2022年以降、ジャケ・ドローはユニークピースを中心に製作するブランドへと方針を変えた。今回ジャケ・ドローが発表した「ラ・ロン・デ・ベゼ・オートマトン(La Ronde des Baisers Automaton)」はファッションデザイナー、シャンタル・トーマスとコラボレーションした腕時計だ。Baiserとはフランス語でキスを意味し、あらゆる口付けをたたえるオートマトンを搭載した腕時計なのである。
ラ・ロン・デ・ベゼ・オートマトン(La Ronde Des Baisers Automaton)
2022 年にアラン・デラムラを CEO に起用して以降、ジャケ・ドローはユニークピースを中心に生産するブランドに方針を切り替えた。それらのユニークピースは、CEO立会いのもとで行われる「納品」セレモニーを通して直に納品される。新作はファッションデザイナーであるシャンタル・トーマスとのコラボレーションで、うっとりするような詩情豊かなオーラを放つ時計「ラ・ロン・デ・ベゼ・オートマトン(La Ronde Des Baisers Automaton)」が誕生した。盗まれた口づけ、贈られた口づけ、失われた、秘められた、あるいは心(ハート)の中に残るあらゆる口づけを表現している。
自動巻き(Cal.2653 AT2)。56石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約68時間。18KRGケース(直径43mm、厚さ16.96mm)。30m防水。ユニークピース。※価格は29万3000スイスフラン~。スイス付加価値税(VAT)込み。
シャンタル・トーマスの要求
シャンタル・トーマスはブラック、ホワイト、レッドといった彼女ならではの配色のタイムピースを望んでいた。しかし、デザインとしてのカラーと素材は別物であるということも知っていた。そこで、この作品に命を吹き込むために、それぞれにふさわしい質感とボリュームを持つさまざまな素材を選択した。
オニキスの文字盤の下には、ブラックオニキスとカショロン(ホワイトオパール)の立方体で構成された遠近法の格子柄が配されている。ひとつめのオニキスはジャケ・ドローでもよく用いられるが、カショロンの使用は初めてだ。寄木細工のようなこのパターンは、34個のパーツでできており、立方体の高さは2.25mm~0.45mmとなっている。格子柄の立体的な遠近感を際立たせるために、5つの高さが異なる立方体をひとつずつ機械加工して手作業で組み立てられた。
オートマトンたる動き(アニメーション)
中心となるこのデザインの周りに、可動式のディスクが配置されている。そのディスクは螺旋状に、手作業で376個のダイヤモンド(合計0.63カラット)が、スノーセッティングされたもう一方のディスクの中の光沢のあるブラックディスクと組み合わされている。3時位置のプッシュボタンを押すだけでアニメーションが開始される。すると、外側のディスクが30秒で1回転、最大4分間(つまり8回転)回る。
この回転は同じプッシュボタンをもう一度押し、必要に応じて開始または停止が可能だ。この催眠術的なオートマトンの動作によって時計の精度が損なわれることはない。オートマトン部分はあるツインバレルから動力を供給される一方、時刻表示部分は別のツインバレルによって駆動され、独立して約68時間のパワーリザーブを実現している。
職人の技術が問われる製造工程
ユニークピースを組み上げるジャケ・ドローの職人による技術を紹介しよう。