック フィリップだ。

1996年に発表した「年次カレンダー」(Ref.5035)は、実用性を備えたカレンダー機構として、高い評価を受ける。

その理由は、それまでのシンプルなカレンダーは大の月、小の月すら自動調節する事ができなかったからだ。今では「年次カレンダー」は定番機構となり、他社モデルでも搭載されている。

ワールドタイム

Ref.1415-1HU

1940年に発表されたワールドタイム「Ref.1415-1HU」。ダイヤルに1日で1周する24時間表示のリングを備え、世界24か国の時刻をつねに、また同時に知ることができる機構を持つ。

「ワールドタイム」とは、文字盤やベゼルに表示された世界各国との時差を一目で確認できる複雑機構だ。

この機構が求められたのは、1884年の国際子午線会議によりグリニッジ標準時が定められたことに起因する。

つまり、各国のタイムゾーンが定められたことにより、明確な時差が生まれ、これを判断する世界時計の需要が生まれたのだ。

1937年、パテック フィリップは初となるワールドタイマー「ワールドタイム Ref.515 HU」を発売する。

これは文字盤に都市名を表示するものだったが、1940年の「ワールドタイム Ref.1415-1 HU」ではベゼル上に都市名を記載し、1946年の『Ref.1415 HU』では回転ベゼルを採用した。


パテック フィリップの主要コレクション

パテック フィリップは、懐中時計を含む9つのコレクションと200を超えるモデルを擁する。

これらのうち、特に現代のラインナップとして重要な3つのコレクションを紹介しよう。

カラトラバ

カラトラバ

パテック フィリップの代表的なコレクションが1932年に発表された『カラトラバ』だ(写真は「Ref.96」/18Kイエローゴールドケース、手巻き、直径31mm)。ラウンドケースに立体的なインデックス、ドフィーヌ型の針という基本の形は変わらず、いまなお人気を誇る。

「カラトラバ」はパテック フィリップの伝統と革新を象徴する代表的コレクションである。

1932年発表の「Ref.96」が初代モデルであり、当時としては画期的なデザインのラウンド時計であった。

インデックスに数字を用いないスマートな文字盤、ケースからしなやかに伸びるラグ、全体に無駄のないエレガントなデザインは、今なおほとんど変わることがない。

カラトラバは複雑機構を用いない古典的名作であり、時計における黄金比を実現したドレスウォッチの最高峰として名高いコレクションである。

ノーチラス

ノーチラス

パテック フィリップ初のスポーツウオッチコレクションとして誕生した『ノーチラス』。潜水艦「ノーチラス号」の船窓をイメージした、独創的なケースデザインが特徴だ。ジェラルド・ジェンタ氏がデザインを担当している。

1976年に誕生した「ノーチラス」は、潜水艦の舷窓からインスピレーションを受けた八角形のベゼルを特徴とする、パテック フィリップ初のスポーツウォッチである。

当時、高級時計といえば金無垢のドレスウォッチを指すものであったが、ノーチラスはステンレススチール製にもかかわらず、ゴールド製より高価なスポーツウォッチとして誕生した。

1970年代は、クォーツショックによりスイス時計産業が壊滅的ダメージを被った時代である。多くの時計メゾンが、時計の多様性に生き残りを賭けた。

ノーチラスは爆発的にヒット。「スイムスーツにもディナー用スーツにも合う」スポーツ・エレガンスというジャンルを時計業界に確立した革新的コレクションである。

アクアノート

アクアノート

1997年発表の『アクアノート』。ノーチラスにカジュアルな雰囲気を持たせ、弟分としてリリースされた。ベゼルとミドルケースを一体化させた特徴を持つ。翌年に裏蓋をシースルーにした後継機を発表。いまなおマイナーチェンジが加えられ、ブラッシュアップが続く。

「アクアノート」は、1997年に誕生したパテック フィリップ第2のスポーツウォッチ・コレクションである。

丸みを帯びた八角形のケースデザインはノーチラスからインスピレーションを得て誕生。またラバーストラップを採用した初のモデルでもある。