ここ数年で流行した腕時計のカラーは主にブルーまたはグリーンであったが、最近は新しい色を目にする機会が増えた。それがグレーだ。今回は魅力的なグレーの腕時計14本を紹介し、読者をカラーの多様性の世界へとお連れする。
Text by Ruediger Bucher
2022年1月5日掲載記事
2021年より萌芽の見られるグレーモデル
この10年で時計は確実に以前よりカラフルになった。2010年の時点では、高級時計といえば、白や黒の文字盤にシルバー系のステンレススティールケース、せいぜい赤い針が1本という無彩色のものが主流だった。しかしこの状況はすぐに変わっていった。文字盤やストラップがカラフルになり、ラバーなどの素材がデザイナーの色彩感覚を刺激するようになったのだ。10年代後半になると、まずブルー、そしてグリーンのモデルが登場する。このふたつのトレンドは、現在も続いている。しかし2021年には、まったく異なる色合いのグレーが脚光を浴びるようになった。
驚くべきは、これらのグレーの時計のどれもが、一般的にグレーと結び付けられるグレーに見えないことである。少なくとも、人々がグレーから連想する、無骨で、退屈で、目立たないという印象がない。これまでよりもずっとカラフルで多様な時計のステージに、これらの時計は堂々と登場しているのだ。たとえ高級時計であっても、技術的な実現可能性と社会的な受容性の両面から、どんな色でも考えることができる時代である。グレーはもちろん、グリーン、ブルー、レッドなど、さまざまな色がある。そのような中で、あえてグレーを選ぶことは、2010年当時とはまったく異なるステートメントとなっている。
また同時に、グレーはカラフルな多様性の世界に対するアンチテーゼともいえる。見る人に休息や立ち止まりをさせ、一息つかせてくれるのだ。グレーにはもうひとつ魅力的な特性もあり、それは全てのグレーが同じものではなく、一面的ではないということだ。白と黒の割合によって、グレーが濃く見えたり、薄く見えたりするためである。一方、グレーは採光環境によりグリーン、ブルー、ブラウンと変化するため、カラフルともいえるのである。
それでは以下に魅力的なグレーダイアルモデル14選を紹介しよう。
ベル&ロス「BR 05 グレー スティール」
ベル&ロスの「BR 05 グレー スティール」は、すかし彫りを施したローターの自動巻きムーブメント(セリタSW300-1ベース)を採用。駆動する様子はトランスパレントバックより鑑賞可能である。
アーミン・シュトローム「トリビュート1」
アーミン・シュトローム「トリビュート1」は、5時位置に開口部を設けて香箱を露出させ、それ以外の機構はプレートの下に収められている。
ショパール「アルパイン イーグル」
ショパール「アルパイン イーグル」の文字盤の筋目模様はワシ(イーグル)の虹彩をイメージしたものである。本モデルは自社開発のルーセント スティール A223製ケースにベルニナ山群(スイス東南端に位置するスイス第三の山塊)由来のベルニナグレー文字盤を合わせている。
ロンジン「ハイドロコンクエスト」
2021年、ロンジン「ハイドロコンクエスト」の、ステンレススティールとゴールドカラーのPVDコーティングを組み合わせたツートンカラーモデル。セラミックスのベゼルはそれぞれダイアルカラーに合わせられている。
ノモス「クラブ キャンバス 38 アブソリュート グレー」
ノモス「クラブ キャンバス 38 アブソリュート グレー」は、ステンレススティール製ケースバックに88文字まで購入者の好みの文字をエングレービングする無料サービスを提供している。
ウブロ「ビッグ・バン インテグラル グレーセラミック」
ウブロを象徴する素材のひとつであるセラミックスをケース、ベゼル、ケースバック、ブレスレットに採用している。機能にはフライバッククロノグラフを搭載。
ブルガリ「オクト フィニッシモ パーペチュアル カレンダー」
次々と世界最薄記録を塗り替えてきたブルガリの機械式時計。7番目の世界記録をもたらしたのが、世界最薄の自動巻き永久カレンダー搭載モデル「オクト フィニッシモ パーペチュアル カレンダー」である。
チュチマ「フリーガー」
近年、カジュアルなカラー文字盤仕様を投入するチュチマ「フリーガー」。文字盤の日付表示は英語・ドイツ語の2カ国語表示のいずれかを選ぶことができる。
オリス「ビッグクラウン パイロットウォッチ "ヘルシュタインエディション2021"」
戦前に作られたオリジナルモデルをイメージした「ビッグクラウン パイロットウォッチ "ヘルシュタインエディション2021"」。フラットなベゼルにシャープなライン、20世紀前半のオリスが開発したインダストリアルな製造法を反映したグレーのパレットなどを採用する。
ジン「358.SA.FLIEGER.DS」
ジン「358.SA.FLIEGER.DS」の文字盤には1点1点手作業でスクラッチ加工が施される。ベースカラーを着色した後に傷を入れていくため、ふたつとして同じものが存在しない。スクラッチ加工により文字盤のベース素材が変化する光のニュアンスをとらえる。
チューダー「ブラックベイ フィフティ-エイト 925」
往年のモデルでよく使用されていたシルバー925製ケースに、文字盤とベゼルに褐色を帯びたトープカラー(灰褐色)を組み合わせ、ヴィンテージ風デザインに仕上げたチューダー「ブラックベイ フィフティ-エイト 925」。トープカラーは近年インテリア界を中心に注目されている流行色でもある。
ノルケイン「アドベンチャー スポーツ オート」
ノルケイン「アドベンチャー スポーツ オート」は細部まで手の込んだ、ノルケイン・スペシャルパターンと名付けられた文字盤の模様を採用。9時側のケース側面のプレートには好みの文字のエングレービングが可能。
A.ランゲ&ゾーネ「オデュッセウス」
A.ランゲ&ゾーネ初のスポーティーウォッチ「オデュッセウス」のグレーモデル。ホワイトゴールド製の針とアプライドインデックスをあしらい、時針と分針、時インデックスには蓄光塗料を塗布して視認性を高めている。
セイコー プロスペックス「1970メカニカルダイバーズ 現代デザイン SBDC143」
セイコーダイバーズウォッチで初めてファブリックストラップを採用した「1970メカニカルダイバーズ 現代デザイン SBDC143」。このストラップは着物の帯締めなどにも使われる日本伝統の技法「製紐(せいちゅう)」で編み込まれており、大きな荷重に対する引張強度や、強い紫外線対する高い耐光性を持っているため、劣化しにくい特性を持つ。
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