『クロノス日本版』編集長が提案する「次世代の“ラグスポ”」6選

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2021.07.15

H.モーザー「ストリームライナー」

 事実上、H.モーザー初のブレスレットモデルとなる「ストリームライナー」。長い試行錯誤を経て完成したブレスレットは、うねるような感触を持つ。普通、1コマをつなげたブレスレットは、どうしても適度な遊びを持たせるのが難しい。対して、ストリームライナーのそれは、複数のコマをつなげたブレスレットのような感触を持つ。構造の詳細は教えてくれなかったが、開発に数年を要したのも納得だ。

ストリームライナー

H.モーザー「ストリームライナー・センターセコンド」
自動巻き(Cal.HMC 200)。27石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径40mm、厚さ11.8mm)。120m防水。236万5000円(税込み)。(問)エグゼス TEL 03-6274-6120

 多くのH.モーザー製ウォッチに同じく、ストリームライナーはグラデーションを強調した「フュメ」ダイアルを持つ。他社もグラデーションダイヤルを採用するが、早くから取り組んできたH.モーザーのそれは、一日の長がある。文字盤外周に向けて自然と色を変えるグラデーションは、本作の大きな魅力と言える。

 また、時分秒針には、先端を曲げた夜光塗料を採用。製法は秘密とのことだが、スーパールミノバとセラミックスを混ぜた塗料を曲げるか切削しているのだろう。ともあれ夜光塗料をたっぷりのせることで、本作は“ラグスポ”らしい優れた視認性を得た。

 搭載するのは、自動巻きのCal.HMC200。振動数は2万1600振動/時と低めだが、パワーリザーブは約72時間もある。また、巻き上げには両方向巻き上げのいわゆるラチェット式を採用。巻き上げ効率が高いため、デスクワークでも安心して使える。ケース厚は11.8mmであるため、使うシチュエーションは選ばないだろう。ラグジュアリースポーツウォッチと言うよりも、マルチパーパスウォッチと言うべきだろうか。


ジラール・ペルゴ「ロレアート」

 ジラール・ペルゴの救世主となったのが「ロレアート」である。そもそもは1975年に発表されたブレスレット付きスポーツウォッチの先駆けと言えるモデルだ。当初はクォーツムーブメントを搭載していたが、2016年には自動巻きムーブメントを載せた限定モデルとして再復活。翌17年からはレギュラーモデルとなった。ちなみに、ロレアートはジェラルド・ジェンタデザインによるデザインと言われているが、実は違う。オリジナルのデザインを手掛けたのは、イタリア人建築家のアドルフォ・ナタリーニ。まったく畑違いの彼は、ロレアートに“ラグスポ”然としたデザインを与えることに成功した。

ロレアート

ジラール・ペルゴ「ロレアート 42mm」
自動巻き(Cal.GP01800)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約54時間。SSケース(直径42mm)。100m防水。141万9000円(税込み)。(問)ソーウインド ジャパン TEL 03-5211-1791

 最新のロレアートは、以前のものに比べてケースやブレスレットの出来がかなり良い。また、サイズも45mm、42mm、38mm、34mmの4つから選ぶことができる。スポーツウォッチという性格を考えれば、ブレスレットはやや薄い。しかし、小さなモデルを選べば、ヘッドとテールのバランスは悪くない。

 搭載するのは42mmサイズがCal.GP01800、38mmサイズがCal.GP03300である。いずれも仕上げは良好だが、Cal.GP01800は緩急針がエタクロン風で、実用面はさておき、見た目はCal.GP03300には劣る。仮に緩急針をフリースプラングテンプに替えてくれたら、スポーツウォッチとしてより魅力的だっただろう。なお自動巻きはいずれも両方向巻き上げで、デスクワークでも巻き上げ効率は悪くない。また、ケースが薄いにもかかわらずローター音も控えめだ。

 スポーツウォッチというよりもマルチパーパスウォッチを思わせるロレアート。仕上げを考えれば、価格も戦略的である。


A.ランゲ&ゾーネ「オデュッセウス」

 A.ランゲ&ゾーネが満を持してリリースした「オデュッセウス」。スポーツモデルに載せるため、ムーブメントの振動数は2万8800振動/時となったほか、地板にはローターとの接触を防ぐためのピンを打ち込むなど、配慮がいちいち細かい。また早送りだけでなく逆戻しも可能なカレンダー機構を採用したり、微調整可能なバックルを備えるなど、実用性も十分だ。

 あくまで筆者の私見だが、使い勝手に対する配慮は、いわゆる“ラグスポ”の中で頭ひとつ抜きんでている。ブレスレットの感触はまだ詰められるはずだが、トータルで見た場合、これは大変優れた実用時計なのだ。なお、時計のブレスレットが気になって仕方ない人は、“ラグスポ”で探すよりも、ロレックスの現行プラチナ製「デイデイト」を買っておけば良いと思う。

オデュッセウス

A.ランゲ&ゾーネ「オデュッセウス」
自動巻き(Cal.L155)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。18KWGケース(直径40.5mm、厚さ11.1mm)。120m防水。515万9000円(税込み)。(問)A.ランゲ&ゾーネ TEL 0120-23-1845

 オデュッセウスのステンレスモデルは、他の“ラグスポ”同様、普通には買えない。しかし、ホワイトゴールドケースのモデルならばまだかろうじて注文できる。というわけで、今回オデュッセウスのホワイトゴールドモデルも、「次世代の“ラグスポ”」に加えた。ケースはステンレスモデルに比べて重いが、太いストラップのおかげで装着感は悪くない。また、ストラップを容易に交換できるので、シチュエーションに応じて楽しめるだろう。A.ランゲ&ゾーネの常で値段は安くないが、ケースやムーブメントの仕上げはかなり優秀である。


どんな点に注意して買うべきか?

 ここで挙げたモデルに限らず、いわゆる“ラグスポ”は、ガチのスポーツには向いていない。10気圧防水は手洗いに耐えられる程度だし、フリースプラングテンプを持つモデルであっても、強い衝撃には向かないだろう。薄いケースを持つモデルならばなおさらだ。

 また、他の機械式時計同様、シリコン製ヒゲゼンマイを載せたモデルでない限り、磁気にも気をつけたほうが良さそうだ。ただし、今の“ラグスポ”は、普通の時計よりも頑強に出来ているため、さまざまなシチュエーションで使えるようになった。ここで挙げた各モデルは、自動巻きの巻き上げにも優れており、デスクワークで使っても、巻き上げに不満を覚えることはないだろう。


またしても強力なラグスポが降臨、H.モーザー 2020新作「ストリームライナー・センターセコンド」

https://www.webchronos.net/news/51831/
A.ランゲ&ゾーネ、新たにゴールドケースを纏った オデュッセウスの重量感

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パルミジャーニ・フルリエの成熟が生み出した 新しいデイリーウォッチ「トンダグラフGT」

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