Cal.B01の登場
エボリューションの登場後ほどなくしてついに自社クロノグラフムーブメントのB01が登場した。B01はそれまでのブライトリングの経験が投入された頑健さと機能を兼ね備えた優れたムーブメントであり、同社のフラッグシップであるクロノマットには当然いち早く搭載されることになったのであった。
それからクロノグラフを搭載する上位モデルにはB01が搭載され、少しリーズナブルな、もしくは径の小さめのモデルにCal.13が用いられるようになり、Cal.13はブライトリングのフラッグシップからは一線を退くことになったのであった。そのためこのクロノマット・エボリューションは最上級ラインにCal.13(ETA7750)が用いられた最後のモデルとなったのであった。
2009年より導入されたブライトリングの自社開発ムーブメント。コラムホイールによるクロノグラフ制御、約70時間のロングパワーリザーブ、カレンダー修正が常時可能など、フラッグシップ機にふさわしいスペックを持つ。自動巻き。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。
その後ブライトリングはシュナイダー時代のウィングマークを、レギュラーモデルでは古のBマーク(ゴールドで高級感は増している)に戻すようになった。またB01を積んだクロノマットでは独立した、ネジで取り外しができ容易に位置が変更できるライダータブも今年発表の新作が登場するまで一時的に姿を消していた。シュナイダーがクロノマットのために取り入れた基軸は完全にではないが姿を消すことになったのである。
とはいえ、限定モデルなどで、ウィングマークやライダータブの位置に15分などの表記を復活させたモデルを出すなど、ブライトリングは今も昔も自社の歴史をリスペクトする「分かっている」メーカーなのである。
個人的には、シュナイダー時代の香りを強く残す、ケースがオリジナル同様の直径39.5mm、ライダータブ数字入り、ウィングマークのクロノマットをレギュラーラインで作っていただければと思う。それと話がずれてしまい申し訳ないが可能ならば、復刻方向を追求するならツィンウィングマークのナビタイマーも、である。
筆者は初代AOPAも好きだが、クロノマティックを搭載したRef.7806の古典と現代のちょうど狭間にいるようなデザインが大好きなのだ。とは言っても近年の時計のコンパクト化の方向もあるのか、ブライトリングも例えば「SleekT」といった大きすぎない素晴らしいクロノマットも登場させてきた。それらも非常に魅力的ではあるのだが、よりシュナイダー時代の香りを残すラインもまたあっても良いのではなかろうか? これからのブライトリングの時計たちにも一層の期待をしつつ、この稿を閉じさせていただくことにする。
新作「クロノマット B01 42」発売を受けて
とここまで書かせていただいたのが今年の2月初頭であった。その後、筆者が飛び上がるほどに驚いたのが、今年の新作に「クロノマット B01 42」が登場したことだった。なんとシュナイダー初代のようなルーローブレスレットを装備し、直径が44mmから42mmに縮小され、ライダータブも復活した、まさに筆者が求めていたようなシュナイダーたちが作ったクロノグラフのエッセンスを凝縮したような時計が現れたのだ。
2020年に発表された新作クロノマット。復活したライダータブやルーローブレスレット、カウンターウエイトを持たない時分針など、1984年のクロノマットに共通するデザインコードを持つ。ケースも小径化された。自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS(直径42mm、厚さ15.1mm。)20気圧防水。89万円(税別)。
大きさはオリジナルの39.5mmよりは大きいが、細めの腕でもさほど実用に困らないぐらいに収められているし、(そもそもブライトリングの時計は大きめでも装着感に優れるものが多く、またクロノマットの曲線的デザインはその中でも良い方なのだ)ライダータブも以前のような爪はなく、控えめではあるもののしっかりとあり、ベゼルの分刻みも以前のようなはっきりしたものに戻ったのも「プロフェッショナルな」時計を標榜するクロノマットに相応しい。
ルーローブレスレットも現代的に構造はアップグレードされているが現実的・実用的にその方が優れているのは間違いないだろう。他社の例えばオーデマ ピゲ「ロイヤル オーク」のような古い名作を一見そのまま生産を続けているような体裁をとっているモデルでも、ブレスレットやクラスプは改良されているのが常なのだ。
まさに私が夢描いたような時計を現実に登場させたブライトリングには敬服せざるを得ない。この新しいクロノマットやこれからのブライトリングのプロダクツを楽しみにしつつ、改めて本稿の締めとしたい。
著者:白苺(しろいちご)
時計コレクター兼 @Unitas管理人。19世紀の懐中時計から最新の高精度クォーツまで時計に広く興味を抱いている。
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