HYTが、流体が時を表示する新作「H5 BLACK」を発表した。
流体が時を表示する
液体で時間を表すという発想の起源は古く、紀元前16世紀頃には既に水で時間を計測する「水時計」が存在していたと言われている。現存最古のものは紀元前15世紀頃、古代エジプトで用いられていた水時計だ。これは容器に開けられた小さな穴から水が流れ出ることで水位が変化し、容器の内側に付けられた目盛りと水面によって経過した時間を測ることができるものだった。古代ギリシア人はこのような水時計をクレプシドラ(水泥棒)と呼び、裁判の時間測定などに使っていたようだ。
その後ギリシア・ローマ時代を通じて水時計の技術は向上し、そのために発明された複雑な歯車機構はオートマタ技術へと繋がっていく。時間の経過を可視化したこの水時計は、日時計と共に最古の計時器具であると考えられている。エジプト、ヨーロッパのみならず、「漏刻」と呼ばれるアジア版の水時計も存在していることを考えると、「時」という存在を計測し、変遷を確認するという行為がいかに人類の歴史の中で長く行われてきたことか想像できるだろう。
43名の専門チームが革新を起こす
HYTは科学、ハイテク、哲学、芸術、およびデザインを統合する生態系だと自らを表現する。時計の製造はスイス・ヌーシャテルで行われる。クロノードやルノー・エ・パピと協力した機械式時計における最高峰の技術と、医療・化学・物理学・宇宙工学などの様々な先端技術を融合し、1mmのプレキシガラス製のキャピラリー(毛管)の中で2つの異なる液体により時間を表示する、という世界初の技術は時計史に残る技術革新であり、HYTのすべての時計に搭載されている。
今回発表された「H5」モデルは時間の流れとその経過、価値の両方に注目を集められるようなスタイルで時間を表示することを目指して作られた。ゆっくりとした2つの流体のせめぎ合いは、自然界の侵食を彷彿とさせる。山々や渓谷、海岸を形成してきたのと同じように、HYTの時間に対する認識を形作るダイナミックなデザインだ。
対極性が新しいコラボレーション
3年をかけて開発された501キャリバーは、機械工学と流体工学という矛盾が生じかねない技術の力関係を、巧みに操ることのできる機構の実現につながった。また技術面だけではなく、いつまでも見ていられるような透明感を持つデザインは、あらゆる角度からこの時計を鑑賞したくなる魅力を兼ね備えている。