扱いやすいリュウズと禁止時間帯のないカレンダー
リュウズの操作感は良好だ。巻き上げは非常にスムーズで、針合わせの際にザラついた歯車の歯打ちを感じない。また、収納状態では飛び出しが小さく、着用感の良さに一役買っている。引き出しも容易だ。リュウズを1段引いて12時方向に回転させると日付を送ることができ、6時方向に回転させると曜日が送れる。操作禁止時間帯がない点も操作時の懸念事項が減って良い。操作時は、指先の力が確実に伝わっている感触があり、滑らかに動作する。「なるほどこれが高級時計か」という納得感のある仕上がりだ。コンセプトのフリクションロスの低減による効果であると推測される。稼働時のデイデイトの切り替わりは、瞬時に切り替わるジャンピング動作である。
時間合わせ時にハック機能が無いのは減点対象になりそうだが、それを除けば良好な操作感だ。感触は軽い方で、重たい感じが好みの人は気になるかもしれない。
いかにムーブメントに独自性があり、かつそれが合理的な設計であったとしても、使い心地が伴わなければならないのが腕時計の難しいところである。その点、リュー ロワイヤル キャトル・フォンクションに心配は無用であった。
大きなムーブメントサイズによって各種表示が大きく、バランス良く配置できており、視認性が確保されている。シックな文字盤デザインと、ポリッシュされた時分針も視認性の高さに貢献している。
パワーリザーブが長いため、ゼロからの完全な巻き上がりには十分な運動量が必要だ。前述の精度測定に際して巻き上げのために使ったワインダーでは、1セット90分間の巻き上げで、約88時間のパワーリザーブのうち、約76時間分(表示では+60時間の位置)程度の巻き上がりであった。実使用での自動巻きの巻き上げ効率は良さそうで、(運動不足の筆者程度の)多少の歩き移動があれば必要十分に巻かれている。参考値であるが、約30分の街中の散策で6~9時間分巻き上げられており、実生活では十分な巻き上げ量で釣り合うと予想する。
また、驚いたのが動き出しの軽さである。止まるまで放置した後にリュウズで巻き上げたのだが、軽いショックを与える必要なく、想像していたよりも少ない巻き上げ量で動き出してくれた。これもフリクションロスの少なさによるものだろう。小さな差だが、動き出しの遅さでヤキモキせず、使い心地の良さにつながっている。
腕時計を装着した際のフィット感は、存在感があるが、直径42mmというサイズを考えれば普通程度といったところ。しかしほんの少し腰高さはある。比較的腕の太い筆者が着けると、少なくともケースが腕に沿う感じはない。ただしこれらの評価には、筆者が普段はコンパクトなモデル、もしくはフィット感に優れるダイバーズウォッチを愛用していることも付記しておかなければならないだろう。
観音開きのDバックルはコンパクトに仕上がっており、キーボード作業においても異物感がなくて良い。
長く付き合えそうな予感
ルックスはクラシカルで肩の力が抜けた落ち着いたデザインであり、スーツを着たビジネスシーンから、ニットを羽織ったカジュアルな装いまでマッチしてくれる。どのようなスタイルの時も合わせたくなる点は好感が持てるし、連れ出す頻度を高く保つ観点からも重要なポイントだ。
ビジネスやフォーマルウォッチにはコンパクトさが欲しい筆者には少し大柄であるが、昨今のモデルのサイズ感を考えると、違和感なく受け入れられる人の方が多いだろう。蓄光塗料が針やインデックスに塗布されていない点は、十分な視認性が確保されているので問題ないと考えるが、暗所での視認性を求める人は考慮すべきかもしれない。
総評
さて、独自性が魅力につながっているか判定を下そう。ムーブメントの機械的ロスを低減するコンセプトと、それを実現するためのセンターシャフトドライブやモジュールレス構造を実現する技術、そしてこれらがロングパワーリザーブや長時間の安定した動作、巻き上げ効率、良好なリュウズ操作等の使い勝手の良さにつながっている点は合理性がある。文字盤上の各表示は、無理なく、バランス良く配置されていて、秀逸なデザインだ。このデザインの実現には、カリブル ロワイヤルのムーブメントサイズと各種部品配置が大きく関係しているため、ムーブメント設計が時計全体の完成度を高めていると言えよう。機械的ロスの低減によって分解清掃の見込み周期を6~10年に延ばしており、長期保有時の安心感もある。以上より、リュー ロワイヤルの独自性が時計全体の魅力の理由となっていると評価したい。自動巻き(Cal.カリブル ロワイヤルEPM01)。2万1600振動/時。パワーリザーブ約88時間。SS(直径42mm)。100m防水。日本限定20本。115万円(税別)。
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