ANNUAL CALENDAR[Ref. 5146]
指針表示を継承する現代スペック機
最もベーシックな指針表示式の年次カレンダー。Ref.5035、5036、5056に比べてケースは2mm拡大した。自動巻き。36石。自動巻き(Cal.324 S IRM QA LU/399)。36石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KWG(直径39mm)。30m防水。452万円。
大ヒット作となったRef.5035の改良版である5036と5056。その後継機にあたるのがRef.5146である。初出は2005年。ベースムーブメントがキャリバー315からキャリバー324に進化したほか、6時位置の24時間表示がムーンフェイズに改められ、12時位置にはパワーリザーブ表示が備わった。
パワーリザーブこそ短いものの、キャリバー324は傑出した自動巻きだった。もともとの基本設計は、1981年のキャリバー335。91年には改良版の315となり、2001年には324となった。315から324への改良点は主に5つ。主ゼンマイのトルクを増やすことで、振動数が2万1600から2万8800振動/時に向上した点。結果、動態精度は改善された。また、シリンバー製のスピロマックスヒゲゼンマイの採用により、耐磁性能と耐衝撃性も向上した。細かい改良だが、自動巻きのベアリングはセラミックスに、輪列の4番車も、通常のNIHSから抵抗の少ないSPYR歯車に置き換えられている。針合わせの感触をいっそう滑らかにするため、筒カナの歯数を増やしたのも、見逃せないモディファイだ。
年次カレンダーに加えられた改良も妥当である。324の巻き上げ効率は高いが、パワーリザーブは48時間しかない。そのため2日間置くと時計は止まってしまう。止まるたびにプッシャーを押してカレンダーを調整するのは手間だ。そのためパテック フィリップは、主ゼンマイの残量を確認できるよう、12時位置にパワーリザーブ表示を設けた。
筆者の私見を言うと、Ref.5146は最も望ましい年次カレンダーのひとつだ。使い勝手の優れたメカニズムに、高い視認性、そしてパテック フィリップらしい良質な外装の組み合わせは、実用時計の枠を超えた魅力に満ちている。