シャネル、モントル・ジュルヌの株式を20%取得

2018.09.17
モントル・ジュルヌの創業者であるフランソワ-ポール・ジュルヌ。21世紀を代表する独立時計師のひとりである

 パリを拠点に置くシャネルは、9月15日、在ジュネーブの独立時計メーカーであるモントル・ジュルヌ社の株式を小数取得したと発表した。取得した株式の割合や金額は不明だが、関係者によると20%とのこと。モントル・ジュルヌ社の株式は、創業者であるフランソワ-ポール・ジュルヌのほか、ベルギーのリテーラーやスイスの不動産業者などが所有していたが、新たにシャネルが加わった。現時点では、株式収得に伴う経営体制の変更などはない。

 シャネルによるプレスリリースは以下の通り。

「シャネルはモントル・ジュルヌ社の少数株主となることで、プレステージある時計メーカーとしての役割を強化する。
1998年のベル&ロスと、2011年のローマン・ゴティエにはじまったこの動き(訳注:資本参加)は、時計作りに対する専門知識を保存し、発展させ、シャネルと同じ価値観と創造性を誇る独立した時計メーカーを支持するという願望の現れである。

フランソワ-ポール・ジュルヌは、1982年に初の時計をパリで完成させた。1999年以降、モントル・ジュルヌ社は、"F.P. Journe Invenit et Fecit"の名前で、ラグジュアリーウォッチの製造と販売を行っている。
ジュネーブの中心部にある同社は、デザイン、開発、製造をすべてのムーブメントに対して行うほか、ケースと文字盤の製造も行う。製造本数は900本に限定されており、デザインのエクスクルーシビティを維持している。

シャネルの株式は、モントル・ジュルヌ社の持続可能性と自立性を確保する」

 現在、モントル・ジュルヌ社の年産は約900本。ジュネーブの工房でムーブメントの設計・製造を行うほか、傘下のボワティエ・ジュネーブとカドラニエ・ジュネーブで、ケースと文字盤も内製している。現在同社は、他社とのコラボレーションを行っていないが、カドラニエ・ジュネーブは複数の時計メーカーに対して、高品質な文字盤を供給している。関係者は、資本参加に伴い、今後モントル・ジュルヌがシャネルに文字盤を提供する可能性を示唆した。

 創業者のフランソワ-ポール・ジュルヌが株式の一部を譲渡した理由は不明だが、現在61才のジュルヌに後継者がいないことが一因、という意見がある。モントル・ジュルヌ社に対しては、スウォッチ グループを除く他グループも出資、または買収の意図を持っていたが、関係者曰く、もっとも温情的なシャネルを選んだのではないか、とのこと。1998年以降、ベル&ロスやローマン・ゴティエに出資を行ってきたシャネルは、あえて株式の過半数を手に入れず、傘下メーカーの自由度を残すことで、各社の経営を支援してきた。シャネルのプレスリリースが示す通り、同社はモントル・ジュルヌ社に対しても同様のスタンスを取ると考えられる。

(追記)カドラニエ・ジュネーブは、フランソワ-ポール・ジュルヌとセドリック・ジョナーが共同で設立した文字盤会社である。ジョナーが離れた後、ドゥ・ヴィット、ハリー・ウィンストンなども出資したが、現在はモントル・ジュルヌ社の単独資本となった。同社はリシュモン グループの傘下にあった部品メーカー、スターン・クリエーションの清算に伴い、文字盤部門の一部を吸収した。