最高峰のものづくりを手掛けるメゾンとして、世界中から愛されるエルメス。そんな同社が展開するタイムピースの中でも、最も高い知名度を持つコレクションが「アルソー」だ。同作は鎧をラグのデザインモチーフとするなど、馬具商としてその長い歴史をスタートさせたエルメスのアイデンティティとも言える要素を散りばめている。そして誕生から42年を経過した2020年、このアルソーに魅力的なスケルトンウォッチが追加された。
エルメス「アルソー スケレット」
「アルソー」はメゾンと縁のあるデザイナー、アンリ・ドリニーによって1978年に誕生したエルメスを代表するタイムピースである。
そんなアルソーを語る上で欠かせないのが12時位置側の2本と6時位置側の2本で非対称になるようデザインされたラグだろう。これは鞍から左右に吊らされており、乗馬の際に足をかける鐙(あぶみ)をイメージしたものである。
また斜体のフォントが採用されたインデックスはギャロップする馬のたてがみを彷彿させる。これら外装的特徴からも明らかなように、アンリ・ドリニーはアルソーからエルメスの馬具商としての歴史的ルーツを垣間見ることができるようなデザインを与えたのである。
そんなアルソーのデザインコードを守りながら、メゾンの時計作りの粋を優雅に伝える新作が、「アルソー スケレット」である。同作はその名の通り、“Squelette=スケルトン”の文字盤とムーブメントが与えられている。
自動巻き。パワーリザーブ約42時間。SS(直径40mm)。3気圧防水。96万6000円(税別)。
他のスケルトンウォッチとは一線を画すアプローチ
アルソー スケレットのスケルトン化へのアプローチは他のスケルトンウォッチとは一線を画している。通常、スケルトンウォッチは文字盤のみならずムーブメントの地板や受けも肉抜きすることで“ヌケ感”を強調する。そのため多くのスケルトンウォッチは、少しでもスケルトン部分の面積を広く取ろうと、可能なかぎり着用者に文字盤の存在を感じさせないデザインを与えるのだ。しかしこれは裏を返せば、時刻の読み取りがし辛いということだ。
しかし同作では文字盤をサファイアクリスタルとした上で、外周部に向かって強くなるようにグラデーションスモークがかけられている。そしてディープブラックとなった外周部にはドット状のミニッツスケールとシルバーカラーのインデックスが配される。
そのため透明の中心部では肉抜きされたムーブメントを楽しむ、つまりスケルトンウォッチ本来の楽しみ方が味わえる半面、計時の際に煩わしい思いをすることもないのである。
エルメスのアルソー スケレットには、特徴的なラグに自社の工房でつくられたブラックのアリゲーター・マットのストラップが合わせられ、ステンレススティール製尾錠が付属している。
Contact info: エルメスジャポン Tel.03-3569-3300