早くもオンラインの限界に到達した!? 2年目のウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2021

期待以上の双方向性も実現

 今回のWWGのプレス向けコンテンツで、期待以上だったのがコミュニケーションの双方向性だ。

 ブラウザでライブ配信し、最後にQ&A機能を使って双方向性を確保したプログラムもあれば、Zoomを使ってウェビナー形式(ウェビナーはウェブとセミナーを合わせた造語)で、時に相手の顔を見ながら、時に同時通訳を介してトークができるプログラムもあった。

「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2021」期間中に開催されたオンラインによるモンブランのウォッチ部門ディレクター、ローラン・レカン氏との個別セッション。背後にモンブランがスイス・ヴィルレに持つミネルバ・オート・オルロジュリ研究所(Institut Minerva de Recherche en Haute Horlogerie、旧ミネルバ工房)の最上階の様子が見て取れる。

 英語のスピーキング力が不十分な筆者にとっては、いつものリアルでフィジカルなフェアよりも、翻訳ソフトを使える場合もあるので、むしろ質問しやすかった。

 当初は午後から深夜まで自宅のPCの前に座りっぱなしになることを覚悟したが、地下鉄で移動中や、歩きながらセミナーに参加することもできて、しかもオンラインでも、テキストで送った質問にすぐにトークで答えてもらえる。これは画期的だった。

 

やはりリアルなフェアにはかなわない

Photograph by Yasuhito Shibuya
コロナ禍がなければ、本来はジュネーブでリアルに開催されるはずだった「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ」。上の写真はジュネーブで人気の観光地のひとつ、レマン湖を回遊する遊覧船と、ジュネーブ名物の大噴水(Jet d'Eau/ジェドー)。

 とはいえ、やはりオンラインフェアには限界がある。最大の問題は、新作時計の実物に触れることができないことだ。

 この点を解決すべく、フェアに参加したブランドの多くが新作の内覧会を開催してくれた。A.ランゲ&ゾーネのように、新作のお披露目イベントを開催し、ドイツ・グラスヒュッテの本社とオンラインでつないでQ&Aセッションを設けたところもある。

 新作の実物を見て、自分の手で触れることができたのはありがたい。

 それでもやはり感じたのは、リアルな時計フェア、現地取材の大切さだ。

 渡航滞在費用がかからないのはありがたいが、数日でさまざまなブランドの新作時計に触れられるうえに、製品のテーマやブランドの意気込み、新作の文化的な背景まで体感できるのは、やはりリアルなフェア以外にない。

 ヨーロッパのほとんどの国の感染対応が後手後手になり、日本の感染対応がそれよりさらに遅れていることを考えると、2022年でもリアルなフェア開催は難しいかもしれない。

 一刻も早く現地でのリアルなフェアやファクトリーの取材ができるようになることを願うばかりだ。

 それにしても、時計ブランドの本社スタッフは大変だったと思う。

 CEOのキーノートセッションや新作プレゼンテーションなど、オンラインコンテンツの日本向けのライブ配信は、ヨーロッパ中央時間からプラス7時間の時差(夏時間)があるから、現地ではかなり早朝、早いものでは午前6時30分(日本時間は13時30分)からライブがスタートしている。

 何はともあれ、早朝から頑張ってくださった各時計ブランド本社の方々、そして深夜まで対応してくださった日本のスタッフの方々には心から御礼を言いたい。



渋谷ヤスヒト

渋谷ヤスヒト/しぶややすひと

モノ情報誌の編集者として1995年からジュネーブ&バーゼル取材を開始。編集者兼ライターとして駆け回り、その回数は気が付くと25回。スマートウォッチはもちろん、時計以外のあらゆるモノやコトも企画・取材・編集・執筆中。


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