下剋上も辞さない脅威の面仕上げ
GMW-B5000シリーズは、ベゼル・ミドルケース・ラグまでがプレスで一体成型されるため、MRG-B5000-1JRのように各パーツを分割して研磨する事はできない。
そのため、どうしてもケース造形や面にゆるさが生じる傾向があり、正直本作の鏡面にもそこまでの期待はしていなかったのだが、ここが今回のレビューで最も驚かされたポイントだ。特にベゼル天面に関しては、よほど丁寧に下地処理を施したのだろうか、平面光下で筆者所有のMRG-B5000-1JRと見比べた限り、平面度の高さではGMW-B5000TCCの方に軍配が上がる。
ブレスレットに関しても、リベット部に構造の差はあるものの、面の歪みは両者同等レベルまで抑えられており、角R(エッジの丸み)にも違いは見られなかった。
ケース側面に関しては、構造の違いによりMRG-B5000-1JRのシャープさが際立つが、全体的に見れば、価格差が2倍以上開いたモデルとの比較という事を抜きに考えても、GMW-B5000TCCは非常に優れた仕上げと言えるだろう。
軽さとしなやかさを兼ね備えた装着感
腕に乗せてみて最初に感じたのは、とにかく軽いということ。メーカーの公称値ではMRG-B5000-1JRの114gに対して、GMW-B5000TCCが104gなので約9%ほどの差しかないが、腕を振って歩いた際など、時計にかかる慣性から体感として感じ取れるほどに軽い。
そして、ヘッドとブレスレットのバランスも最適なため、腕を上げ下げしても常に安定している。これならアクティブなシーンで着用してもまったく問題にならないだろう。
また、MRG-B5000-1JRに比べブレスレットのコマ同士の遊びがわずかに大きくなっているため、着け心地がやわらかく快適なのも好印象だ。純粋な作りの良さで言えばMRG-B5000-1JRの方が上だが、ロレックスの「オイスター パーペチュアル デイトジャスト」や、オーデマ ピゲの「ロイヤル オーク」など、バキバキの新品よりも、販売されてから時間が経ちブレスレットが伸びた個体の方が着け心地が良いと感じる筆者にとっては、GMW-B5000TCCの方が好みなのである。
本作の最大の特徴である基板回路パターンは、やはり遠目からではカモフラージュ柄に見えてしまうため、ミリタリーアイテム的な印象が強くなるかもしれないが、鏡面の質感がタダ者ではない雰囲気を醸し出している。
この鏡面の見え方は環境により異なり、直射日光下では若干マットな質感に、日陰の間接光下ではグロッシーな質感に変化するから面白い。
数日間使用してみて唯一問題に感じたのは、液晶の視認性だ。暗い場所ではバックライトが点灯するため問題にならないが、むしろ日差しの強い屋外など、明るい環境で文字盤に光が差し込まない角度になった時が、ブラックアウトしてしまい最も見えづらい。これはMRG-B5000-1JRの液晶では遭遇しなかった現象なので、反転液晶特有の問題だろうか。
その他にあえて気に入らない点を挙げるとすれば、プッシュボタンの操作性か。これはスクエアG-SHOCKの大多数で同様ではあるが、4つのボタンだけで多機能の操作をする必要があるため、順序が複雑すぎて正直覚えきれない。
そして、プッシュボタンの重く終わりの見えない感触はお世辞にも心地よいとは言えず、連続して操作すると指が疲れてくるほどだ。幸い、GMW-B5000TCCにはモバイルリンク機能が搭載されているので、スマートフォンから設定変更した方が遥かに簡単で楽である。
隅々までカシオらしさが息づいた本気の個性派時計
最後は無理やり不満点を捻り出してみたが、繊細な装飾、MR-Gと遜色ない高度な仕上げ、軽くしなやかな装着感を兼ね備えたGMW-B5000TCCは、実に魅力的なG-SHOCKであった。
筆者は当初、フルメタルG-SHOCKの外装をチタンに替えただけのGMW-B5000で21万4500円(税込み)という価格設定に若干の疑問を抱いていたが、使用するうちにむしろリーズナブルに感じられたほどだ。隅々までカシオらしさが息づいているし、何より「時計に自身の基板回路を描いたら面白いのでは?」なんてジャストアイデアを、ここまで本気の作り込みで商品化できるのはカシオくらいなものだろう。
この個性的なデザインに心を引かれたならば、ぜひ手にして欲しい時計だ。
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