老舗ブランドがしのぎを削るジュネーブで、調速機構であるテンプを文字盤の小窓から見せる「ハートビート」を大ヒットさせ、存在感を高めたフレデリック・コンスタント。創業1988年、来年で30周年を迎える同社だが、老舗のひしめくジュネーブではまだまだ若手ブランドだ。しかしグループに属さない独立ブランドだった2004年に、すでに自社開発の「ハートビート マニュファクチュール」を発表した。ちなみに、大グループ傘下のブランドで、自社ムーブメントを持たないブランドは今なおある。と考えれば、13年前に自社製ムーブメントを完成させた同社の進取の姿勢が見て取れよう。
フレデリック・コンスタントのモットーは、「Accessible Luxury / 手の届くラグジュアリー」だ。要は品質の高い時計を現実的な価格で販売すること。だが自社ムーブメント開発は長い年月と費用がかさみ、どうしても高額になってしまう。そのためフレデリック・コンスタントの製品には自社ムーブメント搭載機とセリタ搭載機のふたつがある。カタログやwebサイトで「マニュファクチュール」と銘打たれた製品が、自社ムーブメント搭載機。しかし、それでも良心的な価格であることに変わりはない。
また、いち早く自社製ムーブメントを開発した同社は、ムーブメントの改良にも熱心だ。早くからシリコン素材に注目してきた同社は、最高級ラインの「マニュファクチュール トゥールビヨン」や、最近では一部のベーシックなモデルにもシガテック社製のシリコン製ガンギ車とアンクルを採用している。フレデリック・コンスタントは外観だけでなく中身に最新技術と丁寧な仕上げの贅を尽くして、なおかつ「手の届くラグジュアリー」なのだ。
2015年に取材した時点で、自社ムーブメントの生産量は2万個だったが、2020年には5万個までの増産を計画しているとのこと。開発には非常に積極的なフレデリック・コンスタント。今やその質も、ジュネーブメイドと呼ぶにふさわしいレベルとなった。高級機を愛する時計ファンも、一度は実物を触って見てほしい。
マスター・ウォッチメーカーのピム・コースラグ氏が来日して分解した「ハートビート マニュファクチュール」のムーブメントは、シチズンフラッグシップストア東京で展示中である。最新のCal.FC945は脱進機と振り座がシリコン製に進化しているので、時計ファンにはぜひ確認いただきたい。
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