日本最大級の時計の祭典のひとつ、日本橋三越本店の「三越ワールドウォッチフェア」。第27回を迎える今年は「時をつなぐ、時を楽しむ」をテーマとして、8月14日(水)から27日(火)まで開催される。今年はどのような催しが企画されているのか、本記事では、その概要をお伝えする。
Text by Tsubasa Nojima
[2024年7月26日公開記事]
「時をつなぐ、時を楽しむ」。三越ワールドウォッチフェアが今夏も開催!
すっかり夏の風物詩となった日本橋三越本店の「三越ワールドウォッチフェア」。27回目を数える今年は、「時をつなぐ、時を楽しむ」をテーマに掲げ、さまざまな企画が用意されている。“時”とは、常にともにありながらも、その存在が当たり前であるがゆえに意識を傾けることが稀である存在だ。そんな時を可視化してくれるツールである時計は、時と我々をつなげ、その対話を楽しませてくれる。
三越ワールドウォッチフェアの開催日は、8月14日(水)から27日(火)まで。毎回、時計愛好家はもちろんのこと、多くの来場者から好評を博す本イベント。今年はどんな目玉が用意されているのか、その概要を紹介しよう。
第27回 三越ワールドウォッチフェア開催概要
【会期】
2024年8月14日(水)~8月27日(火)
【営業時間】
10:00~19:00
【会場】
日本橋三越本店 本館1階 ステージ/本館1階 宝飾、本館2階 紳士、本館6階 ウォッチギャラリー/ジュエリーギャラリー
【問い合わせ】
日本橋三越本店 電話 03-3241-3311(大代表)
このフェアならではの企画が目白押し!
例年、数多くの催しが企画されている三越ワールドウォッチフェア。今年はおもに、4つの企画が用意されている。スイス時計協会FHとのタッグによって実現した体験型企画、稀少な生産終了モデルの販売、普段取り扱いのないブランドウォッチの展示、そして腕時計のカスタムオーダーだ。それぞれ異なる角度から、学びや発見、感動を与えてくれる企画たち。ひとつひとつ、その魅力をお伝えしよう。
スイス時計協会FHとのコラボレーション
スイス時計業界の代表として、その保護と発展などを目的に活動するスイス時計協会FH。今回のフェアで、「スイスといえば時計」を表現したエキシビションを展開する。このエキシビションでは、スイス産業に関する7つのテーマを学ぶことが可能だ。このテーマとは、スイス、スイスメイド、歴史、デザイン、精度、製造、コンプリケーションである。タブレット端末を介して操作する体験型であることが特徴で、知識がない状態からでもスイス時計の長い歴史や優れた職人技を理解することができる。
さらに、タッチスクリーン型の“ワークベンチ”も用意されており、スクリーンに表示される機械式時計のムーブメントの組み立てを、デジタルで体験することもできる。見事組み立てに成功すると、自身の名前入りの修了書が発行される。時計好きの大人のみならず、子供にとっても楽しい思い出になるに違いない。
ブレゲ、ハブリング2の生産終了モデルを販売
フェアでは、ブレゲとハブリング2の生産終了モデルが販売される。現行品が一堂に会するだけではなく、お目にかかることすら困難なレアピースが並ぶのは見逃せない。
ブレゲの生産終了モデルで販売されるのは、「クラシック トゥールビヨン 3657」だ。本作は、6時位置の開口部からトゥールビヨンをのぞかせるコンプリケーションウォッチであり、12時位置に時分を表すインダイアルが配されている。そのインダイアルに重なるように弧を描いているのが、レトログラード式のパワーリザーブインジケーターと24時間表示だ。ダイアルの全面には繊細なギヨシェ装飾が施され、光の反射を抑えるとともに立体感を演出している。シンプルなラウンド型のケースに真っすぐ伸びるラグ、ケースサイドのコインエッジ装飾など、クラシックコレクションらしいブレゲの伝統的なデザインが楽しめる1本である。
6時位置にトゥールビヨンを配し、加えてレトログラード式のパワーリザーブインジケーターと24時間表記を組み合わせたコンプリケーションウォッチ。ブレゲらしいエレガントなデザインと複雑機構を楽しむことができるモデルだ。手巻き(Cal.560T)。24石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約50時間。18KYGケース(直径39mm、厚さ10.25mm)。30m防水。2178万円(税込み)。
ハブリング2は、2004年に誕生したオーストリアの独立メーカーだ。創業者は、リチャード・ハブリングとその妻のマリアであり、今年で20周年を迎える。リチャードがかつて所属していたブランドでは、ETA7750をベースとした信頼性の高いスプリットセコンドクロノグラフを開発するなどした、優秀な技術者としても知られている。そんな創業者を持つハブリングは、ムーブメントの振動に合わせて目まぐるしく針が回転するフドロワイヤント機構やワンプッシュクロノグラフなどの特殊な機構を有したモデルを得意としているが、今回のフェアで出品されるのは、同社が創業時に製作していたシンプルな自動巻きモデルの「タイムオンリー 42mm」だ。9時位置にスモールセコンドを配し、立体的なアラビア数字インデックスを組み合わせたセクターダイアル、ステップベゼルなど、ヴィンテージに造詣の深いハブリング夫妻の知見が詰まった作品である。
ハブリング2が創業時に製作していた「タイムオンリー」。スモールセコンドを配したクラシカルなデザインを特徴とするモデルだ。2点のみ販売される予定。自動巻き。SSケース(直径42mm)。5気圧防水。66万円(税込み)。
ウブロ、ジェラルド・チャールズなど、普段取り扱いのないブランドウォッチも展示
普段から多くの時計ブランドが並ぶ日本橋三越本店だが、フェア期間中は、普段取り扱いのないウブロやジェラルド・チャールズなどのブランドウォッチが展示される。
ウブロは、そのスポーティーでダイナミックなデザインもさることながら、色とりどりのカラーセラミックスやカラーサファイアクリスタルなどの素材を自社で研究開発し、積極的に取り入れる独創的なブランドである。また、トゥールビヨンやフライバッククロノグラフはもちろんのこと、革新的な複雑機構も次々に生み出し、時計界に驚きをもたらしてきた。今回のフェアでは、本館1階 ステージにポップアップで登場。ぜひその魅力に触れていただきたい。
ジェラルド・チャールズも要注目だ。名作と名高い時計のデザインを数多く手掛けてきたデザイナー、ジェラルド・チャールズ・ジェンタが創業したブランドである。そのデザインはバロック建築の創造美に着想を得ており、六角形、八角形、十字形を巧みに組み合わせ、ケースに反映させている。日本国内での取り扱い店は非常に限られており、今回のフェアは同ブランドに触れられる、絶好の機会である。
腕時計のカスタムオーダー
フェアのテーマである、「時をつなぐ、時を楽しむ」。その中でも、より自分らしい時の楽しみ方を提案してくれるのが、腕時計のカスタムオーダーサービスだ。腕時計の多くはダイアルやケースなどの構成要素がブランドによって決められており、ユーザーが好みに合わせて変えられる部分は、ベルトくらいである。しかし、時計愛好家の中には既製品には満足できず、世界にひとつだけの自分のモデルを手にしてみたいと切望するユーザーも少なくないのではないだろうか。日本橋三越では、そんな夢を叶えてくれるサービスが存在する。
対象のブランドは、カール F. ブヘラ、ジャガー・ルクルト、ラング&ハイネ、アトリエ・デ・クロノメトリ、クドケだ。カスタムオーダーサービス自体はフェア以外でも取り扱われているが、カール F. ブヘラに関しては、このフェアよりサービスの取り扱いが開始される。また、カスタムオーダーは個別の要望に基づいて職人が時計のカスタマイズを行う。納品までは時間を要することを留意しておこう。
カール F. ブヘラでは、専用アプリを用いて行う独自のオーダーシステム、「CFBマスターラボ」が用意されている。ベースとなるモデルは、12時位置にトゥールビヨンキャリッジを配した「マネロ」または「ヘリテージ」ラインのトゥールビヨン ダブルペリフェラルモデルと「マネロ ミニッツリピーター」。今回は日本橋三越特別限定モデルとして、ムーブメントの受けに、同社が本拠地を構えるスイス・ルツェルンのランドマーク「瀕死のライオン像」と、三越を象徴する「ライオン像」がエングレービングされたモデルが販売される。
オーダーシステム開始を記念したモデル。チョコレートブラウンのダイアルにはダイヤモンドインデックスが配され、ムーブメントの受けには、手彫りによる2頭のライオンが鎮座している。自動巻き(Cal.CFB T3000)。33石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約65時間。18KRGケース(直径42.5mm、厚さ11.9mm)。3気圧防水。2398万円(税込み)。
ジャガー・ルクルトではおなじみのサービス、「レベルソ」のケースバックへのエングレービングが可能だ。イニシャル、日付/数字、メッセージ、干支、フローラルアート、モニュメントなど、自分好みのデザインができるほか、自分が希望する図柄から、デザインを提案してもらうことも可能だ。
マイクロブランドのカスタムオーダーも楽しめる。ドイツ・ドレスデンで宮廷時計師のものづくり精神を受け継ぐブランド、ラング&ハイネのカスタムオーダーでは、ダイアルの色、素材、針の形状、ムーブメントへのエングレービングを自分好みに変更することができる。
また、“先人が腕を振るった、時計製造における全盛期への回帰”という理念を持ち、1940年代から50年代の時計をモチーフとしたクラシカルなデザインを得意としているアトリエ・デ・クロノメトリのカスタムオーダーは他の多くのブランドと大きく異なる。ダイアルや針だけではなくケースのデザインまで選択することができる、かつ同一デザインの再注文は受け付けないということだ。つまり、オーダーした時計は世界中どこを探しても同じものがない、唯一無二の存在となる。
2019年のGPHG(ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ)で小さな針賞を獲得し、2021年には創業者のステファン・クドケがAHCI(独立時計師協会)の正会員になるなど、徐々に評価を高めるクドケが提供するカスタムオーダーサービスでは、ダイアルのカラー、ケース素材、ムーブメントに施される彫金などをオーダーすることが可能だ。
この夏、日本橋三越本店で“時計沼”にはまろう
毎回、時計愛好家を楽しませてくれる三越ワールドウォッチフェア。今年もその期待を満たしてくれる催しが企画されている。ひとりでじっくりと時計に向き合うも良し、時計愛好家仲間と一緒にディープな世界を楽しむも良し、家族と体験型展示で時計の世界を学ぶも良しと、懐の深いフェアだ。この夏は、日本橋三越本店で“時計沼”にどっぷりとつかってみてはいかがだろうか。