ムーンフェイズの機構と進化、代表的モデル

2019.08.01
パルミジャーニ・フルリエ「トンダ 1950 ムーンフェイズ」

パルミジャーニ・フルリエ「トンダ 1950 ムーンフェイズ」&「トンダ カランドリエ アニュエル」
両モデルのムーンフェイズ表示は、ムーンディスクに置かれた2個の月を利用して北半球と南半球の月相を同時に表示。表示窓の左にNとある上半分が北半球、右にSとある下半分が南半球の月相だ。周囲にNEW=新月、FIRST Q=上弦の月、FULL=満月、LAST Q=下弦の月の文字を記す。左/2017年発表。ムーンフェイズ機構は29.5日周期、59歯ムーンディスクの標準タイプ。自動巻き(Cal.PF708)。2万1600振動/時。SS(直径39.1mm)。134万円(税別)。右/新型自動巻きキャリバーPF339を搭載してアニュアルカレンダー・モデルのアップデートを図った2018年発売モデル。両半球ムーンフェイズの表示誤差は約122年で1日の高精度タイプ。2万8800振動/時。18KWG(直径40mm)。315万円(税別)。㉄パルミジャーニ・フルリエ・ジャパン☎03-5413-5745

 さて、最後に表示スタイルのバリエーションについて付け加えておこう。ひとつは南北両半球のムーンフェイズ表示だ。現状、腕時計に搭載されるほとんどすべてのムーンフェイズは、実は北半球で見られる月の満ち欠けを表していて、月を同じ経度上の同じ緯度の南半球で観察した場合は北半球とは180度逆になっている。満月や新月はどちらからでも見え方はまったく同じだが、三日月や上弦もしくは下弦のように、欠けた状態の月は向きが逆になる。時計において“北半球”ムーンフェイズが標準仕様なのは、機械式時計や天文表示の機構がもともと北半球の西欧で開発され、主に北半球の住人が使ってきたというごくシンプルな理由によるとされる。

 この両半球ムーンフェイズ表示を作り出すのに仕掛けといったほどの仕掛けは必要ない。通常のムーンフェイズ機構をそのまま使い、ふつうなら文字盤の下に隠れて見えない半分をうまく利用すれば簡単に実現できる。具体的には、ディスク上に180度向かい合って置かれているふたつの月の一方を北半球、もう一方を南半球で見える月と定め、表示窓をふたつにしてそれぞれを北半球と南半球と設定するだけでよい。

 この両半球ムーンフェイズ表示がダイアルを美しく彩り、洗練されたデザイン・エレメントを演じている好例としては、IWC「ポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー」やパルミジャーニ・フルリエ「トンダ 1950 ムーンフェイズ」がある。どちらも基本的な仕組みは同じだ。