リファレンスに見る、クロノマット小史
生産期間が長いだけでなく、豊富なサブ・バリエーションで知られるクロノマット。世界各国にクロノマットのコレクターが存在するのも納得だが、反面その全容はつかみにくい。そこで、主な8つのリファレンスに絞り、バリエーションと進化を大まかに整理してみたい。そこから見え隠れするのは、クロノマットの絶えざる「進化」である。
クロノマットの進化は、まず外装に始まり、続いてムーブメントに及んだ、と言える。クロノマット 44までの8つのリファレンスから、内外装の変化を、年を追ってたどってみよう。
●Ref.81950。1984~90年。最初期型は裏蓋に「アエルマッキMB339A」のモチーフと、ブライトリングロゴがある。また12時位置の夜光が、ミリタリーウォッチ風の3点表示であった。新しいロゴを持つモデルは、インダイアルが拡大し、夜光表示も異なる。86年にコンビモデルが「ビコロ」となる。ただしゴールド部分は20ミクロンのメッキ。なお同年まで、クロノマットはナビタイマーに分類されていた。
●Ref.13047。90~93年。スペックは前作に同じ。スチールモデルにはA、ビコロにはB、18KケースにはKの頭文字が付く。92年以降、両面無反射風防を採用。また92年モデル以降は、ライダータブが18K製となる。
●Ref.13048。93~94年。クロノグラフ針の端末に〝B〟ロゴが追加(13047以降との説もあり)。加えて文字盤に「1884」の文字が加わった。ここまでが第1世代と言ってよい。
●Ref.13050。94~99年。10周年記念モデル。これ以降、ギョーシェやラップ研磨といった試みが文字盤に取り入れられた。外観上の違いは、文字盤の見返しに「タキメーター表示」が追加され、カレンダー表示が拡大、ロゴが18K製のアプライドに変更された点である。ライダータブの夜光も拡大した。ムーブメントも17石のETA7750から、25石のブライトリングキャリバー13(ETA7750ベース)に変更された。また90年代半ば以降、エディ・ショッフェルの手がけたパイロット・ブレスレットが採用された。外観とムーブメントに大きく手の加わったRef.13050が、クロノマットの第2世代にあたると言えよう。
●Ref.13350。99~2000年。裏ブタがラウンドから多角形状に改められた。ラグ裏側の切り欠きが、ケースサイドに及んでいるのが、13050との違い(それ以前にもあったがすべてではなかった)。また、B13350とK13350は、クロノメーター仕様のキャリバー13を搭載していた。筆者の認識を言えば、ブライトリングが真に高品質なクロノグラフを作るようになった(それ以前も良質で堅牢な製品を作っていたが)のは13350以降である。少なくとも外装の質感は、それ以前と大きく異なる。
●Ref.13352。00~04年。「クロノマット2000」。以降、すべてクロノメーター規格をクリアしたキャリバー13を搭載する。なお2002年には、初めて「ブラックバード」が固有のリファレンスを与えられた。
●Ref.13353。ケース径も39.8㎜と、通常モデルより若干大きい(02~04年)。これが直径39㎜サイズの最終型であり、大きく分けると、第3世代になる。内外装共にバランスが取れたのは、クロノマット2000以降である。
●Ref.13356(後に156)。04~11年。「クロノマット・エボリューション」。ケース径が43.7㎜に拡大されたほか、ラグが下方に延びている。またベゼルも若干太くなった。キャリバー13を搭載。プッシュボタンの改良により防水性能は300m防水(ステンレスモデル)に向上した。この13356はキャリバー13を搭載する最終型である。残念ながら11年に製造中止に。
●Ref.B0110(現011)。09年~。「クロノマット 44」。自社開発のキャリバー01を搭載。500m防水(ステンレスモデルのみ)。ビコロやコンビのゴールド部分は、無垢を採用。
ではクロノマットの進化に伴い、ムーブメントはどう変化していったのか。次ページで見ることにしよう。