コーアクシャル脱進機を選ぶメリットとデメリット
コーアクシャル脱進機を搭載した腕時計を手にすることで、オーナーはさまざまな利益を享受できる。所有の喜びを与えてくれる一品と言えるだろう。
一方で、戸惑いが生じるシーンもあるかもしれない。メリット・デメリットの双方を確認しておこう。
現代社会に最適な機能性
IT技術の進歩に伴って、生活空間には磁気レベルの高まりが見られる。スマートフォンやタブレットが必需品となったこともあり、身の回りに強い磁界が生じているのだ。
精密な機構を備えるムーブメントにとって、磁気は脅威となり得る。それゆえ、タイムピースを守るための耐磁性能向上へのニーズが急速に高まってきたのだ。
コーアクシャル脱進機は、その要請に確実に応えるポテンシャルを備えた機構と言える。1万5000ガウスもの磁場に耐え得るスペックを保持する耐磁性には、時計を愛する多くのファンからの信頼が寄せられることとなったのだ。
オーバーホールに掛かる費用を抑えられる
上質な時計を、生涯の友として愛用し続けたいと願うユーザーは多いだろう。身に着けるほどに腕になじみ、愛着が増すタイムピースは、いつまでもともに歩み続けていける存在だ。
長きにわたってコンディションを維持するには、オーバーホールは欠かせない。最適なメンテナンスを施すことによって、良好な状態をキープできるだろう。
しかし、そのコストを度外視することはできない。緻密に構成され、高性能を誇るムーブメントのチェックには、知識と経験に裏打ちされた技術による作業が必要になる。そこには、時計の質と相応のコストが掛かるものだ。
コーアクシャル脱進機は、革新的な改良で極限まで摩擦を軽減することで、オーバーホールの期間を長期化している。その結果、維持費用を大幅に抑えられる。
民間修理業者での修理が難しい
オメガは、進歩的な発想と技術で脱進機を改良し、コーアクシャル脱進機を誕生させた。その開発には10年もの歳月を費やしたといわれる。
高性能化に伴って、従来の脱進機よりもやや大型化を余儀なくされた。そのため、ムーブメントそのものの設計をし直し、専用の機構とする必要が生じたのである。
コーアクシャル脱進機が、オメガのモデルのみに採用されている理由がここにある。独自のムーブメントを設計してまで搭載した脱進機なのである。
独自設計の機構であるため、メンテナンスや修理は、オメガを知り抜いた技術者でなければ難しいかもしれない。市中の民間業者では対応ができないケースがあることは、理解しておくべきだろう。
オメガを代表するコーアクシャル脱進機搭載モデル
オメガが誇る脱進機を宿したおすすめモデルを厳選して紹介しよう。自分だけの1本を見つけてほしい。
シーマスター 300 233.30.41.21.01.001
水中作業の専門家に向けて開発され一躍人気時計となったシーマスターが、新たな時代の冒険者に向けてリニューアルされたモデルである。ヴィンテージカラーのスーパールミノバが塗布された針は視認性に優れ、サンドブラスト仕上げの黒い文字盤も精悍だ。
自動巻き(Cal.8400)。38石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径41mm、厚さ14.7mm)。30気圧防水。生産終了。
セラミックス製のベゼルリングは、ポリッシュ加工で仕上げられ、付属するダイビングスケールはリキッドメタル製が採用された。直径41mmのサイズも迫力を感じさせるたたずまいだ。
シーマスター ダイバー300M 210.30.42.20.01.001
波打つダイアルが特徴的な本機には、セラミックス製逆回転防止ベゼルやエスケープバルブを備え、本格的なダイバーの信頼に応えるポテンシャルを十分に有している。防水性も300mと、シーマスターの名に相応しいレベルだ。
自動巻き(Cal.8800)。35石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約55時間。SSケース(直径42mm、厚さ13.6mm)。30気圧防水。79万2000円(税込み)。
側面に多面カットを施したベゼル、そして丁寧に仕上げられたケースからは、高級感が漂っている。直径42mm、重さ190gという仕様は、重厚感にあふれた着け心地を体感できるだろう。
デ・ヴィル トレゾア 435.13.40.21.02.001
トラディショナルな構造を持った直径30mmサイズのムーブメントを搭載することで、薄型でエレガントなたたずまいを演出している。1949年にデビューして以来、半世紀以上にわたって進化し続けるムーブメントだからこそ備わる気品だ。
手巻き(Cal.8910)。29石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径40mm、厚さ10.1mm)。30m防水。94万6000円(税込み)。
ステンレスススティール製ケースとブラックレザーストラップの組み合わせは、いつの時代にも適合する高級感を醸し出す。オパリンシルバーの文字盤には、日付を6時位置に配するなど、独特のデザイン性も加味している。
オメガを永く維持するために
愛着が生まれれば生まれるほど、永久に使い続けたい思いに駆られるものだ。高級時計は、一時の流行に左右されることなく、いつまでも愛用できるものだと願いたい。
そのような思いに応えるがごとく開発されたコーアクシャル脱進機は、負荷や摩擦を抑え、長期の使用に耐える構造を持った機構だ。このコーアクシャル脱進機を搭載した自分だけの1本を探し出し、末永く愛用してほしい。
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