グランドセイコー、超高精度の新型ムーブメントを搭載した新型モデルを発表

2020.03.05

ついにセイコーもフリースプラングを採用!

 このムーブメントの大きな特徴は今まで以上の高精度にある。長らくセイコーは機械式時計の緩急装置に標準的な緩急針を採用してきたが、本作ではスイスの高級品に見られるフリースプラングテンプを採用した。理論上の等時性と耐衝撃性能は、大きく向上しているはずだ。加えて、ヒゲゼンマイには、外端を大きく曲げた、いわゆる「巻き上げヒゲ」を採用した。約8万通りのシミュレーションから導き出された形状により、理論上はさらに高い等時性を持つだろう。写真が示すとおり、テンワの受けとヒゲゼンマイのクリアランスは非常に小さいが、あえて巻き上げヒゲを採用したのは、今までのセイコーにはない思い切りの良さと言えそうだ。

Cal.9SA5

新規開発の新型自動巻きムーブメント。地板の直径を拡大し、自動巻き機構と輪列を同じレイヤーに置くことで、大幅な薄型化に成功した。また、重心を下げる設計により、時計の装着感も改善された。写真が示すとおり、アガキの高さを調整できる”ロレックス風”の両持ちのテンプ受けを採用する。おそらく、調整はテンプ受けの左右に設けられた、小さなネジで行うのだろう。

 また、ヒゲ持ちには、巻き上げヒゲの付いた時計としては非常に珍しい、可動式のヒゲ持ちを採用する。巻き上げヒゲと可動式のヒゲ持ちという組み合わせは、1940年代から60年代までの一部高級機には見られた。ただし可動式というアイデアは、生産性と整備性のためであって、精度を改善するものではなかった。

 対して9SA5のヒゲ持ちは、ねじることでヒゲゼンマイの外端を変形させられる回転式である。巻き上げヒゲのヒゲ持ちをいじっても精度は変わりにくいという定説を覆す新機構だが、藤枝氏は「可動式のヒゲ持ちの採用により、精度は明らかに変わる」と強調する。

耐衝撃性能を考えて、テンワの受けは両持ちに

 テンワの受けも、耐衝撃性能を高めるため、両持ちに改められた。また、受けの下にある調整ネジをひねることで、テンワのアガキを調整できるようになっている。

 9SA5は、美観にも配慮が施されている。設計からデザイナーを加えたことで、このムーブメントは既存の日本製ムーブメントとは異なる見た目を得た。また、立体的な穴石を採用するなど、細部も高級機らしいものとなっている。

 さて気になるヘリテージコレクション メカニカルハイビート36000 80Hoursの価格は450万円。正直安くはないが、現時点で、これは量産型自動巻きの最高峰である。正直、日本のメーカーがこれほどのムーブメントを作るとは、誰が予想しただろうか。ご興味のある方はぜひ! なお、同機の詳細な解説は本誌にて追って行う予定である。

ヘリテージコレクション メカニカルハイビート36000 80Hours

グランドセイコー「ヘリテージコレクション メカニカルハイビート36000 80Hours」Ref.SLGH002。
薄型高精度の新型自動巻きムーブメントを採用した新モデル。自動巻き(Cal.9SA5)。47石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約80時間。18KYG(直径40mm、厚さ11.7mm)。10気圧防水。世界限定100本。セイコーフラッグシップサロン、グランドセイコーブティック限定モデル。予価450万円(税別)。8月1日発売予定。


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