物理学者たちは、何世紀にもわたって究極の永久運動を発明することを夢見てきた。1928年に誕生したアトモス・クロックは、時計界の唯一無二の存在として、その夢を実現させた。この時計は、単に注目に値するタイムピースというだけでなく、そのメカニズムの特徴的なフォルムが定義する運動の芸術作品でもある。2022年、ジャガー・ルクルトはこの特別な腕時計を全く新しいデザインのアトモス・インフィニットとして発表。そして2025年、このデザインに新たな解釈を加え、ホワイトラッカー仕上げのダイヤルを備えた100台限定モデルを発表した。
アトモス・インフィニット アロ

ジャガー・ルクルト自社製パーペチュアル・ムーブメント Cal.570。15石。120振動/時。60秒で1回振動の環状振子。パワーリザーブ約7200時間。直径215mm x 高さ253mm。世界限定100台。312万4000円(税込み)。
透明感とミニマリズムを讃える「アトモス・インフィニット アロ」は、非常に純粋でありながら、アトモス固有のアイデンティティを忠実に受け継ぐデザインである。アトモスのクラシカルなアールデコの「ガラスボックス」デザインを21世紀に新たに解釈。アトモス・インフィニットの滑らかなシリンダー形ガラスキャビネットは、まさに初代モデルの丸みを帯びた「ベルジャー」ドームを想起させる。視界に遮るものが全くないシームレスなガラスキャビネットは、その中で浮いているように見える見事なアトモスの機構の価値を余すことなく引き出している。
実際には、ほとんど目に見えないようにデザインされたガラス製のサポートで機構が保持されている。これによって、時計を動かし続ける蛇腹やチェーン、歯車などを搭載した機構全体をあらゆる角度から眺めることができるのだ。
ホワイトラッカー仕上げのダイヤルが引き立てるミニマルなデザイン

ふたつの円で構成され、視覚的な奥行きを感じさせるホワイトラッカー仕上げのダイヤルは、ポリッシュ仕上げのバトン型植字インデックスと針によって引き立てられ、シルバーロジウム仕上げの機構がマッチしている。洗練されたシンプルさを追求したこの作品は、不要なディテールを取り除くことで、オブジェそのものの真のエレガンスが浮かび上がることを実証した逸品だ。ダイヤルリングの製造は、高い精度が求められる複雑な工程である。純度の高い白を実現するためには、ラッカーを10 回塗り重ね、1回塗るごとに乾燥具合を厳しく管理する必要があった。
その後、ラッカーにポリッシュ加工が施され、インデックスをはめ込むための小さなくぼみを機械加工する際にラッカーが傷つかないようニスを塗り込む。この丹念なクラフツマンシップにより、透明感とバランスによって最終的な美しさが決まる完璧な仕上げが保証されるのだ。完成したら、保護用のニスを丁寧に落とし、インデックスをスロットに取り付ける。
気温の変化からエネルギーを引き出す

1928年にジャン=レオン・ルターによって発明されたアトモスは、一見物理法則に反しているようにも見える。この置時計は、ごくわずかな気温の変化からエネルギーを引き出し、手作業の操作を必要とすることなく動き続ける。その秘密はガスを密封したカプセルにある。このカプセルは、膜によって時計の駆動ゼンマイに接続されている。わずかな温度変化によってガスの体積が変化し、膜がアコーディオンの蛇腹のように「呼吸」し、主ゼンマイを巻き上げる。わずか摂氏1度の温度変化で、約 2日間分のパワーリザーブが供給され、永久に作動することが可能になるのだ。
注目すべきディテール