GRAND LANGE 1
ケースの大型化に対して示した巧みなモディファイ

グランド・ランゲ 1

グランド・ランゲ 1
Ref.115.022。初出は2003年。直径は拡大したが、オリジナルのバランスは良く保たれている。ディテールは若干異なり、スモールセコンドが拡大したほか、各インデックスの位置がインダイアルの内側に移されている。またベゼルも細い。搭載するムーブメントは、Cal.L901.2。手巻き。54石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KPG(直径41.9mm)。30m防水。参考商品。

 1994年の発表以降、様々な変更を受けたランゲ1。初作のリファレンス101.001(針がスティール)と002(針がゴールド)はインデックスがプリント、裏蓋はソリッドバックであった。シースルーバックを与えられたのは97年の101.011(PGケース)/021(YGケース)以降だが、当初は001/002に同じくインデックスがプリントであった。その後、同リファレンスながらインデックスが18K製に変更されたが、第1作同様、ロゴなどの印字は細く、メイド・イン・ジャーマニーの書体も素っ気ない。印字が改良されたのは、99年前後である。全体的に文字が太くなったほか、メイド・イン・ジャーマニーの書体も揃えられた。これが現在のランゲ1の形と言って良いだろう。

 大きなモディファイが加えられたのは、2003年の「グランド・ランゲ1」である。直径が38.5㎜から41.9㎜に拡大されたが、オリジナルモデル同様、デザインのバランスは大変に良い。

 モディファイの巧みさは、各表示の位置に注目すれば理解できよう。まず目を惹くのが、巨大なスモールセコンド。サイズを誇張するかのようにスモールセコンドは、インデックスと完全に重なるよう伸ばされた。大きくなったスモールセコンドに押し上げられるように、パワーリザーブは水平に近く持ち上げられたが、パワーリザーブ針の軸を、時分を表示するインダイアルの外周に重ねることで、巧みに処理している。またベゼルがわずかに絞られたほか、ラグが短く横方向にやや膨らんでいるのも、オリジナルとの違いだろう。大きく言うと、サイズを拡大したのみならず、幾何学的な造形を誇張したのがグランド・ランゲ1と言えるかもしれない。光るのは、94年のモデル同様、大変に巧妙な、そしていかにもランゲらしいデザインワークである。

(左上)インデックスの位置に注目。時分表示のインダイアルは拡大し、その上辺はアウトサイズデイトの「窓」よりも高い位置にある。しかしインデックスを内側に寄せることで、アウトサイズデイトとのバランスを取っている。ディテールは大きく異なるが、全体の印象が変わらない所以だ。(右上)オリジナルとの大きな違いがラグである。第1作と同じに見えるが、幅が太くなったほか、横に広がり、長さも短くなった。直径の拡大にもかかわらず、時計全体を大きく感じさせないための配慮だろうか。またベゼルもわずかに絞られ、文字盤の開口部がいっそう強調されている。(中)ケースサイド。厚みは1mm増えた11mm。「腰高」な造形はランゲ1に同じだが、装着感は優れている。なお最近のランゲの好む方法論が、このモデルからもうかがえる。ベゼルの幅を絞ると同時に角度を強め、ケースサイドを細く見せることで、ランゲ1よりサイドは薄く感じる。(左下)グランド・ランゲ1に特徴的な文字盤。表示エレメントが「正三角形」を構成するのはランゲ1に同じ。パワーリザーブ針の軸が時分ダイアルの外周に重なるほか、XIIの上辺は、右にあるアウトサイズデイト窓の上辺内側に揃っている。細かいモディファイはいかにもランゲらしい。(右下)搭載するのはCal.L.901.2。ケースが拡大したものの、裏ブタのエッジを斜めに裁ち落とすことで、間延びした印象を与えない。サファイアクリスタル製の裏ブタとムーブメントの間隔をぎりぎりまで詰めるのは、A.ランゲ&ゾーネの時計に共通する美点である。