液体制御はふたつのふいごによって行われる
しばらく使わずにおいた時計が稼働状態にあるかどうかを見極めるには、スモールセコンドを見るのが一番であろう。また同時に右側にあるパワーリザーブ表示も、非常に役に立つ要素のひとつで、そのデザインは時計の液状のモチーフをコンセプトとしている。完全に巻き上げた状態では、半円形状の開口部はマイクロチューブ内の液体と同じブルーの色で覆われる。パワーリザーブが減るに従い、青い部分の面積も減少していき、次第にブルーのドット模様が表れる。そして最終的にはフラットでダークなゴールドカラーへと変わるのだ。この状態では主ゼンマイのエネルギーがほぼない状態を意味する。
HYTによると、このムーブメントではパワーリザーブが約65時間、つまり2日半強は動く計算だ。多くの時計愛好家がそうであるように「完全に止まっている」時計を巻き上げていく工程は楽しいものだ。また同様に、開口部がブルーに染まっていく様子を見られることも手巻き式時計ならでの醍醐味だ。
液体による時刻表示についても触れていきたい。ダイアルの裏にあるふたつの金属製ふいご（ベロー）が、キャピラリー内のブルーと透明の液体それぞれに圧力かけることでブルーの液体を動かし、経過時間を表示する。ここで繰り返すが、ブルーの液体に満たされたキャピラリーと、非常に小さなパワーリザーブ表示こそが、H0がHYTの時計であると主張する視覚的要素なのである。
当初はこのタイムピースとブランドを特別なものとするような、開口部を広くとった文字盤や緻密で魅力的な機械式機構による演出を楽しみたいと思っていた。しかし、そのような外観を提供する他のHYTモデルはたくさんあるのだ。絞り込んだハイテク要素をラグジュアリーなゴールドのステージ上に展開することが、HYTの到達点であり、H0は鮮やかにそれをやってのけたのである。
