PORTUGIESER HAND-WOUND EIGHT DAYS Ref.5102 [2013]
8日巻きに進化した新しいハンドワインド
8日巻きの手巻きムーブメントを搭載したモデル。ロングパワーリザーブのためか、手巻きポルトギーゼでは初となる、日付表示が備わっている。緩急針のないフリースプラングや2万8800振動/時というハイビートにより、精度はかなり優れているはずだ。サイズ感などを含め、非常にバランスの取れた時計。筆者は非常に好きである。手巻き(Cal.59215)。30石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約192時間。SS(直径43mm、全長51mm)。112万5000円。
1993年に復活したポルトギーゼ。その手巻き最新モデルが、8日巻きの「ポルトギーゼ・ハンドワインド・エイトデイズ」である。
当初のオリジナル・ポルトギーゼは、懐中時計用のムーブメントを搭載した高精度機であった。しかし現代のポルトギーゼは、その大きなムーブメントサイズを生かして、長大なパワーリザーブも持つに至った。2000年の通称〝ポルトギーゼ2000〟もそうであったし、このモデルもやはり例外ではない。
搭載するキャリバー59215は、ポートフィノに積まれた59210の改良版である。大きな違いは文字盤側から裏側に移植されたパワーリザーブ表示。それ以外の特徴である、緩急針のないフリースプラングや、巻き上げヒゲといった要素は59210に同じだ。
個人的な意見をいうと、かつての手巻きポルトギーゼは、ムーブメントの外観をジョーンズキャリバー風に変えたジュビリーに過ぎず、精度を謳ったポルトギーゼの在り方からすると、いささかベクトルが違っていた。対してこの新作は、振動数を高め、緩急針のないフリースプラングを載せることで、ポルトギーゼに相応しい高精度を取り戻そうとしている。ムーブメントの意匠はかなり素っ気ないが、疑似古典に改められたキャリバー98系よりはずっと好ましい。加えて手巻きポルトギーゼの美点である優れた装着感は、このモデルでも損なわれなかった。直径43㎜、厚さ12㎜というケースサイズは、その向上したスペックを考えれば十分に許容範囲だ。
ようやく内外のバランスを回復した「ポルトギーゼ・ハンドワインド・エイトデイズ」。近年の手巻きポルトギーゼを必ずしも是としなかった筆者にとって、これは素晴らしい時計である。30年代にIWCを訪れたふたりのポルトガル人が今にありせば、大喜びしてこのモデルを発注するのではないだろうか。