万年筆の愛好家が増え、豊富なカラーインクに続いて、香りのついたインクも増えてきた。モンブランが展開する「エリクサー パフューマー コレクション」は他社を圧倒するほど、すべてにおいてラグジュアリーなインクと言える。
吉江正倫:写真 Photograph by Masanori Yoshie
[クロノス日本版 2022年3月号掲載記事]
ここに紹介するのは手前から「ベチバー グリーン(118217)」「ウッド&タバコ グレー(118215)」「マリンセント ブルー(119598)」の3種類。各50ml。ラグジュアリーなボトルデザイン、プレミアムなパッケージ。まるで香水のような佇まいと、クォリティの高い成分を考えれば納得のプライスだ。各9570円。万年筆は定番の「マイスターシュテュック 149」。11万3300円(税込み)。
“香るインク”で豊かな時間を味わう
数多く存在する万年筆の中で最も信頼されているのがモンブランの万年筆だろう。なかでもドイツ語でマスターピースを意味する「マイスターシュテュック」コレクションは1924年の誕生以来、ブランド最上位に位置し、ラグジュアリーでクラフツマンシップあふれる万年筆である。
現在、マイスターシュテュックには「クラシック」「ル・グラン」、そして最も太軸の「149」が存在する。大きな万年筆ではあるが、堅牢な作りのプレシャスレジンの軽さ、計算されたフォルムとペン先とのバランスから、日本人の小さな手にもしっくりなじむと万年筆愛好家の間でも評判だ。
さて、今回の主役はラグジュアリーなボトルが目を引く香るインクである。「エリクサー パフューマー コレクション」は、その名の通り、稀少な自然植物から作られた香るインクのコレクション。“香りと色”によって感情と記憶を刺激してくれるインクなのである。ここに紹介するのは「ベチバー グリーン」「ウッド&タバコ グレー」「マリンセント ブルー」の3種類。
各インクを簡単に説明すると「ベチバー グリーン」はウッディーでアーシー、スモーキーなアロマ。メンズの香水でもおなじみであり、最も愛される香りだろう。植物からイメージしたグリーンカラーは軽やかで男女関係なく使いやすそうだ。
「ウッド&タバコ グレー」は沈香(じんこう/agarwood)の香りがベース。その香木は大変貴重とされ、日本でも古くから朝廷で重宝されたという歴史がある。深いグレーカラーは香木やタバコの煙のくゆりからインスパイアされている。「マリンセント ブルー」は海を思わせる鮮やかなブルーが印象的。爽やかな海の香りを楽しみたい。
もしもこんな魅惑的なインクで綴った手紙が届いたら、送られた相手もさぞ楽しいだろう。封を開けたら香りが残っているかも。そんなことを考えながら、自宅の机上で149の大きなペン先からインクを吸い上げる。そんなのんびりとした時間こそ、モンブランが追求するラグジュアリーなのかもしれない。
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