セイコーウオッチ株式会社の社員である川内谷卓磨氏が令和5年度の「卓越した技能者(現代の名工)」に選定された。この表彰制度は卓越した技能を持ち、その道で第一人者と目されている技能者を厚生労働大臣が毎年1回表彰する制度だ。
令和5年度「卓越した技能者(現代の名工)」に選定
「卓越した技能者(現代の名工)」の表彰を受けたのはセイコーウオッチ株式会社の社員、川内谷卓磨氏である。機械式腕時計における技術的領域「開発設計」と、技能的領域「製品組立」を非常に高いレベルで両立し、その類まれなるスキルにより設計・製造された製品を通じて日本の時計技術を世界に知らしめたことが評価に繋がった。
具体的にはムーブメントの設計において、コンスタントフォースとトゥールビヨンのふたつの機構を同軸に配置し、一体化することで効率良く安定したエネルギーをテンプに伝達することができる「コンスタントフォース・トゥールビヨン」を世界で初めて考案し、セイコーの機械式時計のさらなる発展に貢献した。川内谷卓磨氏は、開発したムーブメントを十分に機能させるために340個を超えるパーツを自ら組み立てている。この卓越した組立調整技能で1/100~2/100mmの微調整を加えることで、さらに精度と性能を上げている。
2022年のジュネーブ時計グランプリ(GPHG)において、クロノメトリー賞を受賞したのがまさに川内谷卓磨氏が開発したグランドセイコー初のコンプリケーションウォッチ「グランドセイコー Kodo コンスタントフォース・トゥールビヨン SLGT003」である。独創的な機構が生み出す音色から、心臓の鼓動を意味する「Kodo」と名付けられ、時計界に新たな革新と衝撃を与えた。
本人のコメント
「この度は、卓越した技能者(現代の名工)という栄誉ある表彰をいただき、大変嬉しく、光栄に感じております。表彰のきっかけとなったKodo開発の道のりには様々な困難がありましたが、いつも素晴らしいチームメンバーに恵まれ、乗り越えることができました。この度の表彰も、チーム全員の協力によるものと思っております。近年の機械式時計においては、人の感情に訴える感性的価値の重要性がますます高まっていると感じております。日本の腕時計は品質や機能といった機能的価値が大きく評価されてきた側面がありますが、今後世界の時計市場におけるプレゼンスを高めていくために、日本からもさらに感性的価値にフォーカスした製品を作っていくことが重要と考えております。今後も、微力ながら日本の時計産業を刺激する一助となるために、より一層励む所存であります。」
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