8月29日から開催されているジュネーブ・ウォッチ・デイズ2023で、ブルガリは6種の新作時計を発表した。今回の同社のテーマは、自然が持つ、類まれな二面性だ。3幕構成で公開された、最新モデルをご紹介しよう。
ブルガリ新作「オクト フィニッシモ カーボンゴールド」
8月29日から、ジュネーブ・ウォッチ・デイズ2023が開催され、各社から新作モデルが続々と発表されている。ブルガリは「自然が持つ類まれな二面性」をテーマに、素材、色、形、そして同社が受け継いできた希少なサヴォアフェールを、新たな表現と再発見とともに、生まれ変わらせる。
そんなテーマのもとに同社が発表した新作モデルは、合計6種だ。各2本を3幕構成で紹介しており、第1幕では「オクト フィニッシモ」の壮大な物語が、新素材を中心に展開された。
自動巻き(Cal.BVL138)。36石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約60時間。Ti×カーボンケース(直径40mm、厚さ6.9mm)。100m防水。367万4000円(税込み)。2023年9月発売予定。
自動巻き(Cal.BVL305)。30石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約60時間。Ti×カーボンケース(直径40mm、厚さ7.6mm)。100m防水。1327万7000円(税込み)。2023年11月発売予定。
きわめて薄く、そして精巧な外装を与えられたオクト フィニッシモは、ブルガリのウォッチメイキングの進化と成果を示すコレクションのひとつだ。2014年以来、時計の薄さにおいて8つのワールドレコードを打ち立ててきたが、一方でただ薄いのみならず、実用性やデザイン性も妥協されなかった。
そんなオクト フィニッシモは現在、ブルガリコレクションの中でも多彩なバリエーションを展開している。特にチタンやプラチナ、ピンクゴールドにイエローゴールド、セラミックスやタンタルといった、さまざまな素材のモデルがラインナップされてきた歴史を有する。今回、2017年に薄型レコードを獲得したオクト フィニッシモ オートマティック、そして2021年に薄型レコード獲得のオクト フィニッシモ パーペチュアルカレンダーを主軸に、引き続き“素材”の物語が紡がれていこうとしている。
登場した新作オクト フィニッシモは2種だ。ベーシックな3針のオクト フィニッシモ カーボンゴールドと、複雑機構を搭載したオクト フィニッシモ カーボンゴールド パーペチュアルカレンダーのラインナップとなっている。どちらもカーボンのアンスラサイトカラーとゴールドの輝きがコントラストとなっており、オクト フィニッシモのエッジが立った複雑な造形に、どこか近未来的な雰囲気が加わった。
本作のアンスラサイトカラーとゴールドのコントラストは、異なる素材同士を組み合わせることで実現した。外装はチタンをカーボンファイバーでコーティングしている、とのこと。文字盤もカーボンで製造されており、アヴァンギャルドな意匠に仕上がっている。一方でゴールドカラーの針・インデックスが配されたことで、高い視認性、そしてラグジュアリーな雰囲気を獲得している。もっとも、カーボンを用いることの利点は、デザイン面に留まらない。軽量な同素材は薄型の外装と併せて、快適な装着感を備えているだろう。
薄型ムーブメントに息づくウォッチメイキングの技術
繰り返しになるが、オクト フィニッシモはきわめて薄い外装が大きな特徴だ。この薄さにおいて、重要な役割を果たしているのがムーブメントである。3針のオクト フィニッシモ カーボンゴールドにはBVL138が、オクト フィニッシモ カーボンゴールド パーペチュアルカレンダーにはBVL305が搭載されている。いずれも自動巻きモデルだが、前者には6.9mm、後者には7.6mmのケース厚を与えた。シースルーバックからはピンクゴールドを施したプラチナ製のマイクロローター、あるいはコート・ド・ジュネーブ装飾があしらわれたピンクゴールドのブリッジがのぞく。
とりわけパーペチュアルカレンダーを搭載したBVL305への驚きは、記憶に新しい。2021年、ブルガリは7代目のオクト フィニッシモで、世界最薄の自動巻きパーペチュアルカレンダーとしてBVL305搭載モデルを発表したが、これはブルガリがゼロから再設計したムーブメントだ。自動巻きのパーペチュアルカレンダーでありながら、ムーブメント厚はわずか2.75mmであること。また複雑なパーペチュアルカレンダーの表示を文字盤全体に4つに分け、優れた視認性を獲得したことは、ブルガリのウォッチメイキングの非凡さを改めて証明した。
オクト フィニッシモ カーボンゴールドが367万4000円、オクト フィニッシモ カーボンゴールド パーペチュアルカレンダーが1327万7000円(いずれも税込み)と、国内定価は決して安くない。しかし、アヴァンギャルドなデザインと優れた実用性から、所有欲をおおいにくすぐる新作モデルではないだろうか。
ブルガリ新作「セルペンティ ミステリオーシ」
ジュネーブ・ウォッチ・デイズ2023でブルガリが披露するステージの第2幕は、「セルペンティ ミステリオーシ」。本コレクションはシークレットウォッチとなっており、蛇の舌を動かすと、ダイヤモンドが敷き詰められた文字盤が姿を現す。優美な宝石とプレシャスメタルで蛇のモチーフを表現した贅沢な意匠に目を奪われるが、ステージの主役はブルガリの最小円形機械式ムーブメント、ピコリッシモ BVL100だ。
手巻き(Cal.BVL100 ピコリッシモ)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約30時間。18KWGケース。ブリリアントカットダイヤモンド(約32.91ct)、2石のペアシェイプエメラルド(約0.42ct)、パヴェダイヤモンド(約0.28ct)。4456万1000円(税込み予価)。
手巻き(Cal.BVL100 ピコリッシモ)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約30時間。18KPGケース。ナヴェットダイヤモンド(約11.9ct)、2石のペアシェイプエメラルド(約0.44ct)、パヴェダイヤモンド(約0.28ct)。5067万7000円(税込み予価)。
ブルガリが「とてもとても小さい」を意味する「ピコリッシモ」と名付けた手巻きムーブメントCal.BVL100は、現在市場で展開されている中で、最も小型となるムーブメントだ。先述したブルガリの、極薄時計へのウォッチメイキングのノウハウは、精巧な小型ムーブメントの設計・製造にも大いに役立った。ゼンマイの巻き上げは蛇の頭の下に配されたリュウズで行う。ピコリッシモは直径わずか12.3mm、厚さ2.5mmにもかかわらずパワーリザーブを約30時間備えていることも、特筆すべき点だ。
まずピコリッシモにフォーカスしたが、もちろんハイジュエリーウォッチとしての出来栄えもブルガリらしく完成されている。
今回登場した新作セルペンティ ミステリオーシは2種。ひとつは33カラットを超えるダイヤモンドがセッティングした、ホワイトゴールド製モデル。もうひとつはブラックラッカーにナヴェットカットダイヤモンドをセッティングしたピンクゴールド製モデルだ。
蛇(イタリア語でセルペンティ)はブルガリのアイコンとなっているが、古くはメソポタミア文明の時代から強い力を持つと信じられてきたモチーフだ。同社は、1940年代からセルペンティにインスピレーションを得てきた。ちなみに、ゴールドの舌を可愛くのぞかせるドラゴンヘッドをあしらった、セルペンティのシークレットウォッチを初めて身に着けたのは、ハリウッドスターのエリザベス・テイラーだ。
そんな歴史を紡いできたブルガリとセルペンティ。今回同社はセルペンティ ミステリオーシのラインを見直し、軽量化するとともに、装着時のフィット感を新作モデルに与えた。さらに、左右どちらの腕にも着用できる作りとなっている。強さと再生のシンボルである蛇が、手首にしっかりと巻き付いて離れないかのように。そんな思いが感じられる。さらに時計の部分は自由に取り外し可能なため、時刻調整の際に便利だ。
細かな改良を経つつ、セルペンティ ミステリオーシの妖艶な美しさは相変わらずだ。エリザベス・テイラーが好んでいたというエメラルドの瞳に引き込まれる。
さらに六角形のうろこは、6000年以上の歴史を持つ、繊細なロストワックス技法でひとつひとつが鋳造された。さらにピンクゴールド製モデルのブラックラッカーを塗布する手法は、紀元前2000年頃のエジプトで用いられた技法や、1960年代以降にブルガリがセルペンティにあしらわれたエナメル技法から着想を得た。
ムーブメントにも外装にも、ブルガリの伝統と革新が息づく新作ハイジュエリーウォッチだ。
ブルガリ新作「モネーテ カテーネ」
第3幕では、アンティークコインの歴史的価値がフォーカスされた結果、シークレットウォッチ2種が登場した。カラカラ帝の肖像が描かれたデナリウス銀貨が特徴の「モネーテ カテーネ」と、ローマ帝国を統治した皇帝セプティミウス・セウェルス、女神と崇められた皇妃ユリア・ドムナといった伝説的なカップルの、2枚のコインを有した「モネーテ カテーネ デュアルタイム」だ。
手巻き(cal.BVL100 ピコリッシモ)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約30時間。18KPGケース。ダイヤモンド(約4.10ct)。3144万9000円(税込み予価)。
手巻き(cal.BVL100 ピコリッシモ)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約30時間。18KPG/YG/WGケース。バゲットカットダイヤモンド(約21.76ct)、ブリリアントカットダイヤモンド(約20.8ct)、2石のエメラルドカボション(約0.12ct)。1憶万309万2000円(税込み予価)。
時代を超越して古代ローマ・ギリシャの偉業を現代に伝えるアンティークコインは、ローマ・ギリシャにルーツを持つブルガリのスタイルを本質的に実現している。このように考えるブルガリは紀元1世紀ローマ時代のジュエリーにインスパイアされた美学に基づき、1930年代からは洗練されたオブジェに、1960年代からはジュエリーにアンティークコインをあしらったクリエイションを発表してきた。
そんな歴史の中でアンティークコインに特別な魅力を感じていた二コラ・ブルガリは、1966年に初代「モネーテ」を考案。アンティークコインのヘリテージから、不朽のクリエイションを生み出すと言うアイディアに至った。そして2023年のジュネーブ・ウォッチ・デイズ第3幕で、厳選された希少なアンティークコインがカバーとしてセットされた、新しいモネーテ カテーネが登場することになった。
アンティークコインというユニークさにまず目を引かれるが、ブルガリらしく作り込まれた外装や輝くダイヤモンドのセッティングについても触れておきたい。モネーテ カテーネのゴールド製ケースは、かつてのウォッチ「オクト モネーテ」のように、8つのファセットで構成されたデザインになっている。この幾何学的なフォルムは、ローマにあるマクセンティウスのバシリカの天井を彷彿とさせる。
また、ダイヤモンドで形作られたフォルムは重厚で、古代のきらびやかな装飾品を彷彿とさせる贅沢さだ。
さらに「モネーテ カテーネ デュアルタイム」は、1970年代にブルガリがデザインした、長方形の時計から着想が得られた。2色の針を配した2つの文字盤それぞれが、異なるタイムゾーンの時刻を示す。
コインを取り囲むイエローゴールドとダイヤモンドによって、特別感溢れるシークレットウォッチとなっている。
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