カルティエ「タンク」の外装技術の変遷に軸足を置きながら、その歴史を辿る

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タンク アングレーズ SM
カルティエらしいジュエリーウォッチ。セッティングもさることながら、ケースの加工精度は非常に良い。カルティエは、時計メーカーとしての製造技法を完全に習得したと言える。クォーツ。18KWG(縦30.2×横22.7mm)。日常生活防水。452万円。

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タンク アングレーズ LM
2012年に発表されたタンクが、アングレーズ。側面をふくらませたその造形は、タンク ノーマルを思わせる。自動巻き(Cal.077MC)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。18KYG(縦39.2×横29.8mm)。日常生活防水。385万円。


 状況が変わったのは、90年代半ば以降であった。カルティエが導入した最新の切削機械は、ジュエリーの手法を転用することなく、タンクの造形を再現可能としたのである。またこれにより、タンクは再び、様々なバリエーションを擁するようになった。こういった変化を象徴するのが、例えば96年の「タンク フランセーズ」であり、あるいは2000年の「コレクション プリヴェ カルティエ パリ」であった。

 以降のタンクは、本質的な意味での原点回帰を果たした。つまりは緊張感と抑揚に富んだ造形と、多様なラインナップである。こういった特徴は、上に挙げた現代のラインナップを見てもまったく不変である。技術の進歩は、タンクを正常進化させることに成功したのである。

 2012年に登場したモデルが、「タンク アングレーズ」である。これはタンク フランセーズ、タンク アメリカンに続く、カルティエの原点となった都市(国)の名を持つ第3のコレクションだ。名前にイギリス風、アングレーズと冠した理由は、言うまでもなく、かつてのカルティエ ロンドンに対するオマージュだろう。


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タンク ルイ カルティエ XL
エクストラフラット

1980年代以降、カルティエは再び、タンクに貴石を埋め込むようになった。その伝統は現代でも変わりない。手巻き(Cal.430MC)。18石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KPG(縦40.4×横34.92、厚さ5.1mm)。日常生活防水。331万円。

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タンク フォル
クラッシュ ウォッチを思わせる限定モデル。しかしその複雑なケースは、ジュエリーの技法ではなく最新の工作機械による。手巻き(Cal.8970MC)。18石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約38時間。18KWG(縦33.91×横29.4mm)。世界限定製造200本。参考商品。