アブラアン-ルイ・ブレゲが打ち立てた、幅広い人々に技術革新を提供するという理念に基づき、2世紀以上にわたり続いてきたブレゲの精神が、この「トラディション インディペンデント クロノグラフ 7077」にも息づいている。この時計は、濃密なブレゲ・ブルーの色調を使い、短い時間を正確に測定する機能を際立たせている。
トラディション インディペンデント クロノグラフ 7077
手巻き(Cal.580DR)。21石。時・分は2万1600振動/時でパワーリザーブは約55時間。クロノグラフは3万6000振動/時でパワーリザーブ約20分。18KWGケース(直径44mm、厚さ14.1mm)。30m防水。1413万5000円(税込み)。
経過した時間の計測ではその結果は瞬時に表示されるが、クロノグラフの始動によって主要な歯車の円滑な作動を妨げる可能性がある。この機械的な問題は依然としてクリアしなければならない挑戦でもある。歯車機構を独立したふたつに分離することで、この問題は解消され、それぞれの表示に優れた精度をもたらす。この腕時計では、審美面においても対称性を追求し、卓越したデザインを実現している。クロノグラフの始動インジケーターは6時位置にあり、2時位置と10時位置には、それぞれパワーリザーブとクロノグラフの分を示すレトログラード針が配され、4時位置と8時位置にはふたつのテンプが向かい合って配置されている。時刻を表示するテンプは2万1600振動/時(3Hz)で、クロノグラフ用のテンプは3万6000振動/時(5Hz)で振動し、最高の精度を実現している。
左右対称のバランス
このモデルは、特にふたつのテンプで際立つシンメトリーな配列とその幾何学的な外観で目を引くが、その内部にはブレゲによって発明され特許取得された革新的なCal.580DRムーブメントが搭載されている。
ブレゲ・ブルーの文字盤
12時位置には、手作業で仕上げられたクル・ド・パリ模様のギヨシェ彫りを備えたゴールド製の「ブレゲ・ブルー」文字盤に、ロジウム仕上げゴールド製の針が浮かぶように時間と分を示し、白いローマ数字が配されている。この文字盤には、左側には中央のクロノグラフ針によって駆動するクロノグラフの20分積算表示、右側にはパワーリザーブ表示が重ねられている。ムーブメントの下部にある「ブレゲ・ブルー」のフランジに囲まれた8時と4時のテンプの間に、ロジウムメッキの小さな矢印が「ON」または「OFF」モードを表示する。
独立した2つの駆動系統
従来のクロノグラフでは、経過時間の計測が即時に視認できるものの、計測機能の作動は主な駆動系統に影響を及ぼすため、メカニカルな課題が発生することになる。しかし、「トラディション インディペンデント クロノグラフ 7077」では、この問題が発生しない。手巻きCal.580DRには、完全に独立したふたつの駆動系統が搭載されているからだ。ひとつ目の駆動系統は、時・分の針を駆動するもので、2万1600振動/時という穏やかな振動数で動作するテンプによって調整されている。このテンプは文字盤の右側、パワーリザーブ表示の下に位置し、約55時間のリザーブを提供する。
ふたつ目の駆動系統は、高い安定性と正確性を確保するため、3万6000振動/時という高振動数で作動する。これにより、クロノグラフによって提供されるデータの精度が向上し、1/10秒単位の計測が可能となる。5Hzの振動数によるこの精密なクロノグラフは、短時間の計測に対する信頼性を提供し、機械式クロノメーターの世界でのさらなる進歩を示し、精度の限界を押し広げる技術革新を証明している。
ふたつの異なるエネルギー源
通常、このクロノグラフを機能させる第二の輪列に動力を供給するには、もうひとつの香箱を配備しなくてはならないと考えるところだが、そのような解決法では、さらにスペースが必要になり、しかも使用するには、時計用だけでなく、クロノグラフ用の香箱のゼンマイも巻かなくてはならない。そこでブレゲは、「トラディションインディペンデントクロノグラフ 7077」のクロノグラフ機能に最適な新しいタイプのスプリングを導入した。クロノグラフを動かす動力は、ユーザーがリセット操作をした際に発生し、ブレード状の柔軟なスプリングに蓄えられる。この革新的なスプリングに備わるパワーリザーブはおよそ20分だが、短い時間を計測するには十分に便利だ。このシステムでは、ユーザーは使える動力の量を気にせずに、クロノグラフをただちに作動させることができる。スプリングには非同心円の輪列が組み合わされ、それによりクロノグラフに均等なトルクや安定した振幅、歩度がもたらされた。スプリングを含む機構全体は、特許登録されている。
詳細な操作説明
ホワイトゴールドのケースに収められたこのモデルのクロノグラフ機能は、ふたつのねじ込み式プッシャーによって制御され、意図しない操作から着用者を保護する。一般的なクロノグラフとは異なり、このモデルではフルート仕上げのケースの4時位置にあるプッシャーが計測の開始に使用され、8時位置のもうひとつのプッシャーが計測の停止とリセットを行う。
まさにこのゼロリセットの操作によってブレード・スプリングがたわんで動力が蓄えられ、クロノグラフ機能に次なる計測への準備が整えられるのだ。チタン製のテンプはまた、側面にふたつのブレーキが配置されている。そのひとつは、クロノグラフのスタート操作の際に、カムとの連結を解除してテンプを解放し、ストップ操作の際にテンプを停止させる。こうしてテンプは常に理想的なポジションにあり、素早く本来の振幅に達することが可能になる。この革新的な機構も特許で保護されている。
「トラディション」コレクションの歴史的なルーツを想起させる特徴には、ブレゲが特許を取得したパラシュート耐衝撃装置に加え、観測用二重秒針クロノメーターと呼ばれる機構が含まれている。この機構は、1825年1月6日にブレゲが販売した「クロノメーター No.4009」にも見られる機構である。