LUMINOR 1950 3DAYS −47MM
細部と全体の調和。オリジナルに忠実な立体感の再現
PAM00372。1940年代のルミノールプロトタイプを忠実に復刻したモデル。直径47mmとかなり大きいが、軽くて時計の重心が低いため、装着感に優れている。風防に採用されたプレキシも、好事家にはたまらない要素か。決して安価ではないが、非常に高い完成度を持つ1本。手巻き(Cal.P.3000)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。SS。100m防水。104万円。
一部のルミノールが搭載するOP I系(含Ⅱ、Ⅹ、Ⅺ)は、懐中時計用のETA6497-2のクロノメーター仕様がベースである。これは大変に優れたムーブメントだったが、ETAがムーブメントの供給停止を公表した以上、供給は覚束なくなる。そこで2011年、パネライはその代替機として自社製のキャリバーP.3000を発表した。ディメンションはOP Ⅺにほぼ同じだが、性能はより改善されている。ではパネライは、なぜこの新型ムーブメントを載せたモデルに、プロトタイプモデルの造形を与えたのだろう。明確な理由は分からないが、その「立体感」がCEOであるアンジェロ・ボナーティの戦略に合致したことは想像に難くない。
なおこの時計、風防はプレキシ(つまりプラスティック風防)ではなく、サファイアクリスタルの予定であった。しかし関係者のコメントによると、S.I.H.H.の前日に、プレキシに改められたそうだ。結果販売価格は当初より20万円近くも抑えられた。ボナーティ自身は変更の理由を「サファイアクリスタルを立体的に加工すると、コストが7倍に跳ね上がる」と漏らしている。
しかし果たせるかな、風防素材の変更により、この時計はよりオリジナルに忠実な造形を持つことになった。ストラップも当時のものに近い、コバ処理を省いたカーフで、夜光塗料もオリジナルを思わせる、退色したようなクリーム色だ。とはいえ、素材は当時のイノックスから316Lに改められ、ケースの加工精度も近年のパネライらしく極めて高い。
70数年前の忠実なレプリカ。しかしこの時計が私たち(とおそらくはボナーティ)の心を捉えた理由は、おそらくその点にはない。立体感という今に求められる方法論を、見事に体現していた点にあるのではないか。