Ref. 26330ST

ロイヤル オーク デイ デイト
Ref. 26330ST。搭載するムーブメントは、既存のCal.2124/2825からムーンフェイズを省略したCal.2324/2810。旧作よりもデイデイト表示を拡大し、実用時計としての性格を強調している。ロイヤル オークの万能ぶりを強調する1本だ。ケースやブレスレットはRef.15300STに準じる。自動巻き。36石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。SS(直径39mm)。50m防水。参考商品。

ロングセラーの拡大路線に見るデザイン様式の多様化

ロイヤル オークが今の地位を築いた理由。それは第1作が、卓越した完成度を備えていたから、ではない。
むしろ、その構造がコンプリケーションの搭載に適していたことと、デザインが「伸びしろ」を備えていた点こそが、ロイヤル オークを大きく拡大させたのである。
類を見ないデザインとケース構造。このふたつをキーワードに、ロイヤル オークが定番となった理由を解き明かしていきたい。

Ref.261610R

ロイヤル オーク “サチン・テンドゥルカル” クロノグラフ リミテッドエディション
Ref.261610R。インドのクリケット選手、サチン・テンドゥルカルとのコラボレーションモデル。「オフショア・クロノグラフ」を思わせる造形だが、リュウズガードの張り出しは抑えられている。ベゼルの厚みを増して複雑機構を載せる手法は、近年のロイヤル オークに共通する。自動巻き(Cal.2385)。37石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KPGケース(直径39mm)。50m防水。限定150本。参考商品。
Ref.26120OR

ロイヤル オーク デュアルタイム
Ref.26120OR。パワーリザーブ、デイト表示に第2時間帯表示を持つプチ・コンプリケーション。搭載するのは、ジャガー・ルクルト製のCal.899に付加モジュールを加えた、Cal. 2329/2846。コンプリケーションの搭載に併せて、ベゼルを若干厚くしている。自動巻き。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。18KPG(直径39mm)。50m防水。350万円。

 1972年に登場したロイヤル オークは、薄型時計らしからぬ立体感を持つだけでなく、優れた実用性をも備えていた。とりわけラバー製のインナーケースがもたらす耐衝撃性は、スポーツウォッチに相応しいものであった。後にオーデマ ピゲは、著名なスポーツ選手などをアンバサダーに招聘、ロイヤル オーク=ラグジュアリー・スポーツウォッチというイメージを強調するようになる。

 しかしロイヤル オークとは、相反する要素を高次元で両立させた時計であり、スポーツウォッチの枠に留まらない個性を備えていた。例えばデザイン。太めのベゼルはスポーツウォッチを思わせるが、細身の針とインデックスはドレスウォッチに固有のものだ。またエッジの効いた造形は「土日にセーターを着て街に出かけるときにはピッタリ」(ジェンタ)だが、外装の卓越した仕上げはフォーマルシーンにこそ相応しい。時計業界を見渡しても、ロイヤル オークとロレックス「オイスターパーペチュアル」以外に、こういったデザインを持つ時計は存在しないだろう。

 やがてロイヤル オークが、ロレックスに比肩する「万能時計」と見なされたのは当然だった。事実2006年のインタビューで、ジェラルド・ジェンタはこう語っている。「ロイヤル オークは若々しい時計だね。今後、(ロレックスの)オイスターと並ぶ定番になるんじゃないかな」。

 加えて、オーデマ ピゲにはロレックスにない強みがあった。それが多彩なムーブメントである。デュアルタイム、クロノグラフ、そして永久カレンダーにトゥールビヨン、均時差機能に永久カレンダーミニッツリピータークロノグラフ。こういったムーブメントは、ロイヤル オークの万能ぶりをいっそう強調することとなった。

Ref.15300ST
Ref.15300ST
ロイヤル オーク
Ref.15300ST。自社製のCal.3120を搭載したモデル。Ref.15202STに比してインデックスや針が太くなったほか、APのロゴも拡大された。また、若干厚くなったケース(9.4mm)に対応して、ブレスレットのコマも厚みを増している。バックルもより頑強なものに変更された。自動巻き。40石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約60時間。SS(直径39mm)。50m防水。参考商品。

 デュアルタイムやクロノグラフはともかく、いわゆるスポーツウォッチがコンプリケーションを載せることは希である。しかしロイヤル オークはムーブメントを保護する、ラバー製のインナーケースを備えていた。そもそもこれは薄いキャリバー2121を保護するためのものだったが、複雑なムーブメントにはより有用だった。オーデマ ピゲの企画担当者がためらうことなく、ロイヤル オークに永久カレンダーミニッツリピータークロノグラフを載せた理由である。

 やがてオーデマ ピゲは、ムーブメントのバリエーションを増やしてフルレンジ化させるだけでなく、個々の性格に合わせて、デザインをモディファイすることを覚えた。少なくともカジュアルにもフォーマルにも対応できるロイヤル オークの意匠は、大きな振り幅を持っていたのである。好例は言うまでもなく「オフショア」だろう。しかしそれ以外のモデルも、微妙なモディファイが加えられるようになった。一例がクロノグラフである。スポーティーな性格を強調するようにリュウズガードが加わり、プッシュボタンにも円筒状のガードが設けられた。またベゼルの厚みを増すことで、このクロノグラフはスポーツウォッチらしい立体感をも獲得している。こういったさじ加減は、自社製自動巻きを搭載した3針にも見て取れよう。基本は2針に同じだが、針とインデックスが若干太くなり、12時位置のロゴも拡大した。また文字盤のタペストリーも大きくなり、全体としてメリハリが強調された。違いはわずかだが、オーデマ ピゲがロイヤル オークをより若い顧客に向けて改良したのが見てとれる。

 確かに1972年の第1作は卓越した完成度を備えていた。しかしロイヤル オークがここまで長らえた理由は、その「伸びしろ」にこそあった。機能と要望に応じて、自在に姿を変えるロイヤル オーク。この時計ほど、ロングセラーの条件を満たした存在はない。


Contact info: オーデマ ピゲ ジャパン Tel.03-6830-0000

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