シンプル操作のアニュアルカレンダー搭載ムーブメント
本作が搭載するアニュアルカレンダーとは、2月以外の月の大小を判別し、日付を表示してくれる機能だ。例えば、6月30日が終わると、デイト窓には「31」ではなく、「1」が現れる。
実際にその様子を観察すると、12時を過ぎて間もなく、チャッという音と共に瞬時に1が表示された。アニュアルカレンダーでも十分実用的な機能だが、加えて閏年まで判別し、2月も含めて正確な日付を自動的に表示するようにしたものが、パーペチュアルカレンダーだ。
カレンダーの調整は、リュウズ操作のみで完結する。ねじ込み式ではないため、気軽に調整が可能だ。リュウズを1段引き出し、12時側に送ると日付が進み、6時側に送ると月が進む。
リュウズをもう1段引き出すと、時刻調整が可能だ。個人的な経験として、現行のオメガは時刻調整時のリュウズが重めという印象を持っているが、本作にも同様の感想を抱いた。
ふらつくようなことのない、しっかりとした感触だ。ただしその分、しばらく回していると指の腹が少し痛くなってくる。
リュウズを完全に押し込んだ状態では、主ゼンマイの巻上げができる。しっかりと防水の効いたパッキンによるものであろう固めのヌルーッとした感触と共に、チチチチチという小さな音が聞こえる。
ムーブメントのスペックについても触れておきたい。本作に搭載されているのは、Cal.8922だ。シリコン素材を用いたコーアクシャル脱進機を搭載し、先述の通りMETAS認定のマスター クロノメーターを取得している。
パワーリザーブは約55時間を備えており、特別長くはないが、現行機としては必要十分だ。振動数はコーアクシャル脱進機と相性が良いとされる毎時2万5200振動だ。
ローターや受けに施された装飾は、ドレスのドレープを想起させるような優雅なアラベスク調ジュネーブウェーブである。パーツを固定するネジは、シリコン製のテンプ同様にブラックに仕上げられ、締まった印象をもたらしている。
数々の工夫によって装着感を向上させた立体感あるケース
複雑機構を有したモデルであるためか、ケースの厚さは14.6mmと少し厚めだ。そのほとんどがミドルケースに割かれているため、見た目にもボリュームがある。だが、いざ腕に載せてみると、重量は感じるものの装着感は想定よりも優れていた。
ラグが短く断ち切ったような形状であることと、裏蓋が薄く重心が低いこと、ミドルケース下部の面取りが肌当たりを良くしていること、Dバックルがしっかりと手首をホールドしてくれることが、装着感の向上に寄与しているように思える。
特にDバックルはその構造上、金属製のプレートが直接肌に当たらないようになっている。これによって、肌への不快感が軽減され、手首周りぴったりに長さを調整することが可能となり、結果的に腕上で暴れにくくなるのだろう。
ストラップの剣先が外に飛び出ないDバックルは、邪魔にならないため使いやすい。筆者はよく、有線のイヤホンやマウスのコードを剣先部分に引っ掛けてしまい、小さなストレスを感じていたが、本作ではそのようなことは一切なかった。
ちなみに、39mm径の3針モデルであれば、厚さは12.6mmだ。アニュアルカレンダーの機能性よりも装着感を重視したい場合は、こちらを選択肢に入れるのも良いだろう。
ダイアルそのものが大型であり、かつ濃いブルーのインデックスや針が、強いコントラストを生んでいるため、視認性は非常に高い。オパーリン仕上げのダイアルは、普段はマットな質感だが、強い日差しの下ではまるで自ら発光しているかのように輝き、少し眩しさを感じた。
暗所での視認性もしっかりと確保されている。ドレッシーなデザインながらも、インデックスにしっかりとスーパールミノバが塗布されていることが要因だろう。防水性能も10気圧までの耐性を備えており、マルチパーパスに使えるモデルと言える。
オメガらしいパッケージングが確立した、コンステレーションの新定番
オメガは、その長い歴史の中で数々のアイコニックピースを生み出し、それらが持つデザインコードを長い時間をかけて育て上げてきた。1957年に誕生した「スピードマスター」は、その最たるものであり、コンステレーションで言うならば、82年に登場したマンハッタンが例として挙げられるだろう。
そしてここ近年では、断絶されていたデザインを現行のレギュラーモデルとして復活させてきた。例えば「シーマスター300」や「レイルマスター」。そして今回取り上げたコンステレーション グローブマスターだ。
腕時計について、復刻デザインがブームだと言われて久しいが、復刻と復活には大きな差があると考えている。復刻は可能な限りお手本を忠実に再現することが目的であり、限界がある。
対して復活とは、従前との連続性を保ったまま、新たなページを刻んでいくことである。創造性が続く限り、限界は訪れな
コンステレーション グローブマスターには、パイ-パンダイアルやCラインケースなど、マンハッタン以前のコンステレーションに見られる特徴が盛り込まれている。
しかし、全体からつぶさに見ていけば、ただ単にそれらの要素を一緒くたにしたのではなく、エッセンスを抽出したうえで再構築し、新たなコレクションとして進化させた結果であることが分かるだろう。
筆者が本作をパッと見たときに、Cラインケースとの類似性に気付けなかったのは、それだけ全体のデザインにまとまりがあったからだろう。筆者の感度が悪いという可能性も捨てきれないが。
グローブマスターの名が誕生したのは、今から約70年も前のことだ。オメガはこれに、初期のコンステレーションが持つ外観と高精度機という血筋を与え、2015年に復活させた。
このコレクションが今後どのように進化していくのか。オメガは次にどんなコレクションを復活させるのか。楽しみに見守っていきたい。
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