BIG PILOT’S WATCH Ref.5002 [2002]
2002年に市販されたファーストモデル
2002年初出。Cal.5000系の改良版であるCal.5011を搭載する。ムーブメントの開発責任者はクルト・クラウス氏。当初は3日間のパワーリザーブであったが、故ギュンター・ブリュームラインの要求により、7日間に延長された。近年のIWCらしく、外装の仕上げも良好。旧作のエッセンスを巧みに抽出した傑作である。自動巻き(Cal.5011)。44石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約168時間。SS(直径46.2mm)。6気圧防水。IWC所蔵。
1980年代後半に復活したパイロット・ウォッチ。しかしそこに航空用クロノメーターの後継機が加わることはなかった。搭載できるムーブメントがなかったためである。確かに当時のIWCは、いくつかの懐中時計用ムーブメントを持っていた。しかしこれらは繊細に過ぎたし、製造コストも高く付いた。
状況が変わったのは、2000年のことだ。IWCは自社製自動巻きのキャリバー5000を発表したのである。「懐中時計用ムーブメントの自動巻き版」を謳うこの大きなムーブメントは、航空用クロノメーターにこそ、うってつけであった。しかし航空用クロノメーターの復活には、紆余曲折があった。最初期型の5000系はシングルバレルのトルクが強すぎて、精度が安定しなかったのである。対してIWCの技術陣はトルクを抑えるため、いくつかの改良を加えた。そのセンターセコンド仕様がキャリバー5011である。精度の安定を確認したシャフハウゼンの経営陣たちは、ようやく「航空用クロノメーター」の復活に踏み切った。
新しいビッグ・パイロットの意匠は、かつての航空用クロノメーターを思わせる。ラグや文字盤、針の造形は旧作に近いし、インナーケースに軟鉄製の耐磁ケースを内蔵するのも同じだ。しかしケース構造はマークシリーズと同じ2ピースに改められ、ムーブメントも7日間という長いパワーリザーブを持つ自動巻きに改められた。
ムーブメントと時計全体の品質をいえば、このモデルよりも、現行モデルの方がもう一段優れている。しかしオリジナルの雰囲気を残したRef.5002は、好事家にとって大変魅力的な時計である。とりわけこのモデルに、高振動化された自動巻きを載せた後期型(ごく少数生産された)は、コレクターズアイテムのひとつといって間違いない。