ムーブメントはフライバック付きの自社製クロノグラフ
今回テストした個体には、フライバック機構付きの自動巻きクロノグラフCal.4401が載っている。スペックだけを言えば、旧Cal.FP1185や、Cal.3120にデュボア・デプラ製のモジュールを重ねたムーブメントよりずっとよい。
振動数が上がり携帯精度が改善されたほか、フリースプラングのおかげで、理論上は衝撃にも強くなった。また、最初からフライバックを使うことを念頭に設計されたため、フライバックを多用しても壊れにくい設計となっている。
少なくとも、Cal.1185よりパワーリザーブが延び、Cal.3120系+クロノグラフモジュールのような時針の置き回りもなくなったCal.4400系は、今のロイヤル オークにはふさわしいエンジンだ。
厳密に計測したわけではないが、携帯精度はほぼ日差+5秒以内だった。また、針合わせの感触もスムースで、正逆方向ともにトルク抜けはなかった。
ロイヤル オーク クロノグラフが採用するCal.4401。一体型クロノグラフムーブメントとして2019年に発表された。直径32mm。厚さ6.9mm。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。
感心させられたのは時針の置き回りの小ささで、秒針が起動してすぐに、分針が動き出した。Cal.3120+クロノグラフモジュールを載せたモデルでは、しばしば1分以上の置き回りが見られたことを考えれば、劇的な改善だ。少なくとも、筆者はこれだけで、最新のクロノグラフを選びたい。
自動巻きはCal.3120系のスイッチングロッカーではなく、標準的なリバーサー。とはいえ、MPS製のリバーサーは摩耗しにくく、理論上は抵抗も小さく、経年変化にも強い。
十分触ったわけではないが、リバーサーそのものの完成度は、ロレックス、グランドセイコーに比肩するだろう。事実、巻き上げ効率は想像以上に良かった。また、ローター芯からのノイズもよく抑えられていた。
ヘッドヘビーながら装着感は良好
重いクロノグラフを載せた本作は、3針モデルに比べて明らかにヘッドヘビーである。また、バックル方向に向けて強いテーパーをかけたブレスレットや、明らかに短いバックルのプレートもその印象を強調する。
ただし、3日間腕に巻いた印象を言うと、頭が重いという印象は受けなかった。裏蓋がフラットで、腕への接触面積が広いためか。また、新しいスクエアなバックルプレートも、意外とホールドに優れていた。少なくとも、かつての繊細なプレートよりも、はるかに着け心地に貢献している。
自動巻き(Cal.4401)。40石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS(直径41mm、厚さ12.4mm)。50m防水。440万円(税込み)。
ただし、時計の全長は長いため、細腕の人は、あらかじめ腕上で感触を確かめることをお勧めしたい(実際確認するのは難しいだろうけど)。また、バックルにエクステンションが備われば、より厳密な装着感を得られるに違いない。ノーチラスでさえもバックルに微調整機能が加わったと考えれば、不可能ではないだろう。
結論
短期間借りたのみだが、ロイヤル オークには圧倒されっぱなしだった。サテンとポリッシュを併用した外装は、もともと強烈な印象を与えるものだが、オーデマ ピゲが外装の内製化に取り組んで以降、さらにインパクトが強まったように感じる。ケースの鏡面を深く取った2022年モデルはなおさらだ。
袖をまくり上げ、光によって変わる時計の表情を楽しむ。ロイヤル オークのオーナーたちが、しばしば時計を見せびらかしているように見えるのも、実際腕にすると納得だ。彼ら・彼女たちは、見せつけているのではなく、ただ時計の表情を確認したいのだろう。
筆者はさまざまな時計に触れる機会を得てきたが、ひんぱんに袖をまくって見たくなる時計は決して多くない。今でこそ大人気のロイヤル オークだが、個人的には、食わず嫌いの人にこそ、触って欲しいと思う。これは、時計というよりも、ロイヤル オークという別個のナニカ、なのである。
https://www.webchronos.net/features/64467/
https://www.webchronos.net/features/35619/
https://www.webchronos.net/features/80903/