4位:モンブラン「モンブラン 1858 アンヴェールド シークレット ミネルバ モノプッシャー クロノグラフ リミテッドエディション」
ムーブメントを反転し、モノプッシャークロノグラフの仕掛けを文字盤側から見ることができるという、機械好きにとっては遊園地のような作品。小さくなってこの中に迷い込めたら、どれだけ楽しいことだろう。
ムーブメントの反転は簡単なようで実は難しい技術。当たり前だが、針の回転を逆にしなければならないし、まして見せることを目的とするならば、パーツ類の肉抜きや輪列の配置調整等も行う必要がある。
古典に挑む現代の開発者たちの「こうしたい!」という完成図。それがハッキリと体現されたであろう力作。絶妙な間合い・佇まいからは、色気をも感じる。
手巻き(Cal.MB M16.26)。26石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約50時間。SS×18KWGケース(直径43mm、厚さ14.18mm)。3気圧防水。世界限定88本。523万8750円(税込み)。
5位:ヴァシュロン・コンスタンタン「オーヴァーシーズ・オートマティック」
再び世界が近くなった2023年春。気分晴れやかにゴールドウォッチを身に着けたいと思う方は多いことだろう。ということで、旅をテーマにした時計、オーヴァーシーズの34.5mmサイズ、18Kピンクゴールドモデルは見逃せない新作となった。
41mmのモデルももちろん素晴らしい。しかし、ブルーの文字盤との相性でかなり華やかなデザインになっているため、細腕の私には少々大きく感じた。
34.5mmであれば、サイズ感も丁度良く、派手になり過ぎることもない。ベルトを調整しながら、パートナーとのシェアウォッチとしても楽しめそう。
自動巻き(Cal.1088/1)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KPGケース(直径34.5mm、厚さ9.33mm)。15気圧防水。価格要問合せ。
総評
個人的には一貫して、デザイン・性能共に控えめな実用時計と、見せ方にまでこだわった複雑機構が好きだ。加えて、歴史を反映したデザインコードがあるものには、強い興味を引かれる。
今回のカラトラバ・トラベルタイム 5224は、まさにそのド真ん中だった。視認性の高い24時間表示と2タイムゾーンという設計は、一見すると異端のように思える。しかしそれは、紛れもなく正統派ドレスウォッチというデザインコードの枠に収まっていた。
コードに反することなく、コードの最新を生み出すというのは、並大抵のセンスや努力では成し得ない。
その意味で上記5つに対抗したのは、間違いなくIWCの新生インヂュニアだろう。お値段と生産数の少なさから、賛否両論生んだモデルではあるが、個人的には非常にIWCらしい傑作だと思っている(詳細はまた別の機会に触れることにする)。
日本にお住いの多くの読者様と同じく、今年もオンラインで楽しませていただいた Watches & Wonders。各ブランドとも、映像コンテンツが多く配信されたことで、PC画面越しにも十分に魅力を感じることができた。
ブランドのwebサイトをひとつひとつ開き、粗めの画像を眺めていたのが3、4年前のお話。いつ発表されるかも分からない、どれが新作かも分からない状況からの進化は、非常うれしいことだ。
これから実機が次々と日本への上陸を果たすわけだが、まだ画面越しでしか会ったことがない親友を待っているような気持ちだ。対面時には間違いなくもう一度感動できることだろう。そう思うとお留守番も悪くない。笑
選者のプロフィール
腕時計の面白さを伝えるYoutubeチャンネル・ウォッチ情熱応援団のメインMC。モノづくりに憧れ、東証一部の電機メーカーへ研究職として就職。しかしマスプロダクトではなく『手仕事』への興味を自覚したことで職人の世界へ転身。『クラフトマンシップへの賞賛』をテーマに年間およそ300本、これまでに1300本を超える動画を投稿。累計再生回数は3630万回(2023年4月時点)を超える。
https://www.webchronos.net/features/94226/
https://www.webchronos.net/features/92949/
https://www.webchronos.net/features/94728/