シチズン「視覚障害者対応腕時計」Ref.AC2200-55E
シチズンより視覚障害者でも時刻を知ることのできる腕時計「視覚障害者対応腕時計」Ref.AC2200-55Eが3月に発売される。視覚障害者にも対応した腕時計である「シチズン・シャイン」を1960年に国産で初めて発売したシチズン。「市民に愛され、市民に貢献する」という企業理念の下、販売されたシチズン・シャインの誕生60年後にあたる2020年に発表された新モデルは、インクルーシブ(包摂的)なデザインの考え方を取り入れたデザインとなっている。インクルーシブデザインの手法をとられて作られた腕時計とはどのようなものだろうか。
視覚障害者対応時計が抱えていた問題とは
シチズンから3月に「視覚障害者対応腕時計」の最新作Ref.AC2200-55Eが発売される。今回、新たな視覚障害者対応の腕時計の開発にあたり「視覚障害者の方が本当に求める腕時計はどのようなものなのか?」を突き詰めるべく、タイのロッブリー県にあるロッブリー複合視覚障害者学校の在校生ならびに教職員の協力を得ている。
開発メンバーは何度もこの学校へ足を運び、生徒や学校関係者と意見を交わすことで、使用を想定した人からの生の声を積極的に集めていった。そこでは、文字盤を触ったときの判読性の高い構造や、弱視の人でも見やすい色といった使用感に関する意見のほか、デザインに関する要望も多く集まった。それが「普通の腕時計と変わらない見た目のものが欲しい」「ファッションとしても楽しめる時計を作って欲しい」というものだ。
視覚障害者の使用を念頭においた腕時計の中には、音で時刻を判別するタイプのものがある。しかし、このタイプでは時刻を知る際は時計に耳を近付ける必要があるため、周囲の気を引いてしまう。また、デザインのバリエーションも少なく、一目で視覚障害者用の腕時計だと分かってしまうことを気にしている人も多いということが分かった。
形になったさまざまな要望
このようなさまざまな要望を聞き取り、完成したのが前述のRef.AC2200-55Eだ。触って時を知る。腕時計をすることの楽しさと快適さを感じてほしい、そのような気持ちで開発されたことが、この時計からは伝わってくる。
触ることで時間を知るには風防に該当する上蓋部分を開けて、文字盤部分に設けられたポイントと時分針を使って時刻を読む。12時、3時、6時、9時位置に配されたポイントは三角形になっており、また時針の先端は矢印になっているため、指先で触れたときに違いが分かりやすい。
ミネラルガラス付きの上蓋部分は開閉の回数が多くなることを想定し、自社基準による入念な開閉試験を実施している。また、弱視の人でも時刻が読み取りやすいよう、ブラック地のダイアルに黄色のインデックスを組み合わせることで高い視認性を得ている。性別やスタイル、着用場所を選ばず幅広い人に受け入れられるカジュアルなデザインだ。
ケースはヘアライン仕上げとなっており、指紋の跡が残りにくい点もこのモデルならではだ。ブレスレット部分はフリーアジャスト構造を採用し、中留め部にはブレスレットが意図せず抜けないようにリベットを配している。
インクルーシブデザインとは
「視覚障害者対応腕時計」Ref.AC2200-55Eでも取り入れられたインクルーシブデザインとは英国発祥のデザイン手法で、高齢者や障害者、子供など特別なニーズを持つ人たちをデザインの初期段階から巻き込んでモノを製作する方法のひとつだ。利用者を最優先に考えることができるので、デザイナーや開発者が思いもよらなかった点の改善を求められたりすることもある。ニーズに合わせたものづくりができるので高い実用性が求められる生活用品には最適の手法である。
今回のRef.AC2200-55Eでは前述の通り、タイのロッブリー複合視覚障害者学校の在校生や教職員による要望やアイデアが練り込まれている。腕時計を持つ楽しさをどんな人にでも味わってほしい、というシチズンの企業理念に基づく想いをぜひ手に取って感じてほしい。
Contact info:シチズンお客様時計相談室 Tel.0120-78-4807