5年の歳月をかけて開発された太陰太陽暦を取り入れた世界で初めての腕時計
自動巻き(Cal.3638)。39石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約168時間。PT(直径45mm、厚さ15mm)。3気圧防水。世界限定50本。862万円(税別)。
月の満ち欠けを基本とする太陰太陽暦は、太陽暦(グレゴリオ暦)に比べて1年が11日ほど短くなっており、その差は3年間でほぼ1ヶ月に達する。そこで、その1ヶ月を閏月として加えることでズレを補正するのが太陰太陽暦だ。平均的な1年の長さは太陽暦に近い値となる。
一方、太陽暦(グレゴリオ暦)は現在世界的に使われている暦だ。しかし、これも完璧な暦というわけではなく、4年に1度閏年を挿入しなくてはいけないのだが、128年に1度は閏年を除く必要がある。ちなみに今年2020年は閏年だ。現代の生活において、一般的に暦を意識するシーンは多くないと思われるが、注目していただきたいのは太陰太陽暦とグレゴリオ暦というふたつの異なる暦を連動させて、ダブルでカレンダー構造にしたブランパンの研究開発能力だ。
ブランパンは2種類の暦を組み合わせるというメカニズムに挑戦した。だがそれぞれの暦に基づいた日付を同時に表示させるには、5年にも及ぶ研究・開発が必要だったという。両暦の時間区分の単位は同じではないことが、より作業を複雑にしたことだろう。
グレゴリオ暦は太陽、太陰太陽暦は月の満ち欠けの周期に基づいている。60分を1時間、それが24時間集まって1日となるグレゴリオ暦とは異なり、太陰太陽暦は1日をおよそ2時間ずつの12の時辰(じしん)に分ける時法を採用している。それぞれの時辰には十二支の順番に従って、対応する動物の名前が付けられている。
こうした情報がすべて、ブランパンのトラディショナル チャイニーズ カレンダーのグラン・フー・エナメルダイアル上に集約されている。今年の干支であるネズミは12時位置の小窓に現れる。その下には時辰のカウンターがあり、数字とシンボルが表示されている。3時位置には十干と五行が配され、9時位置の2本の針は月と日付を示している。また、太陰太陽暦の特徴である閏月を表示する小窓も備えられている。
中国の暦の月を決める基準であり、ブランパンのカレンダーモデルの象徴的な要素であるムーンフェイズは、6時位置の小窓に際立つようにあしらわれている。さらに、これらの表示と連動したグレゴリオ暦に基づく日付はチャプタリングの縁の周囲に、ブルースティールのサーペント針によって読み取ることができる。
搭載されているムーブメント、キャリバー3638にはシリコン製ヒゲゼンマイが採用されており、この性能の高いゼンマイを擁した3組の連結した香箱により約7日のパワーリザーブが可能となっている。複雑機構であるにも関わらず、ラグの下にはプッシュボタンがついており、ブランパンが発明し、特許を得た「アンダーラグコレクター」でカレンダーの調整操作を指先で容易に行うことができる。
ブランパン創業の地であるヴィルレの名を冠すこのコレクションは、時を超えても洗練されている。ケースはダブルステップ・ベゼル、文字盤上のゴールドの植字によるローマンインデックス、およびセージの葉を切り出した形状の針などに現れている。ちなみに、セージの語源はラテン語で「癒す」を意味する「salveo」という言葉から来ていると言われており、浄化のハーブとヨーロッパでは珍重される。
50個の限定で登場するのは、ホワイトゴールドのローターに今年の干支であるネズミが刻まれたモデル。ひとつひとつが、ル・ブラッシュにあるグランド・コンプリケーションのアトリエで働くひとりの熟練した時計職人によって組み立てられ、緻密に調整されている。