BVLGARI BVLGARI [1977]
スナップバックの市販最初期モデル
1977年初出。ブルガリ・ローマの意匠を受け継ぎながら、実用性を高めた市販型。搭載するのは手巻きではなく、デイト付きのクォーツムーブメント。77年のモデルと形状は同じだが、バックケースの刻印と製造番号から判断すると、この個体は1980年代後半以降に製造されたものだろう。ブルガリに大躍進をもたらした立役者であり、初出から40年近くを経てなお、その存在感は色褪せない。クォーツ。18KYG(直径33mm)。30m防水。ブルガリ蔵。
ブルガリ・ローマのいわば量産型が、1977年のブルガリ・ブルガリである。製作の指揮を執ったのは、やはりジャンニ・ブルガリ。意匠は76年のモデルに似ているが、細部には手が入れられた。大きな違いはバックケース。同じくスナップバックながら、巻き芯まで覆われたものに改められ、非防水から30m防水になった。搭載するムーブメントも異なり、76年のオリジナルは手巻きだが、77年以降は、一部のモデルを除いてクォーツに改められた。3時位置にデイト表示を付けたのは、実用性に対する配慮である。
超富裕層向けというブルガリのイメージを変えたかったジャンニは、この薄型2針を新しいアイコンに育てようと考えた。ブルガリ・ブルガリが、当初から大メーカーも顔負けの緻密なラインナップを揃えた理由である。まずはケースサイズ。当初33㎜のみであったケースは、すぐに30㎜、26㎜、そして23㎜が加えられた。またハイジュエラーには珍しく、ブルガリはステンレスという〝新素材〟にアレルギーを持っていなかった。1981年にスティールケースの「BB 33 SLD」と、そのブレスレット付きのバリエーションを追加。その人気に拍車をかけた。なおベゼルとミドルケース、そしてラグを一体にしたブルガリ・ブルガリのケースは、スタンピング加工(冷間鍛造)に向いていない。しかしデザインを一切変えることなくSSケースに改めたのは、ブルガリの心意気というものだろう。
70年代以降、大がかりな世界進出に成功するブルガリ。その原動力となったオリジナルピースに、同社が愛着を持ったことは間違いない。77年以降、ブルガリ・ブルガリは素材違いやデザイン違いなどさまざまなバリエーションを加えることになる。しかしクォーツを載せたオリジナルのBB33は、ほぼ同形状を留めたまま、生産が継続されたのである。