GUILLOCHÉ DIAL
ブレゲの最もよく知られた装飾技法で、現代の時計全般に多大な影響力を残すものといえば、間違いなくギヨシェ彫りである。ギヨシェ彫り機を手で操作しながら繊細な模様を刻む独特の装飾も、アブラアン-ルイ・ブレゲの時代から受け継がれるものだが、現代のブレゲは、ギヨシェ彫りに精通するスペシャリストとして斬新な模様にも果敢に挑み、サヴォアフェールに一段と磨きをかけている。
1920年代に作られたブレゲのトノー型腕時計から着想を得たこのクロノグラフは、立体感を強調したダイアルに手作業で施された多様なギヨシェの模様が強烈なインパクトを放つ。自動巻きムーブメントCal.550/1はシリコン製ヒゲゼンマイを採用。47石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約52時間。18KRG(縦42×横35mm)。3気圧防水。466万円。
スイス、ジュウ渓谷を拠点とするブレゲ・マニュファクチュールにはギヨシェ彫り専門のアトリエが設けられている。古い時代の歴史的なギヨシェ彫り機と現代に製造されたギヨシェ彫り機が30台以上あり、専門の職人がダイアルの装飾に取り組む一方で、若手への技術指導も行っている。これほど徹底して取り組む時計メーカーは他にないだろう。ギヨシェ彫りというメティエダールは、ブレゲのサヴォアフェールの中でそれほど重要な位置を占めているのである。
もともと金属ダイアルの反射を抑制したり、各種の表示を区別したりする一種の機能的な装飾として考案されたギヨシェ彫りだが、さらに進んで美しい芸術的な模様を開拓しているところも、たゆみない革新こそが伝統と考えるブレゲの真骨頂と言えるだろう。 例えば、トノー型クロノグラフの「ヘリテージ 5400」は、ひとつのダイアルにいくつもの異なる模様が複雑に彫り込まれ、その精緻な躍動感たるや圧巻である。押し寄せる氷河のようなグラシエ・シルキュレールや曲線が交互に弧を描くフランケ・オルタネといった模様は、伝統的な職人技のギヨシェ彫りを超えた現代アートの作品と呼んでもいいだろう。それでいて、違和感なく正真正銘のブレゲと思わせるのだから絶妙だ。
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